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【アニメーションMV有】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第5章 クロノス教団編

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329話 崩壊する身体

 ハルカの告白を聞いた瞬間、遥斗の体がガクンと糸の切れた人形のように崩れ落ちた。


 そして、そのまま地面に倒れ込む。

 まるで魂が抜けたかのような、あまりにも異様な様だった。


「遥斗くん!」

 エレナの絶叫が戦場を貫く。


 少女と何か話していた直後、突然の意識喪失。

 明らかな異常事態。

 彼女の脳裏には「攻撃を受けた」という不吉な考えが過る。


 エレナが血相を変えて遥斗の元に駆け寄った。

 同時に、エーデルガッシュも「遥斗!」と叫んで走る。


「おい!しっかりしろ!」

 最初にたどり着いたグランディスが必死に呼びかけ、遥斗の肩を揺さぶる。


「何が起きてやがる!」

 アリアも困惑しながら近づき、ハルカに対し怒りと殺意が入り混じった表情で牽制する。


 遥斗は完全に意識を失い、グランディスの声にも全く反応しない。

 先ほどまでの圧倒的な力を微塵も感じさせない、死体のような静けさだった。


 次の瞬間、遥斗の体が激しく跳ねた。


 痙攣のような動きが始まり、四肢が制御を失ったように震え始める。

 口から血が溢れ出し、呼吸も荒く浅くなっている。

 顔色は青白く、冷や汗が額を濡らしていた。


「これは……以前と同じ症状!職業のポーションの副作用だわ!」


 遥斗に起きている現象を、エレナは理解していた。

 体内では、6つの職業が互いを否定し合い、主導権を取る為に激突していた。

 それは、人間の器では到底受け入れられない力の暴走だった。


「やっぱ無理があったんじゃねーのか?あの力は普通じゃなかったしよぉ」

 グランディスが慌てふためく。

 最悪の事態への恐怖が滲んでいる。


「師匠……師匠!しっかりしてくださいっす!」

 シエルが涙を流しながら遥斗を揺さぶる。

 小さな手が遥斗の頬を叩くが、全く反応はない。

 ただ痙攣が激しくなるばかりだ。


 周囲の者たちも、遥斗の異常事態に騒然となっている。

 勝利の歓声は完全に消え失せ、不安と困惑が場を支配していた。


 そこへルシウスが駆けつけた。


「ルシウス殿……」

 エーデルガッシュが遥斗の言葉を思い出す。

『ルシウスさんなら何とかしてくれると思います』——あの時の確信に満ちた声が、脳裏に蘇る。


「頼む!遥斗を助けてやってくれ!」

 皇帝が少女のように英雄に縋りついた。


「私が回復魔法を……」

 ルシウスの隣にいたツクヨミが治療を申し出ると、遥斗の額に手を当てた。


「ヒール・リジェネレーション」

 強力な回復魔法が遥斗を包み込む。

 斬り飛ばされた腕すら繋ぎ合わせる、ツクヨミの回復魔法。

 淡い光が彼の体を癒していく。


 痙攣が治まった。

 呼吸も少し楽になったように見える。

 しかし、それは束の間の静寂でしかなかった。


 数秒後、症状が再発し、今度はさらに激しくなる。

 まるで魔法による介入を拒絶するかのように、遥斗の体が反応していた。


「これは……魔法では治せない」

 月の女神の力でさえ、遥斗の状態を改善するには至らなかった。


 エレナがルシウスに向かって、詳しい説明を始める。

「遥斗くんは今、複数の職業を同時に保有しているの。それが互いに反発しあって、体内で暴走してる……遥斗くんを崩壊させ続けてるの。魔法もアイテムも回復の効果が薄くて……普通なら発狂するほどの痛みを、無理やり押さえ込んで戦っていたの」


 その声は震えていた。

 愛する人の苦痛を目の当たりにし、何も出来ない惨めさが言葉の端々に滲んでいる。


「意識が無くなった今、一切の制御が効かなくなった。非常に危険なのだ。ルシウス殿、どうか!」

 エーデルガッシュが必死に懇願する。

 一分一秒を争う事を理解していたからだ。


 ルシウスがゴッド・ノウズを発動し、遥斗の状態を詳しく観察した。

 神の知識が、遥斗の体内で起きている現象を解き明かしていく。


「なるほど……これは確かに危険だ」

 ルシウスの表情が厳しくなる。

「このままでは遥斗君の体が千切れ飛んでしまう」


「はぁ?千切れ飛ぶ!何か方法はねーのかよ!」

 アリアが驚愕の声を上げた瞬間——遥斗のマジックバッグから光の鼓動が漏れ始めた。


 淡い光が袋の中で脈打っている。

 まるで何かが遥斗の危機を察知しているかのような、意思を持った輝きだった。


 ルシウスが光っている物体を取り出す。

 それはフェイトシェイバーだった。


 ゴッド・ノウズで鑑定し、フェイトシェイバーの特性を理解した。

 遥斗を救おうとしているのだ。

 アイテムでありながら、まるで生き物のような意志を持っていた。


 ルシウスがデスイーターを遥斗の腕から取り外す。

 二つのアイテムが、彼の手の中で共鳴し始めた。


「これなら……遥斗君を救えるかもしれない。いや、きっと……」


 ルシウスが呟く。

 神の知識が、新たな解決策を示していた。


「何をするつもりだ?」

「遥斗君を救うアーティファクトを作る!」

 エーデルガッシュの問いかけにルシウスが力強く答える。


 ルシウスが2つのアイテムを掲げると、周囲に黄金の魔力が渦巻き始めた。

 空気そのものが振動し、神々しいオーラが戦場を包み込む。


 ルシウスが全身から力を解放し、詠唱を始める。


「レジェンド・アルケミック!」


 伝説級の錬金魔法。

 それは、運命そのものを作り変える奇跡。


 遥斗の命を救うため、英雄が最後の切り札を切る。

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