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【アニメーションMV有】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第5章 クロノス教団編

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330話 フェイトイーター

「レジェンド・アルケミック!」


 フェイトシェイバーとデスイーターが空中に浮上し、黄金の光を放ちながら融合を始める。

 二つのアーティファクトが収束していく光景は、まさに神話の再現だった。


 光が混じり合い、螺旋状の魔力が空間を歪ませる。

 やがて、美しく輝く黄金のチャクラムが完成した。

 その表面には複雑な紋様が刻まれ、生きているかのように脈動している。


 ルシウスは片膝をつき、魔力の枯渇で息も絶え絶えになっていた。

 額を汗が伝い、極限の疲労に表情が歪む。


「叔父様ーーー!」

 エレナが駆け寄り、倒れそうになるルシウスを支える。


 ルシウスが震える手で、新たに錬成されたアーティファクトをエレナに差し出した。


「ハァハァ……これを……これを遥斗君に使うんだ……」

 意識は薄れ、必死に声を絞り出す。

 どんな事があっても託さなければならない。

「これは『フェイトイーター』……職業を喰らうアーティファクトだ」


 その名が持つ意味を、エレナは即座に理解した。

 彼女の瞳に希望の光が宿る。


「ただし魔力を大量に持っていかれる……慎重に。私はもう魔力がない。すまないが……頼んだ」

 ルシウスの警告が、緊張感を高めていく。

 エレナの決意が固まった。


 フェイトイーターを腕に装着すると、アーティファクトの重みが彼女の腕に伝わる。

 それは物理的な重さではなく、責任の重さだった。


 エレナが遥斗に狙いを定め、心から願いを込める。

(遥斗くんを助けて!フェイトイーター!)


 その瞬間、アーティファクトが激しく光った。

 エレナの想いに応えるように、素材となったフェイトシェイバーの意志が共鳴していた。


「みんな遥斗くんを助けたがってる!いっけーーーー!!!」


 エレナがチャクラムを射出した。


 チャクラムが遥斗の頭上で静止し、高速回転を始める。

 その回転速度は徐々に上がり、やがて目では追えないほどになった。

 空気を切り裂く音が、規則正しい旋律を奏でる。


 遥斗の体から色とりどりの光が立ち上り始めた。


 赤の光——アリアから得たソードマスター。

 金の光——エーデルガッシュから得た神子。

 緑の光——シエルから得た魔術師。

 白の光——マーガスから得た白銀操術戦士。

 茶の光——ゲイブから得た武道家。


 それぞれが異なる職業の職魂を表している。

 光の帯が遥斗の体から螺旋状に立ち上り、フェイトイーターに吸い込まれていく。

 その光景は、美しく、そして神秘的だった。


 しかし、エレナの魔力が急激に枯渇し始める。

 膝をつき、意識が朦朧としてくる。

 フェイトイーターの要求する魔力は、彼女の想像を遥かに超えていたのだ。


「ああっ、エレナさんがまずいっすーーー!」

 シエルの叫び声が響く。

 それでもエレナは、遥斗への想いで必死に踏ん張った。

 愛する人を救うためなら、自分の命すら惜しくない。


 しかし、魔力の消耗は止まらない

 限界が迫って来る。


 もうだめだと感じた瞬間、急激に負担が軽くなった。


「私の魔力も使え!」

 エーデルガッシュが手を差し伸べ、その小さな体から膨大な魔力が流れ込む。

 神子の職業を持つ皇帝は、常人以上の魔力を有している。


「自分のも持って行って欲しいっす!」

 シエルも必死に魔力を供給する。

 低級職業の魔術師ながら、彼女のレベルは人並み外れて高かった。


「エレナ姫を助けるんだぜぃ!俺っちイケてるぅー」

 グランディスも魔力を注ぎ込む。

 その言葉とは裏腹に、遥斗を思う純粋な気持ちが込められている。


 3人の魔力支援で、フェイトイーターの負担が劇的に分散される。

 チャクラムの回転がさらに加速し、職魂の抽出速度が上がった。


「待ってろ、今助けるぞ!」


 アリアとブリードも加わろうとするが——フェイトイーターが反応せず、二人の魔力は弾かれてしまう。


「どうやらアーティファクトに選ばれた者しか使えないようだ……一緒の時間を過ごしたパーティメンバーしか認めないのかもしれない」

 ルシウスが苦しみに耐えながらも説明する。


 その言葉は絶望を含んでいた。

 折角、力ある者が揃っているのに何も出来ないのだ。

 成り行きを見守るしかない。


 もう少しで職魂を完全に吸い出せそうだが、4人の魔力も限界に近づいていく。

 エレナの顔は青白く、気を失っていないのが不思議な状態だ。


「誰か……誰か……助けて……お願い……遥斗くんを」


 エレナの必死の呼びかけが、静寂を称える戦場に虚しく響く。



「任せろ!!!」

 その時——力強い叫び声が一筋の光明となって降り注いだ。


 振り返ると、マーガスが駆けつけてきていた。

 遥斗の危機に、居ても立っても居られなかったのだ。


 マーガスがフェイトイーターに触れた瞬間、新たな魔力の供給が始まった。


「メンバーを救うのはリーダーの役目だからな!」

 得意げに叫ぶマーガスのオーラが、希望の光となって皆を照らす。


 ついに遥斗からアイテム士の職業を残し、全ての職業をフェイトイーターが完全に吸収した。


 五色の光が収束し、チャクラムの中に封印される。

 遥斗の呼吸が安定し、痙攣も止まる。

 暴走が収まったのだ。


 仲間たちの絆が、小さな奇跡を起こしたのだ。

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