表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/108

断頭執行コンサート開幕(1)

 時刻は夕方の6時。

 まだまだ日は高いが、だんだんと赤みを帯びていた。

 昼間に蓄えられた熱気が、いまだ地面から立ち上っている。

 そして、マッケンテンナ家の敷地内では、すでに大規模なステージが出来上がっていた

 いまだ、仕上げをしている職人さんたちの額からも熱気が揺らめく。

 汗を拭く職人さん、その数は500人近くいるだろうか。

 ドグスが、急に思いついた断頭執行コンサートである。

 国中の大工や職人、魔法使いをかき集め、数時間で舞台装置を作り上げていた。

 さすがは大金持ちのマッケンテンナ家である。

 金に糸目はつけない。

 魔法で持ち上げた木材に大工たちがつぎつぎと釘を打って行く。

 塗装屋が色を吹き付けたものは、魔術師の魔法を使って速乾仕上げ!

 魔法電機の設備など時間のかかるものは、すでに他の施設に納入さている物を無理やり流用させる。

 このようのして、金の力で一気に作り上げられたステージは豪華絢爛。

 どこぞの国の某秀吉の一夜城ならぬ、ドグスの半日場!

 だが、舞台ができても、客を寄せるコンテンツができなければ意味がない。


 そこで、ドグスはこのキサラ王国のトップアイドルであるイーヤ=ミーナのコンサートを企画したのである。

 しかも、そのミーナが断頭台のヒモを引くのである。

 ズッコン! バッコン! と刃が落ちる!

 歌と血しぶきのスペクタクルなショー!

 アイドル好きも! 歌好きも! ついでに持ってグロ好きも! みんな満足! 大満足!

 そして、何よりも、自分の息子であるマーカスたんはイーヤ=ミーナが大のお気に入りなのだ。


 マーカスたんは、ヒドラ討伐から帰って以来、自分の部屋にこもって魔法電機で動くテレビの中のミーナことを見てばかり。

 そんなマーカスたんを見ながらドグスは思うのである。

 ――そんなにこの小娘の事が好きなのかい……


 本来、ヒドラ討伐が成功した暁には、はれてアリエーヌ第7王女との結婚し王家の一員となる予定だったのだ。

 おそらく、そのためにマーカスたんはミーナとの関係を清算した。

 部下にその行動を逐一見守らせていたドグスは、そこまで把握していたのだ。

 だが、ヒドラ討伐は失敗に終わる。

 そして、マーカスたんは、見るも無残なイボガエルのような姿になって戻ってきたのだ。

 そんなマーカスたんを見ながらドグスは爪を噛む。

 ――これもそれも、あのヒイロとかいうボケのせいや! アイツ、なり替わりの腹いせのつもりやろか! だが、まずは、マーカスたんに元気になってもらう事が第一や。ミーナと元のズッコン!バッコン!の関係に戻れば、マーカスたんも元気になるんとちゃうやろか?


 今か今かと、マッケンテンナ家の門の前にはコンサートを待ちわびた人だかりが列をなしていた。

 そんなにこの国の人間は、人の首が飛ぶのが見たいのだろうか?

 いやいやそんなことはない。

 断頭そのものには興味がなくとも、イーヤ=ミーナの歌声を聞けるのである。

 この国の誰しもがイーヤ=ミーナのファンなのである。

 今日のラッキーお新香はタクワン。

 男どもはタクワンを片手に列に並ぶ。

 先ほどから、その手に持つタクワンが、シリコンのようにふにゃふにゃと揺れて、あたり一面にタクワンの黄色い香りを漂わせていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ