武士が餅をついてきたと言うので
昨日帰宅したら、袋に入った餅がテーブルの上に置かれてあった。
「某がついた餅である」
武士のほうを見ると、ドヤ顔をしていた。
そう、お前がついたお餅なの……。で、今度はどんなイベントに巻き込まれたの?
「たまたま通りがかった長屋の前で餅つきをしておったので、すわやと飛び込んだのだ」
お前古いアパートを指して長屋って言うのそろそろやめような。へー、そんなことしてるとこあったんだ。まだ11月なのに。
「聞けば、1月に向けて手入れするつもりで出したら、後に引けんなったと言うておった」
どんな手入れしてたら後に引けなくなって餅つき大会が始まるんだよ。
「ざっと10人以上おった」
結構いるじゃねぇか。
「意外と皆餅をつきたがるのだ。おさなごも臼を持ち上げておったぞ」
臼を!?
「杵であった」
よかった! すげぇ力自慢が出てきたかと思った!
「そういうわけでたんと食うがよい」
お米の値段も洒落にならなくなってきたってのにありがたい話だな。でも……。
「いかがした」
餅、一個しかないように見えるんだが。
「某が二つ食べたからな」
それでも三個じゃねぇか。
「この世はせちがらいのだ」
まあそれでもタダで恵んでくれるだけありがたいな。
「否、参加料として三百円支払った」
金取られてんのかよ。手入れついでの割に商魂たくましいな。




