コインランドリーへ行こう
師走の多忙が本格的に私を襲い始めた頃。
武士はカメムシに襲われていた。
【本日の武士】
空模様が怪しくなってくる
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洗濯物を取り込もうとする
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カメムシ、服にとりつきまんまと我が家に侵入
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武士、羽音と壁にぶつかる音でカメムシの侵入を察知
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戦いが始まる
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戦いの最中、雨が降ってくる
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カメムシが自分の身体に飛んでくる
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もう嫌でござる~~~~~!!!!
こうして我々は21時にコインランドリーに来ているのだ。
「いつ訪れてもここは別世界のようである」
武士は狭いコインランドリー内をぐるりと見回して言った。ところ狭しと並ぶ乾燥機つき洗濯機と、鼻腔をくすぐる清潔な香り。ゴウンゴウンと鳴るリズミカルで無機質な音は、確かにここが普段自分たちがいる場所とはまったく異なる場所なのだと思わせた。
「着物が回っておる」
武士はここに来るといつも丸椅子を乾燥機の前に持ってきて座り、回転する衣服を夢中になって眺める。
「まるで踊っておるかのようだ」
それはさすがに詩的な表現すぎじゃない? と思わないでもない。でもあえて口に出すほど私も野暮ではないのだ。
「他の者の洗濯物を見るのもまた味なものよ。持ち主からは化物を見る目で見られるが」
いや嘘です口に出しますそれはさすがにやめろお前! そのうち通報されんぞ!
「ぬう」
ぬうじゃない!
「だが見よ、この着物の舞を。実に見事だと思わんか」
だから早くここからどけって……!
……。
…………。
いやいやいや、これ以上見るのはだめだって。見るなら自分のふんどし見ような。
「ふんどしはすっかり見慣れてしもうて、もう味がせんのだ」
知るかよ。塩でもかけろ。




