なんでパンツを履いてない?(4)
ペンギンは残った魚を俺に押し出した。
まるで、俺に食えと言わんばかりである。
だが、よくよく見ると、このペンギンもまた、やせ細り、羽がぼろぼろになっている。
コイツもまた、何も食ってないんだろうな……
「お前が食えよ……食ってないんだろ……」
俺は、三匹の魚を次々とペンギンに投げ返した。
だが、ペンギンは、あきらめずに俺に魚を押し返す。
強情な奴め!
カチンときた俺は、再び投げ返す。
ペンギンはまたもや押し返す。
投げ返す!
押し返す!
返す! 返す! 返す! 返す!
そんなやり取りに業を煮やしたのか、レッドスライムが俺の影から飛び出して、一匹の魚を取り込んだ。
レッドスライムの体の中で、みるみる溶けていく魚。
ペッと言う音共に、魚の骨がどぶ川にポチャンと落ちた。
「まぁ、そうだよな……みんなで分けよう……」
俺は一匹の魚をペンギンに投げ、残った一匹に、その辺に転がっていた棒きれに突き刺した。
川の向こうに日が沈み、空を紫色に変えていく。
そんな黄昏空に、一本の白い煙が細く細く昇っていた。
先ほどまで子犬たちが隠れていた橋の横で、小さなたき火が燃えている。
その火の前に座る俺の体が、うっすらと赤く照らし出されて影を揺らす。
その横にたたずむペンギンとレッドスライムも赤く染まっていた。
あっそうだった、レッドスライムは、そもそも最初から赤かったわ!
そして、俺たちの周りを楽しそうに走りまわる子犬と子猫、そして子ウサギ。
俺の口の中では、先ほどからジャリジャリと音がしていた。
焼いた魚を食べたのはいいが、砂がきれいに取り切れていなかったようなのだ。
さすがにどぶ川で洗うのは気が引けた。
仕方なく手で砂を払っただけなのだが、やはり完全に砂を取り切れていなかった。
だが、それでも、なんだか久しぶりに楽しい食事にありつけたような気がした。
まるで、アリエーヌたちと旅した時のように懐かしい感じだった。
俺は、食べ終わった魚の骨を見つめる。
焚火の火がぱちぱちと音を立て、静かに揺れ続けていた。
俺は、つぶやく。
「お前たち、俺の家に来るか?」
それを聞いたペンギンは俺と子犬たちを交互に見比べる。
さも子犬たちに、あんたたちが決めなと言わんばかりである。
そんな気持ちを察したのか、子犬が俺に飛びついて顔をなめる。
子猫が、俺の腰に頬を擦りつける。
子ウサギは、恥ずかしそうに小さくうなずいた。
「よし! 決まりだ! ということで、お前らまとめてテイムだ!」
俺は、子犬たちをテイムした。
今度は間に合った……
悲しい出来事になる前に……
俺は笑いながら、そう思っていた。
だが、このちょっと前、キサラ王国港町二丁目の酒場の前では大騒動が起こっていたのだ。
そう、ヒドラ討伐に出向いていたテコイたちが突然、街の真ん中に姿を現したのである。
もう、手足が溶け落ちボロボロの姿で。
あの英雄【マーカス=マッケンテンナ】も精神が壊れ、人形のようにただ笑うだけ。
そんな悲惨な来事が起きているなど、この時の俺は露ほどにも思っていなかった。
だって、ここから酒場まで、歩いて10分はかかるぐらいに離れているのだから。
まぁ、そうは言っても、もう、俺には関係ないことだけどな。




