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【アニメーションMV有】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第5章 クロノス教団編

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309話 選択の重さ

 戦場の中央で向かい合う遥斗とアマテラス。

 静寂の中、二人の間に張り詰めた空気が流れていた。

 周囲の観戦者たちも息を殺し、この異様な緊張感に固唾を飲み込む。


 最初に口を開いたのは、アマテラスだった。


「マーガス・ダスクブリッジ……あの覚悟、見事だった」

 その声には、賞賛が込められている。


 人族相手であっても、真の戦士には敬意を表する——それがアマテラスという男だった。


「マーガスは僕のために戦ってくれました」

 遥斗の声は静かだったが、その内に秘められた感情は深い。


「でも、彼を犠牲にするやり方……認める訳にはいかない」

「犠牲だと?」

 アマテラスの金色の瞳が、わずかに細められる。


「あれは犠牲ではない。己の信念を貫いただけだ」


 その言葉に、遥斗は拳を握りしめた。

 マーガスの想いを利用する——それは戦略的にも有効だし、彼の願いでもあった。


 だが、それでも納得できない。


「お前にも奴と同じだけの信念があるのか?異世界人」

 アマテラスの問いかけが遥斗に響く。


「僕は……世界を知りたい。そして未来を見つけるんだ!」

「甘い。この世界に未来などない。あるのは死の選択だけだ」


 その言葉は、氷のように冷たく遥斗の心を刺す。

「では、その選択の重さを教えてやろう!行くぞ!」


 戦闘開始の宣言と共に、アマテラスの姿がぶれた。


(速い!)

 遥斗の視界から、アマテラスの姿が消える。


 次の瞬間、目の前に金髪のエルフが立っていた。

 反射的に手に持った魔力銃で四連射を放つ。


 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ!


 しかし——


 アマテラスは素手で、全ての弾丸を弾き返した。

 まるで蝿を追い払うかのような、軽やかな動作。

 弾丸は明後日の方向に飛んでいき、地面に小さなクレーターを作った。


「なっ——」


 驚愕する間もなく、アマテラスの拳が遥斗の腹部を捉える。


 ドゴォ!


 激痛が全身を駆け巡り、遥斗の体が大きく宙に舞った。

 体さばき「柳の型」で攻撃を受け流そうとしたが、威力が桁違いすぎる。


 そのまま地面に激突し、鈍い音が響いた。


 ベキッ……

 肋骨が折れる音が、静寂の戦場に響く。


「ファイアブリッド!」


 アマテラスの詠唱と共に、巨大な炎の弾が上空に出現する。

 それは遥斗めがけて急降下し、爆炎で包み込んだ。


 ゴオオオオォォォ!

 炎が舞い上がり、遥斗の姿が見えなくなる。


 煙の中から飛び出してきた遥斗は、全身火傷を負っていた。

 属性防御機能のある服も焼け焦げ、所々が炭化している。

 格闘家スキル「金剛武身」で辛うじて致命傷は免れたが、ダメージは深刻だった。


「ストームブレード!」

 アマテラスの手から風の刃が放たれ、遥斗を深く斬った。

 大量の血が噴出し、地面を赤く染める。


「この程度では話にならんな」

 アマテラスの表情は余裕のものだった。


 遥斗の戦闘スキルなど児戯にも等しい。

 観戦している仲間たちが、遥斗の圧倒的劣勢に絶句していた。


「遥斗くん……」

 エレナの声が震えている。


 遥斗は急いでマジックバッグから最上級HP回復ポーションを取り出し、口に含んだ。


 しかし、アマテラスの攻撃は止まらない。

「グランドクエイク!」


 地震魔法が発動し、足場が激しく揺れる。

 バランスを崩した遥斗に、アマテラスの膝蹴りが脇腹に直撃した。


「ぐはあ!」

 内臓を強打され、口から血が溢れる。


 魔力銃での反撃を試みるが、アマテラスは指一本で弾丸を止めてしまう。


「烈空掌!」

 風を纏う程の掌底を放つも、アマテラスの顔面を捉えながら全く効いていない。


「やはり異世界人でも、この程度か……」

 アマテラスが嘲笑する。

 遥斗の必死の連撃を、片手であしらいながら会話を続けている。


「佐倉遥斗……」

 エーデルガッシュが心配の声を零し、シエルも拳を握りしめていた。


(全く通用しない……)

 遥斗は必死に考える。

 正面からの戦いでは絶対に勝てない。


 ならば——


 マジックバッグから「氷結の弾丸」と「業火の弾丸」を大量に取り出す。

 格闘家スキル「振来覇」を叩きつけると、大爆発が起こった。


 氷と炎が激突し、戦場を水蒸気が覆い尽くす。


 視界が完全に遮られた隙に、遥斗は最上級HP回復ポーションを飲み干した。


「影走り!」

 格闘家スキルと加速のポーション効果で、遥斗が高速移動する。

 水蒸気の中を縫うように駆け抜け、アマテラスの死角を突く。


「小細工を……」

 アマテラスが拳を振るうと、風圧で水蒸気が一瞬で払われた。


 しかし、そこに遥斗の姿はない。


「百烈掌!」

 上空から遥斗の声が響く。

 無数の拳がアマテラスに向かって炸裂した。


「つまらん」

 アマテラスは微動だにせず、遥斗を見ることすらなく全ての打撃をかわしていく。

 まるで踊るような優雅な動作で、完璧に回避する。


 裏拳が遥斗を捉え、再び彼は吹き飛ばされた。


 血を吐きながらも、遥斗は立ち上がる。


「アイテム士の面白い能力があるのだろう?見せてみろ」

 アマテラスが遥斗を挑発する。

 やはり情報が漏れていると理解したが、他に選択肢はない。


 覚悟を決めた遥斗が、アマテラスと格闘戦を展開する。


 武道家の職業と各種ポーションによって向上した身体能力で、遥斗の動きは以前とは別人のように洗練されていた。


 右足を軸に体重を乗せた鋭い縦拳が、アマテラスの顔面を狙う。

 それを引き戻すと同時に、腰の回転と共に放たれた右掌底。

 さらに左足を軸に体を回転させ、回し蹴りがアマテラスの脇腹に向かって弧を描く。


 一連の動作は途切れることなく、流れる水のようなコンビネーション。

 足さばきも軽やかで、攻撃の後は即座にステップで間合いを調整し、次の攻撃機会を窺う。


 ガッ、ガッ、ガッ!


 拳と拳がぶつかり合う音が、連続して戦場に響く。


 一見すると、互角の攻防が展開されているように見えた。

 観戦している者たちの中には、「遥斗が追いついた」と錯覚する者もいるほどだった。


 しかし、アマテラスの表情には、まったく緊張感がない。

 それどころか、どこか退屈そうな様子すら見せている。


 彼は右手だけで遥斗の攻撃を受け流し、左手は背中に回したまま動かそうともしない。


「警戒しているのか?これでは体力を消耗するだけだぞ」

 アマテラスが会話を交わしながら、遥斗の天翔脚を片手で軽々と受け止める。


「武道の真似事か……だが所詮は付け焼き刃……」

 遥斗の必殺の一撃も、アマテラスにとっては子供のじゃれつき程度に過ぎなかった。


 まるで大人が幼児の相手をするように、力を抜いて適当にあしらっているだけ。

 洗練された遥斗の動きも、アマテラスの前では稚拙に見えてしまう。


 遥斗の体力が限界に近づき、呼吸が荒くなり足取りもふらついてきた。


 だが、その動きを利用する。

 隙を突いて、よろめいた振りでアマテラスにもたれかかる。


 さらに組み付いた勢いで関節を極め——


「奥義・転身落!」

 投げ技が炸裂する。


 しかし、アマテラスは流れに逆らわず、空中で美しく回転して関節技から脱出した。

 まるで曲芸でもしているかのような、優雅な身のこなし。


 だが——その瞬間こそが、遥斗の狙いだった。


 無防備になったアマテラスの間合いに、遥斗が入る。


「ポップ!」

 生成スキルが炸裂し、アマテラスのHPを素材に最上級HP回復ポーションが生まれる。


 初めて遥斗がアマテラスにダメージを与えた。

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