表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメーションMV有】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第1章 スタンピード編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/512

55話 スタンピード(11)

挿絵(By みてみん)

 アリアの体が地面に叩きつけられた瞬間、戦場全体が凍りついたかのように静まり返った。シルバーファングのメンバーたちは、息を呑んで目を見開いている。彼らの中で最強の戦士が、こんなにも簡単に倒されるなど、誰も想像していなかった。


 その静寂を破るように、ネメシスキマイラの足音が響き渡る。黒い炎に包まれた巨体が、倒れたアリアに向かって迫っていく。その赤い目には、獲物を追い詰めた捕食者特有の冷酷さが宿っていた。


「くそっ...アリア!」ガルスが叫ぶが、彼の体はまだ黒い炎の影響で自由に動かない。

「このままじゃ...」リリーの声が震える。


 ネメシスキマイラが、アリアの上に影を落とす。その口が大きく開き、鋭い牙が月明かりに照らされて不吉な光を放つ。まるで、アリアの首を噛み千切ろうとしているかのようだった。


 その瞬間——


「ファイア!」


 遥斗の声が、夜空に響き渡る。

 銃声と共に、鉄の弾丸がネメシスキマイラのライオンの頭部に直撃した。しかし、予想に反してダメージは小さかった。弾丸は、ネメシスキマイラの体を包む黒いオーラによって、その威力を大きく削がれていたのだ。


「な...」遥斗の声に、驚きと焦りが混じる。

 ネメシスキマイラは、ゆっくりと首を回し、遥斗を見つめた。その赤い目には、人間離れした知性と、底知れぬ憎悪が宿っている。遥斗は、思わず後ずさりしてしまった。


「遥斗...逃げろ!」アリアが、地面に伏せたまま叫ぶ。

 しかし、遥斗の足は地面に縫い付けられたかのように動かない。ネメシスキマイラが、ゆっくりと彼に向かって歩み寄ってくる。その口が、再び大きく開かれる。

 ダークフレイムを放つ準備だ。


 遥斗の頭の中で、様々な思考が駆け巡る。

(ど、どうすれば...)


 ネメシスキマイラの喉の奥で、黒い炎が渦巻き始める。遥斗は、自分の最期が近いことを悟った。

(こんな所で...終わるのか!)


 その時——


「スネークバイト!」


 レインだった。

 彼の放った矢が、蛇のようにうねりながらネメシスキマイラの口内に突き刺さった。

「グアアアアッ!」

 ネメシスキマイラが悲鳴を上げる。口の中を直撃されたダメージは、想像以上に大きかったようだ。しかし、その怒りは瞬時にレインへと向けられた。


「クソッ...」レインが舌打ちする。


 ネメシスキマイラの口から、黒い炎が噴き出す。レインは間一髪でそれを避けたが、炎の熱さに肌が焼けるのを感じた。


「はぁ...はぁ...」彼が息を整える間もなく、ネメシスキマイラの巨体が目の前に現れる。

「なっ...!」

 次の瞬間、レインの足首がネメシスキマイラの牙にがっちりと噛まれていた。


「ぐああああっ!」

 レインの悲鳴が響き渡る。ネメシスキマイラは、まるで獲物を弄ぶかのように、レインの体を振り回し始めた。


「レイン!」マルガが叫ぶ。


 その惨状を目の当たりにした遥斗は、咄嗟にアリアの元へと走り出した。彼の手には、上級HP回復ポーションが握られている。


「アリアさん!これを!」


 遥斗は、アリアの傍らに跪き、ポーションを彼女の口元に運ぶ。アリアは、微かに目を開け、遥斗を見上げた。

「遥斗...」

 彼女の声は、かすれていた。遥斗は、アリアの頭を優しく持ち上げ、ポーションを飲ませる。青い液体が、アリアの喉を通っていく。


 瞬時に、アリアの体が光に包まれる。傷が次々と癒えていき、彼女の目に力が戻ってくる。

「助かったぜ、遥斗」アリアが立ち上がる。


 しかし、その瞬間——


「危ない!」

 アリアの警告と同時に、ヴォイドイーターの巨大な腕が二人に向かって振り下ろされる。アリアは咄嗟に遥斗を抱きかかえ、攻撃をかわそうとする。しかし、完全には避けきれず、二人は強烈な衝撃と共に吹き飛ばされた。


「うわあああっ!」

「くっ...!」


 アリアと遥斗の体が、まるで紙屑のように宙を舞う。そして、地面に叩きつけられる。

「ゴフッ...!」アリアが、血を吐く。

 彼女は最後の力を振り絞り、自身の体をクッション替わりにして遥斗を庇っていた。


「ア、アリアさん...!」遥斗が、震える声で呼びかける。

 アリアは、苦しそうに微笑んだ。

「遥斗...早く、逃げろ...」


 彼女の声は、かすれていた。遥斗は、頭を激しく振る。

「そんな...アリアさんを置いていくなんて...」

 アリアは、遥斗の頭を優しく撫でた。

「すまなかった...こんなところに、連れてきてしまって...」


 遥斗の目に、涙が浮かぶ。

「僕も...最後まで戦います」

 アリアは、痛ましそうな表情を浮かべた。

「ごめんな...」


 その時、レインの叫び声が響く。

「危ない!」


 遥斗とアリアが顔を上げると、ネメシスキマイラが、信じられないスピードで二人に迫っていた。その赤い目には、殺意が満ちている。

(これで...終わりなのか)

 遥斗の頭の中で、様々な思い出が駆け巡る。涼介や美咲たちの後ろ姿、エレナの優しさ、トムの励まし、ルシウスの教え...そして、アリアとの戦い。


(みんな...)


 ネメシスキマイラの牙が、遥斗を引き裂こうとする——

 その瞬間。


「...ポップ」


 遥斗の小さな声が響く。

 突如として、ネメシスキマイラの動きが鈍くなり、その速度が急激に落ちていく。


「な...何だ?」ガルスが、驚きの声を上げる。

 ネメシスキマイラは、明らかに混乱している。その動きは、まるで泥沼を進むかのように遅くなっていた。


「ポップ」


 再び、遥斗の声。

 今度は、ネメシスキマイラの体から力が抜けていく。まるで、大量の血を失ったかのような感覚だ。

 生まれて初めての経験に、その凶暴なまでの赤い目が、戸惑いの色に変わる。


 その隙を逃さず、遥斗はマジックバッグからMP回復ポーションを取り出し、一気に飲み干す。

 ネメシスキマイラは、無防備な遥斗に向かってダークフレイムを放とうとする。しかし——


 バン!


 遥斗の魔力銃が火を噴く。弾丸が、ネメシスキマイラの右目を直撃する。


「グギィヤァァァァァッ!」


 ネメシスキマイラが、悲鳴を上げる。大きなダメージではないが、一瞬の隙が生まれた。

 その瞬間、遥斗の声が響く。


「ポップ」


 次の瞬間、ネメシスキマイラの姿が光と消えていた。

 戦場に、静寂が訪れる。

 シルバーファングのメンバーたち、そしてヴォイドイーターまでもが、その光景に釘付けになっていた。

 そして遥斗の手には、最上級ポーション2つと加速のポーションが握られていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ