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帰ってきたチョコットクルクルクルセイダーズ(2)

 並ぶ三人は叫ぶ。

「J.C.ポゼッション!」

 三人肩にのる子猫、アオダイショウ、ミドリガメが光り輝くと天に向かって飛び上がる。

 渦巻く三つの光。それが上空でパンと弾けると、彼女たちの上に落ちてきた。

 白、青、緑の光に包まれる三人。

 その光の中で反る女体のシルエットは、それぞれのくびれを映し出す。

「あぁぁぁ、きもちいぃいぃ!」

「これは、いつやっても最高やァァァァ」

「3テン……3テン……1415キュウニィィィィィイ」

 光の中で悶える三人。

 光が一条の線となって消えると、そこには白いコスチュームに包まれた三人組が立っていた。


 今にも泣き出しそうなアリエーヌ。

「グラマディ……キャンディ……グラス……みんな来てくれたのか……」

「みずくさいじゃないか! こんな面白すなこと、俺たちに黙ってするなんて!」

「そうですわ。アリエーヌはん! うちらの仲やあらへんか!」

「852110……」

「でも、今更、何を歌えばいいのじゃ……」

 にやりと笑う三人組。

「こういう時こそ、騎士養成学校時代のアレやあれ!」

「ミュージックスタートだ!」


 四人は叫ぶ!

 貴様ら! この歌を聞け!

 キサラ王国国歌斉唱!


 キサラ! キサラ! キサラ王国!

 ここは木更津じゃないよキサラだよ

 キサラ! キサラ! キサラ王国!

 特産品は木皿じゃないよきくらげよ


 ステージうえで、四人が歌うのだ。

 しかも、こともあろうに国家を勝手にアレンジして……

 まぁ、王女と公女たちである。

 怒られることはないのだろう。

 アップテンポのメロディに観客たちは興奮した。

 先ほどまで、ドグスによって愛国心をあおられていた観衆だ。

 そこに王女が歌う国家。

 しかも、アイドル風にハイテンションで繰り出されてくる。

 国民たちに体が自然に上下し始めていた。


 キララ! キララ! キサラ王国!

 ここはキラキラ光るキサラ王~国ぅ


 ミーナは呆然と見ていた。

 ――なにこれ……すでに国歌じゃないじゃない……

 だが、同時に何か恐ろしいものを感じていた。

 今まで、多くのアイドルのタマゴたちを見てきた。

 トップアイドルの座を目指す多くの女の子の歌声を聴いてきた。

 確かに中には光る原石もあった。

 その原石も小さいうちにつぶしておけば、たいした障害になるモノではない。

 だが、目の前のアリエーヌは違う。

 会場の雰囲気がミーナからアリエーヌにがらりと変わったのだ。

 ただでさえ、キサラ王国第七王女であり、魔王討伐の英雄の仲間である。

 忌み嫌われる銀髪とはいえ、美貌はトップアイドル顔負け。

 素人とはいえ、いきなりのステージで、これだけのパフォーマンスを演じ切る胆力。

 いま、ここで潰しておかないと……

 ミーナは奥歯を噛みしめた。


 二人の歌を聞き終わったドグスがステージの真ん中に現れた。

「さあ、お楽しみの審査の時間だよ。どちらの胸と腕が飛ぶんだろうね!」

 沸きに沸いている会場の様子を満足そうに見るドグスは嬉しそうであった。

「さぁ! マーカスたん! 厳正なる審査をお願いやで!」


 そんなマーカスたんが、ドグスの横で腕を組む。

 そして、わざとらしく頭を横に振りながら悩むのだ。

 さて……どっちだ? どっちだ?

 マーカスたんの口がゆっくりと口を尖る。

 こ! これは「ミ」か! ミーナのミなのか?

 だが、そんな観衆の思惑を裏切り、マーカスたん口を横に広げた。

 やっぱり「ア」か! アリエーヌ姫様のアなのか!

 観衆たちは固唾をのんでマーカスたんの口の様子を伺った。

 でも、あの表情、おそらく何にも考えてないぞ!

 だって、あいつ、歯に詰まったタクワンの筋をつまようじでつついているだけだし……


 つまようじをポイっと投げると、いきなりマーカスたんは叫んだ。

「両方失格ぅ~!」

 会場に向けて押し出すようなバツ印を両腕でつくる。

 もう、ドグスがいなければブチ殴りたくなるほどムカつく態度!


 会場が一気に静まり返る。

 はぁ~?

 何言ってんだコイツ……

 観客たちは、目の前のマーカスたんが英雄マーカスであることを度忘れしたかのように、思考が真っ白になっていた。


 そして、間を置かずに大ブーイング!

 このボケェ! ちゃんと歌聞いとったんか!

 ミーナ様の素晴らしい歌が分からないの!

 アリエーヌさまに土下座しろ! 土下座!

 俺の1,000ゼニー返せ!


 だが、そんな観衆たちの反応を無視するかのように、二人の執行人が斧を振り上げた。


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