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特訓②

2日目


俺は魔力操作なしで針を10本まで操れるようになった。


針を同時にビュンと飛ばす。

針は悪霊10匹の中心に当たり、たちまち悪霊は消え去る。


「よし!」


かなり頑張ったと思うのだが、セシリアの頑張りは俺以上だ。


「針、こっちの方試してみて」


そう言ってセシリアが銀色の針を渡してくる。


「ん?これ今使ってるのとなんか違うの?」


「いいから。早く試して」


俺は言われた通り渡された針を一本の糸に結びつけて操ってみる。

すると、すぐにその違いに気がつく。


「ん?だいぶ操作しやすい。なんで?」


「やっぱりね。魔力を込めるのを針全体じゃなくて針の先だけにしたの。そのおかげで軽量化できたし、何よりあなたの魔力と干渉しづらくなったから操作しやすくなったはずよ」


技術職かよ!こいつのユニークスキル聖女のはずだよな?

魔眼で確認しようかな。


「す、すげぇな。でもこれ最初の針より作るの難しいんじゃ。もう針は48本できてるんだろ?これから作り直すのは時間ないし」


「まぁ最初の針の百倍面倒ね。それが?」


そう言ってセシリアはすでに完成している改良された10本の針を見せてきた。


「あと38本。何度も言うけど私を誰だと思ってるのよ」


「はは。マジかよ……」


頼もしい限りだ。

俺もこうしちゃいられない!


3日目


「駄目!針3本中心からズレてるよ!」


セシリアは作業が終わったので、特訓に付き合ってくれている。

それにしてもよく見えてるな。


「クソ!もう時間ねぇのに!」


俺はイライラして頭をかく。

何とか48本の針を操れる様にはなったのだが、最後の最後で壁にぶち当たった。

数本毎回ミスしてしまう。


「ちょっと貸して」


そう言ってセシリアは俺の手を取る。

ブツブツと何やら詠唱を始めた。


「何やってんだ?セシリア」


「いいからあんたは黙ってて」


指に結ばれた糸と48本の針にセシリアの温かな魔力が込められているのを感じる。

魔力の注入は1分くらい続いただろうか。


「よし!」とセシリアは言い、俺をギロリと睨みつけた。


「タクト。試合終わるまでこれ外すなよ」


「え、何で?」


「いいからもう一回やってみな」


そう言ってセシリアは悪霊の瓶の蓋を開けた。

赤の悪霊48匹と青の悪霊48匹。

これが入り乱れる中赤の悪霊だけに針を当てる。

これくらいできなきゃ試合中腐食騎士の治療なんて不可能だ。


さっきは3匹も失敗してしまったでも……


「あれ?」


さっきに比べ格段に糸の操作がしやすい。

誤って青の悪霊に針を当てないように常に糸と針を動かし続けるのだが、難しいこの作業も難なくこなせる。


俺は打ち込むに最適な機会を待つ。


……。


……今だ!!


「ヒュン!」


俺の操る針が48本全て赤の悪霊の中心に命中する。

そして続けて俺は青の悪霊に針を命中させ消滅させる。


「ふぅー。遂にやったぜ!決勝前、ギリギリ!」


「ま、及第点ってとこね」


まるで糸と針が自分の手足の様に自由に動かせた。


「どういうカラクリだ、セシリア」


「別に、あんたの動き何百回も見てたから動きの癖や魔力操作の癖を覚えたの。それに合わせて糸と針をチューニングして動かしやすくしただけ。ただし一度糸外すとまたチューニングし直さなきゃならない。私は明日行けないんだから、絶対に外す…な……」


そう言うとセシリアはバタンとその場に倒れ込んだ。


「セシリア!」


「ああ駄目。流石に三日連続徹夜は無理!あたし寝るから。さっさと出てって」


寝不足に大量の魔力使用。

常人なら死んでもおかしくない。


「大丈夫か?何とかして医者呼ぶか?」


「あんたが私の心配するなんて10年早いのよ」


「……心配ならいつもしてるよ。お前が大聖女になってからは、ずっと……」


「……」


「……」


「ああうるさいうるさい!ホント意味わかんないし!言っとくけど、失敗は許さないからね!あんたは帰ってからも練習しなさい!」


「……勝ったら改めて礼を言いに来るな」


「負けたら二度と顔見せんなよ」


「……それは約束できない……」


「……ふん……バカ……」


そう言うとセシリアは静かに寝息を立て始めた。

俺は静かにセシリアをベッドに運んだ。


「……おやすみ、セシリア……」

「続きが気になる!」


「面白かった!」


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