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455話 テイマーVSテイマー

 遥斗がルドルフとヴァイスに脅威を与えている。

 時を同じくして、大輔とさくらの身には大変な事態が起こっていた。


 レゾとガルモ。

 残った二人の異世界人のうちの一人。


 レゾが笑う。


「中村大輔……といったか?竜騎士と聞いていたが思ったよりも大したことないな」


 レゾが拳を構える。


 遥斗に奪われてしまった為に水晶はない。


(グハハハ!素手で十分だ!)

 レゾの目が光った。



「スピアスラスト!!」


 竜の力を纏った槍の一撃。


 しかし、レゾはいとも簡単に、それを避ける。


 最小限の動き。

 異様なまでに無駄がない。

 回避の動きがそのまま踏み込みに変わる。


「はっ!!」

 間合いに入ったレゾの拳が、大輔の顔面を狙う。


 それを大輔が盾で受ける。


 ガンという金属音。

 重い一撃だった。

 いくら体躯がいいとはいえ、タンク職の竜騎士と格闘戦を渡り合う。

 それがサポート職なのだからたまらない。


 しかもレゾの動きは止まらなかった。

 拳は盾を掴み、捻る。


「うわっ!」


 大輔の体がバランスを崩し、半回転、宙を舞った。

 力ではない力。


 柔よく剛を制す、柔術?いや、違う……合気か。

 転倒こそは免れたが、腕を捕られ、そのまま捻られる。


 激痛と共に大輔は理解した。


(これは……関節技……!)

 関節技は寝技とは限らない、技によっては立ったままでも可能なのだ。


 レゾは無手の格闘戦の達人。


 それもそのはず。

 こちらの世界に来るまでは、元軍人で傭兵を生業にしていた。

 軍人時代はエリート特殊部隊に所属。

 素手で人を壊す事を、何よりの喜びとしていた。


「ぐおおおおお!」

「お?お?」


 大輔は腕が折れる事すら覚悟しながら、力づくでレゾを持ち上げる。

 関節技など関係ない。

 身体の頑丈さを最大限に利用した脱出方法だった。


 竜騎士にしか出来ない関節技対抗法。

 そのまま振りほどく。


 その無茶さ加減に、レゾも感心する。


「お前そんな事して痛くないのか?」

「イテーに決まってんだろ!人の腕を何だと思ってやがんだ!」

「だよな……普通折れるし。いや折れてるのか?」

「折れてねーよ!ふざけんな!」」


 二人の戦いは一見互角だった。

 いや、徐々にレゾが押し始めている。


(くそ……!体が……重い……)

 大輔の息が、上がる。


 先ほどの使用したドラゴンフォーム。

 その反動が、まだ残っている。


 ドラゴンフォームは絶大な力を使用者にもたらす代わりに、使用後に大きい反動が来る。

 あらゆるステータスにマイナス補正がかかるのだ。


(60……いや、70%か……力が出ない……)


 さらに追加でダメージ。

 体が、悲鳴を上げている。


 レゾが、笑う。

「竜騎士……その程度か。まぁーそんなもんだろうなぁ。日本人の餓鬼なんぞ」


 レゾが、拳を握る。

「軍隊格闘術を教えてやる。冥途の土産に持って行け!」


 鋭い動き。

 無駄がない。

 全てが、実戦的。


 レゾの拳が、大輔の腕を掴み捻る。


「ぐあっ!!」

 大輔の体が、地面に叩きつけられる。


 先ほど痛めた腕が、軋む。

 このままでは腕が折られる。


「くっ……!」

 大輔が、槍を振るう。


 レゾが首を捻っただけで、それを避ける。

 所詮は苦し紛れ。

 無理な態勢から放った一撃に何の意味があるだろうか?


 大輔の顔を足で踏みつけた。

 そのまま地面に押し付けられる。


(ランスも盾も……関節技には相性が悪すぎるぜ……)


 大輔は思考がまとまらない。


 槍は確かにリーチが長い。

 逆に言えば、至近距離では扱いが難しい。


 盾も防御には優れている。

 打撃には有効だが、関節技に対しては無力。


 どうする?



「るな!大輔を助けて!」

 その時、不利を察したさくらがるなに魔力を注ぐ。

 大量の魔力を。


 るなの体が急激に成長を遂げた。

 幼体から成体へ。


 月の光を反射したかの様な、美しい銀の毛並み。

 神獣、ルナフォックスが神々しい光を放ち顕現した。


 その姿は美しいまでに、死を纏う。


「お願い!!」


 さくらが、叫ぶ。


 るなが大輔を助けに動こうとする。


 が、なぜか動かない。

 いや動けないのか。


 るなは小刻みに震えていた。


「う……美しい」

 低い声が響いた。


 最後の異世界人ガルモ。

 彼が、るなに近づいてくる。


 その目に宿るは好奇心。


「神獣……」

 その声は欲望に満ち満ちている。

「俺も……欲しい」

 ぎらついた目、獲物を狙う目。


 さくらが、背筋に冷たいものを感じる。

 嫌悪感。


 この男の視線は——


 気持ち悪い!


 絡みつくような、粘着質な視線。


「るな!!そいつは無視して!!先に大輔を!!」


 さくらが、命ずる。


 るなが、唸り声を上げ動こうとしない。

 体の震えは大きくなっていた。


「るな……?」

 さくらが、不安を感じる。


 何かがおかしい。


 ガルモが、ニヤニヤと笑っている。

 その笑みは邪悪、が形を成したもの。

「ククク……」


 ついに、るなが地面にへたり込む。

 体が動かせないのだ。


「るな!!」

 さくらが叫ぶが、やはり、るなは動けない。


(まさか……!)


 さくらに嫌な予感が過る。


 ガルモが——


 るなに干渉している。


「そんな……!」


 テイムされているモンスター。

 しかも心を通わせている、神獣クラス。


 それを、後から支配しようとするなどありえない。

 出来るはずがない、絶対に。



「ククッ……」

 ガルモが、笑う。


「俺は……一体しか支配できないが……」

「その力は……最強……だ」


 ガルモの目が光る。


「お前のモンスター……いただく」


「やめて!!」

 さくらが、叫ぶ。


「るな!!るな!!」

 呼びかける。


 必死に何度も。

 るなも応えようとしている。

 ガルモの支配に抵抗している。


 それでも。


 動けない。



「るな!!私の声が聞こえる!?」

 さくらの声は震えていた。

 涙が、溢れそうになる。


「お願い!!負けないで!!」


 その声に——


 るなの目が、わずかに動いた。


 さくらを見る。


「ク……ウ……」

 小さな鳴き声を発した。

 その声はあまりに小さく、か細い。


 本来であれば、ガルモの力がいかに強かろうと、さくらとるなの絆の前では干渉など出来ようはずがない。


 しかし、今のガルモは違う。

 魔力共鳴により、限界を遥かに超えた、さらにその先へ到達している。

 命と引き換えにしたモンスターテイマーの頂へ。


「おれ……お前より……強い……」

 もうガルモの目には、るなしか見えていない。

「お前のモンスター……俺のもの」


 勝てない……

 さくらが絶望する。


 るなが奪われてしまう。


 大切な仲間、いや大切な家族が。

 過酷な異世界で、ずっと傍にいてくれた家族が。


(嫌だ……!)

 さくらの心が、叫ぶ。

(るなを……るなを取らないで!)


 その時——


 遠くから、声が聞こえた。


 それは——

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