体力無尽蔵☆おむつズ
わけあって、三歳の男女の双子ちゃんがいるご家族と公園で遊ぶことになった。
三歳――それは言語能力と身体能力が格段に向上し、自ら考え走り出す時期。たとえおむつは外れていなくとも、その小さき体は同じ場所にとどまることを忘れたように活発に動く。
無論この双子ちゃんも例外ではなかった。
「待つのだ、もも殿~!」
武士が早速男の子(仮名:もも君)にちょんまげを掴まれたまま走り出されていた。武士はたたらを踏みつつ幼子を踏んでしまわないよう最大限の注意を払っているが、もも君はそんな配慮知るかと言わんばかりに滑り台に向かって猛ダッシュしている。頑張れ、武士。私は応援することしかできない。
なぜなら私は、りんごちゃん(双子妹)の背中を追いかけるので忙しいからだ!
「じゃぐぅじむのる!」
もも君と真逆の方向に走っていったりんごちゃんは、ジャングルジムにかきついて登り始めた。ああ、どうやってその大きい頭と短い手足でバランスを取るというのか。だがそれを口にしてジャングルジムから下ろそうものなら火がついたように泣かれることは明白なので、私はいつ彼女が落下してもキャッチできるよう下のほうで両手を掲げる他なかった。
「おうっ」
意外とりんごちゃんの身体能力は高く、あっという間に三段目まで登ってしまう。だがそこから先は怖かったのか、何度か上と下を見比べたあと諦めたようにうなだれた。そこまではよかったのだが……。
「とぶー」
なんとおもむろに立ち上がると、両手を離してジャンプの構えを取り始めたのである!
アッッッッッッカーーーーーーン!!!!
私はすかさずりんごちゃんの腰を抱えあげると、慎重に地面に下ろした。私の肝はクリアアサヒより冷えたが、りんごちゃんは楽しげにキャッキャと笑っている。これが成功体験にならないといいのだが。
一方その頃武士は……。
「なっっっっっっらーーーーーーぬ!!!!」
何があったかはわからないが、同じくもも君の腰を掴んでそっと地面に下ろしていた。もも君は楽しげにキャッキャと笑っている。双子ちゃんなだけあって妹ちゃんの笑顔とそっくりだ。多分武士の肝も今の私とそっくりな冷え方してるけど。
こんな弾丸二人を普段からいっぺんに見ているお母さんはすごい。そう思いながら当のお母さんのほうを見ると……。
少し離れた、しかしいざとなればどちらにもすぐ駆けつけられる場所でじっと待機していた。
視線の配り方が尋常じゃない。お母さん、すげぇな。




