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魔物の中には人懐っこいものもいるってマジですか?

俺達は適度な広さがあり、人気の少ない場所を見つけて、転移呪文で魔王の領域まで移動した。


マリサの言う通り結界が張ってある。


何故こんな事を……ノエル。


「マリサ、ちょっと離れてな」


「うん」


雷の魔法、最大火力!


これなら魔法の威力も最上級だ。それに一点を狙い撃ちできる。


俺は結界めがけて魔法を放つ。


しかし俺の雷魔法は結界に当たると、バチバチっと音を立てて消失してしまった。


「駄目だ、びくともしない」


「おにいちゃんの魔法で駄目なら、国中どこを探しても結界を破壊できる魔道士はいないよ」


「じゃあどうすれば……」


「おにいちゃん、魔王の領域に入りたいの?」


「ああ。どうしても会いに行かなきゃいけない人が中にいて……」


「うーん、たぶん方法はあるよ」


「本当か?教えてくれ、マリサ」


「王宮の禁書庫。そこに魔王の秘密が全て記された書物があるらしいの。それを読めばきっと全てがわかるはず。でもトップシークレットだから、禁書庫の位置も分からないし、警戒も厳重だから、ちょっと忍び込んだりはおすすめできないかな」


なるほど、前に王宮に忍び込んだけれどあれよりも厳重な警戒の場所にある。

そして今回は全く場所の分からない禁書庫なる場所を広い王宮内からピンポイントで見つけなければならない。

この前より数段難易度は高そうだ。

すでに姫様に俺は顔バレしているし、魔族と思われているし、ちょっと侵入はしたくないな。


「じゃあどうするかな。うーん」


「大丈夫だよ。御前試合で優勝すれば王様との謁見の機会があるから、そこで褒美をもらえるから、そこで禁書が見たいって言えばいいんだよ」


「それで禁書って普通に見せてもらえるものなのかな?」


「王宮の禁書は魔王に関する禁書。そこには魔王を倒す方法や弱点が記載されているらしいから、強者である御前試合の優勝者が興味を持つのは特に不自然でもないし、見せてもらえる可能性は高いと思うよ」


「そうか、じゃあ絶対優勝しなきゃ」


俺の御前試合で優勝しなければいけない理由が一つ増えた。

頑張ろう。


ずっとここにいても仕方がないのでそろそろ帰ろうかと思っていた時、足に冷たい感触があった。


足元に何か巻きついた。


「ぷ」


「あ、スライム」


良く見る青色の最弱スライム。かなり小さめ。でもよくいる個体よりも青が鮮やかでとても美しい。レア個体かな?


「本当だ。俺の足に巻きついてる。でも攻撃してこないぞ」


「珍しいね。なんかちょっと可愛いし」


そう言ってマリサがスライムを突っつくと、


「ぷっぷぷー」


とスライムがしゃべるように音を出した。


「すごいよおにいちゃん。このスライムしゃべる」


「本当だ。色も鮮やかだしレア個体だろうな」


綺麗な青。ノエルの美しい青色の髪の毛にちょっと似ていると言ったら、ノエルは怒るかな?


敵意の無い魔物を殺すつもりは無い。


俺はスライムを足から剥がした。


「そろそろ戻るか」


「うん、転移門開くね」


「じゃあな、スライム、達者でな」


そう言うと俺に懐いていたスライムはもういなくなっていた。


なんか寂しいな。ノエルに会えない事と、人懐っこいスライムにお別れする事が不意に重なって感じられた。


「おにいちゃん、大丈夫?」


「うん。帰ろう」


俺たちは転移門で王都に戻り、ゴチンコのギルドに帰った。


「戻りました」


俺が帰ると、ゴチンコのおっさんとローラさんはまだ作業していたが、他の人はもう帰っていた。


ゴチンコのおっさんは俺をキョトンとした顔で見つめている。


「タクト、何だそれは?ペットでも飼うことにしたのか?」


「ペット?いえ、家も持ってないしペットとかは飼う予定ないですよ。なんでですか?」


「何でって、その肩の」


「肩?」


肩を見ると、そこには森で出会ったブルースライムがちょこんと張り付いている。


「うわっ!お前ついてきたのか!」


「ぷー」

「続きが気になる!」


「面白かった!」


「また読みたい!」


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