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Boys, be ambitious!(3)

 なら、この案はどうだろう?

 マーカスは魔獣使いとして有名である。

 ならば、ここは魔獣使いということで、強い魔獣たちによって魔王を倒したということにしてはどうだろうか?

 おっ! これって意外と行けんじゃねぇ!

 まぁ、実際に俺が魔王と対峙した時にも、ピンクスライムと一緒に戦っていたわけだしな。

 真実に近いから大丈夫だろ!

「ならマーカスは魔獣使いだから、きっと、テイムしていた魔獣たちが活躍したんじゃないですかね……それで、魔王を倒したとか……うん、マーカスならそうに違いない」

「もやし君、知ってる? あのマーカスが使役するモンスターはペットショップで買ってきたモンスターだってこと」

「ぺ……ペットショップ!?」

 驚く表情とは裏腹に、心の中の俺は鼻くそをほじっていた。

 ――うん……知ってる……

 !?

 だがその時、俺は何か違和感を感じた。

 それはいうなれば、俺の心の中で鼻くそをほじる指が、暗い穴の奥底にひっそりとこびりつく大きな鼻くそを見つけたような感じだ。

 ……でも……それって、一部の人しか知らない事実ですよね。

 そう、マーカスは英雄なのだ。

 しかも、魔獣使いとして名をはせた英雄なのだ。

 そのおかげで、魔獣使いは人気職となったぐらいである。

 そして、人間は魔獣を恐れなくなった。

 そんな名声を当然ドグスが汚すわけはない。

 魔獣使いなどいやだと駄々をこねるマーカスたんを無理やり魔獣使いに仕立て上げるために、ペットショップで買ってきた魔獣を使役させているのだ。

 だが実際には、今回の騒動のヒドラ討伐に赴くまでのマーカスたんが、魔獣を使うような戦闘に従事したことはない。

 だから、ペットショップの魔獣たちを、ただ人に見せるだけでマーカスの名をあがめる者たちにとっては十分だったのである。

 そんな状況なのだ。だから、マーカスたんが使役する魔獣たちがペットショップで買ってきた魔獣だなどと知る訳はないはずなのだ。

 知っているのは、俺とマーカスのなり代わりの事実を知っている者だけ……

 それをなんで、あなたがそれを知っているんですか?

「アイツ……私よりも弱いからモンスターなんてテイムできるわけないのよ。そんなペットショップで買ってきたモンスターで魔王を倒せるのかなぁ?」


 まずい! まずいよ! これ!

 どんだけマーカスたん弱いんだよ……

 目の前の女がいくら美人と言っても細身の体。

 男が本気を出せばいくらでも押さえつけれそうなものだ。

 それが、逆に負けるって……オイオイ、マーカスたん……どんだけだよ……

 

 確かマーカスたん、魔獣を呼び出すのだって説明書読みながらじゃないとできないから、一匹、使役するのがやっとの状態のはずだったよな。

 どうせ、アイツの事だ、ムチうつ魔獣とか、女を興奮、違った、気持ちよくリラックスさせる魔獣ぐらいしか使ったことが無いのだろう。

 なら、どれだけ近しい間柄と言えども全ての魔獣を確認したことはないに違いない!

 という事はこの女が、全てのマーカスたんのすべての魔獣を把握しているはずはない!

 ならば俺は、この勘に賭ける!

「いや、マーカスには誰にも見せていない魔獣がいるんですよ! きっと……」

「ふーん……もやし君……やけに、あのド畜生のマーカスの肩を持つのね……やっぱり、マーカスと何かあるのかな?」

「何もないですよ! 何も!」

 ヤバいよ! ヤバいよ!

 絶対きづいているよ! この女!

 どうするよ……どうする……おれ……

 先ほどから、嫌な汗がポタポタト額から垂れ落ちているのが分かる。


「本当かなぁ~?」

「こんなところでマーカスの秘密なんかベラベラしゃべりませんよ! もし俺が、お喋りだったら、あなたの秘密だってどこかで喋っちゃうかもしれないでしょ……って、ところで、お姉さま……泣いていらっしゃったのでは?」

 今度は女がびくりとした。

 先ほどまで意地悪そうな笑みを浮かべていた目に、みるみると涙が戻ってきたと思うと、いきなり両の手で顔覆った。

 そして、先ほどよりもわざとらしく大きな声で泣き出したのである。

「え~ん……お願いだから……私の秘密……誰にもしゃべらないで……」


「だから、本当に黙っていますって……」

 俺は、白けた表情で声を出していた。

 女は、手で隠しながら上目遣いで俺を確認した。

「えっ! モヤシ君! 本当! 本当にいいの? 本当にあんなことやこんな事しなくていいの? なんなら、もっとすごいサービスまでしてあげようと思っていたのに……」

 その言葉によって再び背後から発せられた殺気。

 その殺気に押し出されるかのように俺は答えた。

「う……嘘じゃないですよぉ……嫌だなぁ……」

 女は先ほどまでの意地悪そうな目から、今度はブリッ子のような涙をたたえた目で笑顔を作っていた。

「ごめんなさい……男って、そういう生き物だと思っていたから……私の周りの男どもは、いつも卑劣な事ばかり要求してくるの……」

 内心、ドキッとする俺。

 その変りよう、もしかしたら何かを察したのかもしれないが、この時の俺には知る由もなかった。

 というか、そのぶりっ子の潤んだ目に、もう俺のハートはドキドキだったんですよ。

 男の子ってこういうのに弱いんだから仕方ないじゃないですか。



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