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【アニメーションMV有】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第1章 スタンピード編

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58話 スタンピード(14)

挿絵(By みてみん)

 シルバーファングのメンバーたちは、遥斗の激しい戦いを目の当たりにし、全てを察していた。彼らの豊富な経験をもってしても、遥斗とヴォイドイーターの戦いに介入することができない。


 アリアが重い口を開いた。

「みんな...分かってるな?」


 ガルスが苦々しい表情で頷く。

「ああ...俺たちじゃ、手助けどころか邪魔になりそうだ」


 マルガは杖を握りしめながら、静かに言った。

「あの少年の戦いは、もはや我々の理解できる域を超えとるのぉ。」


 アリアは仲間たちの顔を見回し、アイコンタクトを取る。言葉を交わさずとも、彼らの意思は通じ合っていた。


「行くぞ」アリアの一言で、シルバーファングのメンバーたちは一斉に動き出した。

 彼らは5つの方向に散り、迫り来る100体の魔物に立ち向かっていく。それぞれが、自分たちにできる最善の方法で遥斗を助けようとしていた。


 シルバーファングは遥斗の姿を直接見ることはできないが、その存在を感じ取りながら、全力で魔物たちと戦う。


 アリアは剣を振るい、風のように魔物たちの間を駆け抜けていく。

「烈風剣・空破!」

 彼女の剣筋が魔物たちを両断していく。しかし、倒した魔物の向こう、さらに多くの魔物が押し寄せてくるのを見て、剣を強く握りしめる。

(遥斗...私たちにできることは、せめてこれだけだ...)


 ガルスは、巨大な斧を振りかざしながら吠える。

「かかってこい、化け物どもー!ガルス様が相手になってやるぜ!」

 彼の前に現れた魔物の群れに、全力で斧を振り下ろす。

「アイアンウォール!」

 地面が割れ、魔物たちが吹き飛ぶ。しかし、倒れた魔物たちをよそに、多くが彼の脇をすり抜けていく。

「くそっ!行くんじゃねぇ、このヤロウども!」


 マルガは杖を高く掲げ、呪文を唱え始める。

「焔よ、我が敵を焼き尽くせ!ファイアブリッド」

 火球が魔物たちを焼き尽くしていく。しかし、その光景を見ながら、マルガの表情は曇っていく。

(これほどの数とは...少年、無事でおってくれよ)


 レインは弓を構え、矢を放ち続ける。

「マルチショット!」

 一度に複数の矢が放たれ、魔物たちを次々と倒していく。しかし、彼の鋭い目は、魔物たちの真の目的地を見抜いていた。

(やはり...眼中にないか。全て遥斗とヴォイドイーターに向かっている)


 リリーは両手を広げ、祈るように唱える。

「神よ、汝の敵を聖なる光で照らしたまえ!ホーリーライト!」

 彼女の周りに光の障壁が広がり、魔物を包み込み、その存在を消し去る。しかし、その光の外側では、無数の魔物たちが押し寄せている。

「お願い...遥斗くんを守ってです...」


 彼らは必死に戦い続けるが、魔物たちの大半は彼らをすり抜け、中央へと向かっていく。シルバーファングのメンバーたちは、それぞれの位置から激しい戦いの気配を感じ取っていた。

 シルバーファングのメンバーたちは、必死に魔物たちの後を追う。彼らの攻撃で魔物の数は確かに減っていたが、大半は突破されてしまった。


 ヴォイドイーターの元には、80体もの魔物が援軍として到着する。その光景は、まるで黒い波が押し寄せるかのようだった。


 ヴォイドイーターが轟音とともに咆哮を上げる。それが合図だったかのように、魔物の群れが一斉に遥斗に襲いかかる。

 しかし、遥斗の動きは止まらない。彼は魔力銃を構えながら、同時に「中級HP回復ポーション」を生成し続ける。弾丸による攻撃と、ポーション生成素材のためのHP吸収。二種類の攻撃を同時に繰り出しながら、高速で移動を続ける。


 魔力銃の轟音が鳴り響き、真っ先に飛び掛かってきたシェイドハウンドの頭部を貫く。黒い獣は悲鳴も上げず、光の粒子となって消散する。


「ポップ」

 魔力銃に弾丸を生成する。同時にマジックバックから取り出したMP回復ポーションを飲み干す。

 その瞬間、近くにいたシャドウクローラーがその触手で遥斗を捉えようと近づく。

 右からはシャドウストーカーが襲いかかる。


 しかし遥斗はまるでそれを予測していたかのように、一歩後ろに下がり、魔力銃を向ける。

「バン!バン!バン!バン!」連続で放たれた弾丸が、シャドウスクローラーを貫く。


 反対側からはシャドウストーカーの腕が伸びてくる。

「ポップ」

 遥斗は体を反転させ、その動きを利用して中級HP回復ポーションを生成。

 シャドウストーカーは硬直し動きを止める。

 遥斗は一瞬も躊躇わない。

「バン!バン!バン!バン!」集中砲火で、その高いHPを削り切る。


 この一連の動きは、まるで緻密に計算された振り付けのように美しく、そして恐ろしいほど効率的だった。

 遥斗の周りには、倒れた魔物たちと消えゆく光の粒子が渦巻いている。その中心で、遥斗は無感情のまま、ただただ機械的に動き続ける。

 彼の体は幾度となく赤い光に包まれ、レベルアップを繰り返す。だが、遥斗の表情は少しも変わらないままだった。まるで、それすらも計算済みであるかのように。


 魔物たちの包囲網が徐々に縮まっていく。その瞬間、一匹のシェイドハウンドが遥斗の左腕に食らいつく。痛みに対する反応すら見せず、遥斗は右手の魔力銃でシェイドハウンドを撃ち抜こうとする。


 しかし、事態はさらに悪化する。シャドウストーカーが現れ、シェイドハウンドを押さえつける。

 その時、驚愕の光景が広がった。

 ヴォイドイーターの体が、まるで泥のように変化し始めたのだ。その黒い泥が、魔物の群れと遥斗に覆いかぶさっていく。


 触れたものすべてを溶かし、吸収していく。魔物たちの悲鳴が響き渡るが、すぐに静寂に包まれる。

 そして、ヴォイドイーターが元の形に戻った時、そこにはもう遥斗の姿はなかった。

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