表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/108

なんでパンツを履いてない?(4)

 ペンギンは残った魚を俺に押し出した。

 まるで、俺に食えと言わんばかりである。

 だが、よくよく見ると、このペンギンもまた、やせ細り、羽がぼろぼろになっている。

 コイツもまた、何も食ってないんだろうな……

「お前が食えよ……食ってないんだろ……」

 俺は、三匹の魚を次々とペンギンに投げ返した。

 だが、ペンギンは、あきらめずに俺に魚を押し返す。

 強情な奴め!

 カチンときた俺は、再び投げ返す。

 ペンギンはまたもや押し返す。

 投げ返す!

 押し返す!

 返す! 返す! 返す! 返す!

 そんなやり取りに業を煮やしたのか、レッドスライムが俺の影から飛び出して、一匹の魚を取り込んだ。

 レッドスライムの体の中で、みるみる溶けていく魚。

 ペッと言う音共に、魚の骨がどぶ川にポチャンと落ちた。

「まぁ、そうだよな……みんなで分けよう……」

 俺は一匹の魚をペンギンに投げ、残った一匹に、その辺に転がっていた棒きれに突き刺した。


 川の向こうに日が沈み、空を紫色に変えていく。

 そんな黄昏空に、一本の白い煙が細く細く昇っていた。

 先ほどまで子犬たちが隠れていた橋の横で、小さなたき火が燃えている。

 その火の前に座る俺の体が、うっすらと赤く照らし出されて影を揺らす。

 その横にたたずむペンギンとレッドスライムも赤く染まっていた。

 あっそうだった、レッドスライムは、そもそも最初から赤かったわ!

 そして、俺たちの周りを楽しそうに走りまわる子犬と子猫、そして子ウサギ。

 俺の口の中では、先ほどからジャリジャリと音がしていた。

 焼いた魚を食べたのはいいが、砂がきれいに取り切れていなかったようなのだ。

 さすがにどぶ川で洗うのは気が引けた。

 仕方なく手で砂を払っただけなのだが、やはり完全に砂を取り切れていなかった。

 だが、それでも、なんだか久しぶりに楽しい食事にありつけたような気がした。

 まるで、アリエーヌたちと旅した時のように懐かしい感じだった。

 俺は、食べ終わった魚の骨を見つめる。

 焚火の火がぱちぱちと音を立て、静かに揺れ続けていた。

 俺は、つぶやく。

「お前たち、俺の家に来るか?」

 それを聞いたペンギンは俺と子犬たちを交互に見比べる。

 さも子犬たちに、あんたたちが決めなと言わんばかりである。

 そんな気持ちを察したのか、子犬が俺に飛びついて顔をなめる。

 子猫が、俺の腰に頬を擦りつける。

 子ウサギは、恥ずかしそうに小さくうなずいた。

「よし! 決まりだ! ということで、お前らまとめてテイムだ!」

 俺は、子犬たちをテイムした。

 今度は間に合った……

 悲しい出来事になる前に……

 俺は笑いながら、そう思っていた。


 だが、このちょっと前、キサラ王国港町二丁目の酒場の前では大騒動が起こっていたのだ。

 そう、ヒドラ討伐に出向いていたテコイたちが突然、街の真ん中に姿を現したのである。

 もう、手足が溶け落ちボロボロの姿で。

 あの英雄【マーカス=マッケンテンナ】も精神が壊れ、人形のようにただ笑うだけ。

 そんな悲惨な来事が起きているなど、この時の俺は露ほどにも思っていなかった。

 だって、ここから酒場まで、歩いて10分はかかるぐらいに離れているのだから。

 まぁ、そうは言っても、もう、俺には関係ないことだけどな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ