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404話 女三傑

 ギィィィィン!

 ギィィィィン!

 ギュィィィィィィン!


 剣と魔力刃が激突する。

 火花が散り、金属音が響き渡る。


 アレクサンダーの聖剣エクスカリバーンが、神々しい輝きを放っていた。


「はぁあああああ!セイグリッド・エクステンション!」


 剣スキルが発動する。

 聖なるオーラが刀身を包み込み、アレクサンダーの全身にも波及していく。


 全ての能力値が爆発的に加算される。

 特に防御力は飛躍的に向上する。

 何者にも侵されぬ、絶対的な防御結界が展開されていた。


 それは鋼鉄をも上回る硬度。

 さらに攻撃魔法無効化。

 そして異常なまでに上昇した自然治癒能力。


 戦闘中にあって、傷をリアルタイムで修復していく。


 ヘスティアは手数では勝っている。

 魔刃術による連続攻撃は、アレクサンダーを圧倒していた。


 しかし——


 一撃の重さがまるで違う。


 剣スキルを発動した今、アレクサンダーのダメージは時間と共に回復する。

 対してヘスティアの傷は、時間と共に増えていく。


 一撃必殺でなければ、アレクサンダーに勝てないのだ。


 時間という概念は、明確にアレクサンダーに味方していた。


 ズガァン!


 ついに力負けした。


「かはっ!」

 ヘスティアが地面に叩きつけられる。


「終わりだ!この世に溢れる光よ集え!聖光……」

 アレクサンダーが大技を繰り出そうと、剣を頭上に掲げた。


 しかし、瞬時に防御態勢を取る。


 次の瞬間——


 ギィィィン!


 横から飛んできたロングソードの一撃を、エクスカリバーンが受け止めていた。


 マリエラだった。

 アレクサンダーがギリギリで防いだが、その威力は凄まじい。


 衝撃波が発生し、周囲で戦っていた騎士たちと教団員たちを吹き飛ばした。


「あら~、お強いのね~」


 マリエラが相変わらず呑気に微笑む。


「何者だ!」


 その一撃に驚愕した。

 アレクサンダーは殺気すら感じなかったからだ。

「シックスセンス」のスキルを発動していなければ、聖なる鎧「ロードオブセイント」ですらダメージを軽減しきれなかっただろう。


 それほどに重い一撃だった。 


「マリエラ!あなた、まだ逃げてなかったの!?」

 ヘスティアが思わず声を上げる。


 アレクサンダーとマリエラが対峙する。

 マリエラは幅広のロングソードを、片手でふわりとぶら下げている。

 彼女にかかれば小枝のようだが、男の戦士でも両手でなければ、とても扱えない代物。


「やれやれ……続々と化け物が出てくるな。ここは魔窟か?」

 アレクサンダーがうんざりしたように呟く。


 しかし——


 その表情は、どこか嬉々としていた。


 前回のスタンピードで後れを取ってから、アレクサンダーは強くなるための試行錯誤を繰り返してきた。

 レベルを上げ、装備を新調し、戦術を見直す。


 王国最強の騎士の彼にとって、それは簡単な物ではなかった。


 が、彼にはアドバイスをくれた頼もしき味方がいた。

 エリアナ姫だ。


 彼女指示は的確で、目から鱗が剥がれる思いだった。

 革新的思考。

 伝統を重んじる騎士には、到底なし得ない方法ばかりだった。


 その結果、以前よりも遥かに強くなった。

 今なら、ヴァルハラ帝国の剣聖「ブリード」をも圧倒できる自信がある。


 人類最強も見えた、と思った。


 ファラウェイ・ブレイブを見るまでは。


(あれは桁が違う……いやそうではない、『異質』だ)

 アレクサンダーが心中で呟く。

(この世界にあっていい強さの種類ではない)


 彼らが敵でないのは、まさしく僥倖。

 もし敵対していれば、五人相手どころか、一人を受け持つことさえ困難だろう。

 しかも、勇者を中心に、互いに影響を及ぼすスキル持ち。


 集えば集うほどに強くなる。

 おそらく彼らも、エリアナ姫のお導きがあったのだろう。


 彼らもそうだろうが、アレクサンダー自身もエリアナ姫には多大なる恩義がある。

 姫の御心がそうであるなら、何を置いても協力する気だった。


 しかし、この戦いはあまり乗り気ではなかった。

 世界を救う大義名分はもちろん理解できる。

 ただ、虐殺にしかならないだろう、と。


 違った。

 違ったのだ。


 なぜ自分がここに派遣されたのか。

 なぜ自分がここまで強くなる必要があったのか。


 今この為、この瞬間の為。


 愛すべき主君エドガー王よりも、今はエリアナ姫に忠誠を誓っている。

 こうも心が動かされているのか、自分でも不思議だった。


 騎士としての信念が揺らいでいたのも事実。

 だが聖騎士の力は神子のために!


 世界に幾人もいない強者たち。

 悪に染まり切ったとしても。

 この者達を下す事が自分に与えられた天命だったのだ。

 剣を交える喜びが、アレクサンダーの体中に沸き上がってくる。


「マリエラ!」

 ヘスティアがマリエラの隣に並ぶ。


「あなたはもういいの!グランディスを連れて逃げて!」

 ヘスティアが叱責する。


「もう~、拗ねてるの?ヘスったら~かっわいい♪」

 マリエラがふわふわとした笑顔を浮かべる。

「結婚しても子供ができても、私たち親友じゃない~困った時はお互い様~」


 その言葉に、ヘスティアが昔を思い出す。

 シュヴァリアの下で修業していた頃。

 あの懐かしい日々。


 力を求める理由は三者三様。

 それでも彼女たちは親友だった。


「ツクヨミもいれば女三傑復活なんだけど~」

 マリエラが呟く。


「ちょ、あなた!様を付けなさい、様を!」

 ヘスティアが窘める。


 お互い顔を見合わせて、笑い合った。

 まるで修行時代に戻ったかのように。


「アイツをどうにかするまで、手伝ってくれる?」

 ヘスティアが尋ねる。


「もちろんよ~」

 マリエラが軽やかに答える。


「じゃ……」

「行きましょうか~」


 次の瞬間——


 二人が猛然とアレクサンダーに斬りかかった。


 左右からの同時攻撃。


 ヘスティアの魔刃術が右から。

 マリエラのロングソードが左から。


 アレクサンダーが構えを取る。


「来い!」


 エクスカリバーンが聖なる光を放った。

 アレクサンダーの歓喜に呼応するように。

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