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【アニメーションMV有】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第1章 スタンピード編

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60話 激闘のあと

挿絵(By みてみん)

 戦いの余韻が残る中、リリーは興奮した様子で遥斗に駆け寄った。その大きな瞳には、好奇心と尊敬の色が溢れている。


「遥斗くん!すごいです!どうやってあんな巨大な魔物を倒したですか?詳しく教えてくださいです!」リリーは遥斗の腕にしがみつくようにして尋ねる。


 遥斗は少し困惑した表情を浮かべながらも、優しく微笑む。

「えっと...そうですね。うまく説明できるかなぁ?」


 リリーと遥斗の様子を見て、いつもの遥斗を感じ、アリアはほっと安心した。

 彼女はマルガに近づき、小声で話しかける。

「マルガ、遥斗のステータスを鑑定してくれないか?」


 マルガは長い髭をなでながら、興味深そうに頷く。

「ほう、わしも大変興味があったところじゃ。ではさっそく...」


「ステータス鑑定」

 遥斗に向けて魔法を唱える。マルガの目の前に透明な情報画面が浮かび上がる。


「ほお...これは...」マルガの表情が驚きに満ちていく。

「どうだ?」

 アリアが身を乗り出す。


 マルガは眉をひそめながら説明を始める。

「レベルは82...そこそこ高いのう。じゃが、ステータスは...」


「どうした?」アリアが問う。

「軒並み低いんじゃ。MPだけはかなり多いが...他は...」

 マルガは言葉を詰まらせる。


「他は?」

「常人レベルじゃな。兵士で言えば新卒の方が優秀なくらいかもしれん」

「そうか...あの戦いぶりからは信じられないが...」

 アリアは息を呑む。


 マルガは深刻な表情で続ける。

「もしヴォイドイーターに一撃でも食らっておれば、即死は免れなかっただろう。よく生き残ったものじゃ」

「今仮に、私が軽くでも遥斗に剣を振るったら...」

「まぁ何も出来ず、一瞬で頭と胴は泣き別れじゃろうなあ...」

「やはりそうか」

 アリアは遥斗を見つめ、思わず呟く。


 その言葉にアリアは急に我に返り、リリー以外のメンバーを集め小声で話し始める。


「みんな聞いてくれ。遥斗のことは、絶対に口外するな」

「なんでだ?あいつ、英雄だろ?」

 ガルスが首を傾げる。


 アリアは厳しい表情で答える。

「このことが知られれば、遥斗は狙われる可能性がある。そしてあいつは直接的な戦闘では、手練れに勝てない。命が危ないかもしれん」


 レインが冷静に尋ねる。

「では、これをギルドにどう報告する?」

 アリアは一瞬考え、

「私たち『シルバーファング』がやったことにしよう」

「おいおい、それはルール違反じゃねえのか?」

 ガルスが眉をひそめる。


「ルシウスの時のことを忘れたのか?」

 アリアは鋭い目つきでガルスを見る。

 その言葉に、ガルスとマルガの顔色が変わる。


「そうだな。わ、わかったよ...」ガルスが渋々同意する。

「確かに...あの時のことを考えれば...」

 マルガも頷く。


「しかし」レインが口を開く。

「功労者の遥斗にはだれが説明するんだ?」


 アリアは少し考え、にやりと笑う。

「そりゃ、エレナだろ」


「なぜだ?」

 ガルスが首を傾げる。


「遥斗の身に何かあるかもしれないとなりゃ、必死になるさ」

 アリアはウインクしながら答える。

「やれやれ...」

 レインはため息をつく。


「よくわからねえなぁ...」

 ガルスはまだ首を傾げたままだ。

「にぶちんじゃのう」

 マルガは呆れたように言う。


 レインは、まだ遥斗の周りをうろうろしているリリーに声をかける。


「おい、リリー。遊んでないでエステリアのところに報告に行くぞ」

「遊んでないです!」

 リリーは少し不満そうな表情を浮かべるが、しぶしぶ遥斗から離れる。


「でも、遥斗くん!また後で話を聞かせてくださいね!」

「は、はい...」

 遥斗は照れくさそうに頷く。


 アリアは遥斗に近づき、優しく肩に手を置く。

「遥斗、よく頑張ったな。とりあえず一旦学園に戻ろう。エステリアたちが心配だからな」

「そうですね、わかりました、エレナとトムも心配ですし!」


 遥斗はそういって、柔らかな笑顔を浮かべた。


 この日、王都を救った真の英雄の存在は、永遠に秘密として葬られることとなった。

 しかし、それは同時に、遥斗を守るためのアリアの苦渋の決断でもあった。


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