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【アニメーションMV有】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第6章 最悪の始まり編

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356話 蹂躙

 空中に巨大な火球と雷撃が複数形成される。


 ソラリオン軍のエルフたちが一斉に放った魔法は、見たこともないほどの威力と規模を誇っていた。

 通常の戦闘魔法とは次元の違う破壊力が、ルナーク軍に向かって飛来した。


「防御魔法陣展開!」


 セレシュルムが咄嗟に叫ぶ。


 ルナーク軍のエルフたちが連携し、巨大な防御障壁を展開する。

 青白い光の壁が戦場を覆い、襲来する魔法攻撃を受け止める。

 しかし——


 敵の魔法攻撃があまりにも強力すぎる。

 防御陣が激しく揺らぎ始め、明滅を繰り返す。


「駄目だーーー破られるぞーーー!」

「逃げろーーーーー!」


 兵士たちが悲鳴を上げる。


 次の瞬間、爆炎と雷撃がルナーク軍を直撃した。

 衝撃波が戦場を駆け抜け、多数の兵士が宙に吹き飛ばされる。


 叫び声と爆発音。

 断末魔が森に響き渡った。


「一方的すぎる……この魔法の威力は異常だわ」


 加奈が白狼の分析機能を起動させる。

 敵軍の魔力数値を測定すると、驚愕の事実が判明した。


「なに……これ……全員が高い魔力数値の武器を携帯している」


 そんな装備はルナークでは見たことがない。

 しかも魔力の増幅は、世界消滅に直結するタブーのはずだ。


「なぜそんなものが大量に……」


 ルナーク軍は圧倒的劣勢に追い込まれていた。



「おじいちゃまの心を見てみる」


 ハルカがミズチによる精神感応を試みた。

 戦況を変える手がかりを見つけようと、オルミレイアスの精神に潜る。


 次の瞬間——


「あっ!」


 ハルカが驚きの声を上げる。


「お母様ぁ!あれはぁおじいちゃまじゃない!」

「えっ?どういうこと?」

「心が全然違うよぉ!冷たくて残酷でぇ……とにかく、おじいちゃまじゃない!」


 ハルカの精神感応能力は、外見では分からない内面の真実を見抜く。


「偽物なのぉ!誰かがぁ化けてるのぉ!」

「やっぱり……この凶行といい、態度といい」


 これまでの違和感が全て繋がった。

 あの温厚で慈愛に満ちたオルミレイアス王が、このような非道な行為をするはずがない。


「絶対に正体を暴いてやる!ハルカも協力できる?」

「うん!出来るよ!」

「いい子ね……ミズチでエルフの人達をよく観察して。何か変な事があったら教えて!」

「分かった!」


(これだけの規模……一筋縄ではいかない。きっと仲間がいるはずだ。見つけてみせる!)

 加奈が決意を固める。



***



 ソラリオン軍のエルフ兵たちが、異常に統制の取れた動きで襲いかかる。


 まるで操り人形のような不自然で機械的な連携攻撃。

 個々の判断ではなく、何かに操られているような動きが不気味だった。


 さらに兵士たちの武器が突然、炎や雷、氷の属性を帯び始める。

 魔力の波動が戦場全体に響き渡り、ソラリオン軍の攻撃力が倍増していく。


 シューデュディとセレシュルムは、8年間もの間、アマテラスとツクヨミの護符で力を蓄えていた。

 護符は装備しているだけでレベルを上げるという、信じがたい性能を持っている。


 二人の戦闘能力は飛躍的に向上していたが、それでも多勢に無勢。

 何とか戦いになっているのは、まさに奇跡だった。


 それでも魔法を無尽蔵に放つソラリオン軍の物量に、ルナーク軍は次第に押し切られていく。


 爆炎が兵士たちを飲み込み、雷撃が鎧を貫いて肉体を焼く。

 氷の槍が胸部を貫き、風の刃が首筋を切り裂く。


 阿鼻叫喚の戦場。

 まさに蹂躙だった。



「もはや将を討つしか勝ち目は無い!申し訳ありません父上!お覚悟を!」


 シューデュディがクサナギを構え、オルミレイアスに斬りかかる。

 その太刀は疾風。

 エルフの能力の限界を超えている。

 渾身の斬撃。


 が、王の乗る黒い戦馬が雷を放つ。

 その雷撃は、シューテュディが近づくことすら許さない。


「ば、馬鹿な!この馬……上級モンスターだ!」


 シューデュディが気づく。

 ただの軍馬ではない。

 強力な魔力を帯びた、危険な魔獣だった。


 雷撃を受けながら戦い続けるが、次第に体力が削られていく。

 セレシュルムも治療魔法で兄を支援するが、敵の攻撃があまりにも激しすぎる。


 ルナーク軍の兵士たちが次々と倒れ、戦線が完全に崩壊。

 生き残った者も重傷を負い、まともに戦える状態ではない。


「ああっ……このままでは……」


 シューデュディが絶望的な表情を浮かべた。

 父——いや、父の姿をした何者か、か。

 ここを抜かれれば王都は目の前。

 戦える者の数は少ない。



***



 ついにルナーク軍が壊滅状態に陥った。


 生き残った兵士はわずか数百名。

 ソラリオン兵に完全に包囲され、逃げ場もない絶体絶命の状況。


 シューデュディも全身傷だらけでボロボロ。

 クサナギを支えに立っているのがやっとの状況だった。


 セレシュルムも魔力を使い果たし、膝をついている。

 治療魔法を連発し続けた代償なのか、もはや立ち上がることすらできない。


「これで終わりだな、愚かな息子よ。お前の愚かさで国が滅びるのだ。いや、世界そのものか……」


 オルミレイアスが勝ち誇った笑みを浮かべる。

 その表情には、これまでのオルミレイアス王には見られなかった残酷さが宿っていた。


 モンスターの馬が最後の雷撃を放とうと、全身に電気を溜め始める。

 その威力は、確実にシューデュディの命を奪うだろう。


「お兄様!」


 セレシュルムが絶望的な叫び声を上げる。


 死を覚悟したシューデュディが、目を閉じた。

(加奈!ハルカ!すまない!君たちだけでも逃げてくれ!)

 最期の祈りを捧げる。



「シューデュディィィィーーーーー!」



 上空から加奈の声が響いた。

 白狼のジェット推進で空中から急降下してくる加奈。

 その姿はまるで流星のよう。


 刹那、最大出力のビームが発射された。


 眩い光線がモンスター馬を直撃し、防御結界ごと一撃で粉砕する。

 上級モンスターが光の粒子となって消滅した。


「何だと!」

 オルミレイアスは、その体躯に似合わない華麗な動きで飛翔。

 宙を舞い距離を取る。


 これまでの余裕の表情が、初めて動揺に変わった。


 加奈がシューデュディの前に颯爽と着地する。


「待たせてごめんなさい!」

 加奈が振り返り、力強く宣言する。

「分析は完了したわ!」


 その言葉に、シューデュディが安堵の表情を見せた。

「加奈……」


 絶望的な状況に現れた希望。

 加奈の到着により、戦況は大きく変わっていく。

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