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【アニメーションMV有】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第2章 ヴァルハラ帝国編

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89話 後始末

挿絵(By みてみん)

 漆黒の鎧が光の粒子となって夜風に消えていく中、赤い光が三人の体を包み込んでいく。

 レベルアップの光だった。


「まさか...アンデッドの王を倒せるとは...な」

 アディラウスの声には、まだ実感が伴っていなかった。


 その目は、自然と遥斗へと向けられる。

 先ほどまで漆黒に染まっていた瞳は、すでに普段の温かみのある茶色へと戻っていた。

 アディラウスの胸に、安堵の感情が広がる。

(あの時の異質な感覚は...気のせいだったのか?)

 背筋を走っていた悪寒が、静かに溶けていく。


 遥斗はそんなアディラウスの視線に気付き、にっこりと微笑む。

「これ、どうぞ」

 そう言って、中級HP回復ポーションを差し出した。


「ああ、ありがとう」

 アディラウスも笑顔を返しながら、ポーションを受け取る。

 緑色の光が彼の体を包み込み、次々と傷が癒え体力が回復していく。


「マーガスも」

 遥斗は同じようにマーガスにもポーションを手渡す。

「おおっ、気が利くじゃないか」

 マーガスの声には、かつての尊大さは微塵も感じられなかった。

 純粋な感謝の色が、その声音には滲んでいた。


「グォォォ...」

 弱々しい鳴き声に振り返ると、そこにはグリフォンガードが自分の番を待っていた。

「ごめんね、君にも」

 遥斗は駆け寄り、優しくポーションを注ぎかける。


 守護モンスターの残った傷が見る見るうちに癒えていく。

 嬉しそうに遥斗の手を舐めるグリフォンガード。

 その仕草に、遥斗は思わず笑みがこぼれる。


「さぁ、後始末と行きますか!」

 マーガスの声が、夜空に響く。

 その視線の先には、これまで遠巻きに戦いを眺めていたアンデッドたちが、一斉に押し寄せてきていた。

 デュラハン・ナイトメアを失い、統率が取れなくなった群れは、本能のままに襲いかかってくる。


「ボーンハンターが300...ミストレイスが50といったところですね」

 アディラウスが状況を冷静に把握する。

 デュラハン・ナイトメアとの死闘を経験した遥斗たちには、もはや何の脅威にも感じられなかった。


「グォォォォォ!」

 轟音と共に、グリフォンガードが夜空へと舞い上がる。アンデッドたちの動きが一変し、戸惑い、移動が出来なくなってしまう。

 空からの攻撃に対して、彼らにはほとんど対抗手段がなかったのだ。


 グリフォンガードの口から、次々と魔力球が放たれる。白い光の弾が、夜空を彩る流星のように降り注ぐ。その一撃一撃が、2、3体ずつアンデッドを消滅させていく。


「ファストアクセル!」

 アディラウスの詠唱が響く。青白い光が、再び彼の体を包み込む。


「これを!」

 遥斗が、もう1本のレクイエムを投げ渡す。

「ありがとう、任せてくれ!」

 両手にレクイエムを構えたアディラウスの姿は、もはや一介の剣士とは思えない佇まいだった。2本のレクイエムの特殊効果、加速のポーション、そして加速魔法。その全てが重なり合い、アディラウスの動きは人知を超えた領域に達していた。


 疾風が吹き抜けたかのように、アディラウスが駆け抜けていく。

 その軌跡が作り出す道の上、アンデッドたちが次々と光の粒子となって消えていく。


「クロスリッパァァッ!」

 アディラウスの両手のレクイエムから放たれた十字の斬撃が、空間を切り裂き疾走する。まるで紙を切り裂くかのように、ミストレイスたちが切り裂かれ、粒子となって散っていった。


「マーガス、はい」

 遥斗が、満面の笑顔でマーガスにEフォートレスを差し出す。


「お前、俺を何でも屋だと思ってるだろ?」

 マーガスの声には、いつもの皮肉とかすかな笑みが混じっていた。


 ソウルリーヴァーとEフォートレスを装備したマーガスの姿は、伝説の竜騎士を彷彿とさせた。

 黄金の槍と血のような赤の盾。圧倒的な強者の風格が漂っていた。


「まぁいいや、行ってくる!」

 遥斗に向かって軽口を叩きながら、マーガスは戦線へと躊躇なく飛び込んでいく。


 迫り来る3体のボーンハンターの剣が、一斉にマーガスを襲う。しかし、Eフォートレスはその全てを易々と受け止めた。

「この程度か?エターナルテンペスト!」

 マーガスの右手に握られた黄金の槍が、月光を纏って煌めく。無数の突きが、まるで暴風のように繰り出される。

 3体のボーンハンターは、紙人形のように粉砕されていった。


 しかし、数の暴力は容赦なく襲いかかる。

 気付けば、マーガスは無数のアンデッドに四方を取り囲まれていた。


「ふん、この程度!」

 マーガスの口元に、余裕の笑みが浮かぶ。

「ダスクダウン!」

 赤い不気味な輝きを放つEフォートレスが、生き物のように上下に割れる。その内部から露出した魔道機構が、呪怨の声を上げる。

 半径5メートル以内にいたボーンハンターは、まるで重力に押し潰されるように地に伏した。


 しかし、ミストレイスたちは影響を受けない。そもそも彼らには明確な質量がなかったのだ。不気味な炎の群れが、マーガスに襲いかかろうとする。


「クロスリッパー!」

 アディラウスの両手から放たれた十字の斬撃が、ミストレイスを切り裂く。

「グォォォォ!」

 グリフォンガードの魔力球が、その存在ごと消滅させる。

 ミストレイスたちは、その圧倒的な攻撃の前に、次々と光の粒子となって消えていった。


「ファイア!ファイア!ファイア!」

 その一方で、遥斗の魔力銃は、地に伏したボーンハンターたちを的確に撃ち抜いていく。


 アンデッドたちには、もはやなす術がなかった。

 戦いは、完全に遥斗たちの掌握下にあった。


 そして遥斗たちがこの地に降り立ってから数時間後―


 東の空が徐々に明るさを増していく。

 朝陽が昇り始めた戦場に佇むのは、3人の人影と1体のモンスター。誰一人として欠けることなく、彼らは勝利を掴み取っていた。

 最後のアンデッドが光の粒子となって消えていく。

「終わったな...」

 アディラウスの声が、静かに響く。

「ええ、そうみたいです」

 遥斗の返事には、深い安堵が込められていた。

「おい、遥斗」

 マーガスが声をかける。

「お前、結構やるな。足手まといにならなかったのは褒めてやる」

 その言葉には、マーガスなりの賞賛が込められていた。


 新しい朝の光が、3人の姿を優しく照らしていく。

 悪夢の夜は終わり、フェルドガルドの街に再び平穏が戻ってきたのだ。


 グリフォンガードが、勝利を告げるかのように高らかに咆哮を上げた。

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― 新着の感想 ―
作者様には悪いけど、戦闘が長過ぎてちょっとダレるね
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