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ユキちゃん視点
大変だ!大変だ!
タクトさんが準決勝で倒れてしまった。
大会運営の救護班に詰め寄って話を聞いたが命に別状はないらしい。
外傷もないし、ただの疲労なのでゆっくり休めば治るとのことだ。
あまり動かすのも良くないので、会場の近くに高級宿があるから今日はそこに運んで寝かせておくという。もちろん宿の代金は大会運営(国)持ち。
やはり決勝まで進んだ選手らしいVIPな待遇、さすがタクトさん!
部屋の番号を教えるようにも大会運営に詰め寄ったのだが、それは教えてくれなかった。
「いえ、あなたがジェイド選手の関係者だという話を疑っている訳ではないのですが、とんでもない数の女性ファンに他のスタッフも同じような質問をされていましてね。ですから対応として、命に別状はない事だけを伝えて居場所は極秘なんですよ。宿に泊まっている事を話しただけで特別ですよ」
そう言われてしまっては私も引き下がる他ない。
実をいうと、タクトさんが命に関わる状況じゃないのは何となく分かっていた。
『鷹の爪』で働いていた時もいつも体力の限界まで誰かのために行動してしまう。
そんな人なのだ、タクトさんは。
……そんな人だから、私はタクトさんが好き。
今日会えないのは残念だけど仕方がない。タクトさんが明日帰ってきた時の事を考えておこう!
帰ってきてもまだ疲れているだろうから私にできることは一つ!
元気になる料理を作ってあげなきゃ!
私は王都にある魔術、錬金術ショップに食材を調達に行った。
「えっと、マンドラゴラの粉と竜の肝の粉下さい」
私がそういうと、店員のおじさんがもっと商品を買わせようと営業トークを始めてくる。
その手には乗りませんよ。
「お、綺麗だねお姉さん。彼氏にかい?」
こういうお世辞はのっかちゃうと話に乗せられて商品を買わされちゃうからあっさり対応が一番。
「ありがとうございます。マンドラゴラの粉は30グラムで、ドラゴンの方は20グラムで」
「確かにマンドラゴラもドラゴンの肝もよく効く。でもね、今日はもっといいの入ってるよ」
もっといいの?……。
まぁ、話だけでも聞いてみますかね。
「何ですか?いいのって」
興味無い感じで、なるべく自然に。
「今日入ったのは、シールドタートルの生き血!」
「生き血!?」
「お、良い反応だね!」
しまった、なんか本当に凄そうなので思わず反応してしまった。
「い、いえ、でも今日はこれだけで十分で……」
「そうそう!それで十分!でもね、この生き血ってその二つの効果を3倍に上げてくれるって効果があって……」
「さ、三倍!?」
「そう!二つで十分凄いのにそれが三倍!」
確かに、タクトさん二つだけだと耐えてたしな……それが三倍ともなれば、でもきっとお高いんだろうな。
「うーん」
「値段でしょ。確かに安くは無いよ。でもね、今日の所はこれを、0一つ減らして、こう!」
「え!本当に!?その値段で?」
「いいよいいよ!持ってけ泥棒!」
「買います買います!」
「まいど!」
私はほくほく顔で店の外に出た。
「はぁー良い買い物をした」
早く元気になってほしいからね。必要経費必要経費。
そんな事を考えて歩いていると、王都の賑わう道の中で、意外な光景を目にした。
「あれ?あそこにいるのって……ぷにちゃん?」
タクトさんの使役している魔物であるぷにちゃんが、1人で王都の街を散歩していたのである。
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