表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
707/719

HAMU☆GAMI

 その日帰宅すると、武士が寝っ転がってふてくされていた。

 どしたの。


「ぽぽ殿に……噛まれた……」


 見れば、武士の左手の人差し指にばんそうこうが貼られてあった。もともとうちのハムスターは指を噛むものだと思っているので、不用意に手を出すと流血レベルの攻撃をくらったりする。

 で、何したの?


「餌箱を交換しようとしたところ、ぽぽ殿は突如として出口に駆け寄りその身を外に乗り出しおったのだ」


 え、珍しい。うちのハム、ドアを開けても全然外に出ようとしない超インドアなのに。


「うむ、それゆえ某も油断しておったのだ……。この点は反省し今後活かして参ろう。それはさておきぽぽ殿である。ぽぽ殿の住まいは少々高さがある。そこで某、ぽぽ殿が怪我をしてはならぬと咄嗟に手を差し出したのだ!」


 おお!


「すんでのところで間に合い、ぽぽ殿はどこも痛めることなく某の手のひらに着地した。だがぽぽ殿はそのままフンスフンスと某の手の匂いを嗅いだかと思うと、おもむろにその鋭き歯を某の指に突き立てたのだ!」


 ああ~。


「驚いた某はすぐにぽぽ殿を解放しようとしたが、某は先人の言葉を思い出した。曰く、『噛まれても、ハムスターをびっくりさせないようそのまま耐えろ』」と……」


 うんうん、よく言うよね。


「そこで某は耐えた。『ほら、怖くない』と微笑みながら耐えた」


 ナウシカ?


「ぽぽ殿はそんな某の心に気づいたのか、そっと口を離し……」


 離し……?


「先ほどとは違う場所に、より強く噛みついた」


 二度噛み。


「そこで血が出たゆえ、某は慌ててぽぽ殿を解放した。ぽぽ殿はしばらく某の指に噛みついてぶらさがっていた」


 もしかしてそうやってぶら下がるのが楽しいんじゃない?


「そうかもしれぬが、本当のところはぽぽ殿にしかわからぬ。……某はぽぽ殿の友人ではないということはわかっている……。だが誰よりも餌を持ってきておる、餌係なのだ。餌係に牙を剥くのはやめてほしかった」


 切ない心情だな。いつもお疲れ様です。


「罰として本日のおやつは抜きである」


 可哀想に。


「代わりに夕食の別腹としてひまわりの種を進呈する」


 あげてんじゃねぇか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ