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【アニメーションMV有】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
第1章 スタンピード編

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25話 レベルの効果

挿絵(By みてみん)

 朝日が窓から差し込み、遥斗の瞼を優しく撫でる。彼は、まぶたの裏に映る淡い光に導かれるように、ゆっくりと目を開いた。


「ん...ここは...」


 見慣れない天井に戸惑いつつ、遥斗はゆっくりと上半身を起こす。体の中にこれまで感じたことのない力が満ちているのを感じた。


「やあ、目が覚めたようだね」


 ルシウスの声に、遥斗は我に返る。研究室の隅に置かれたソファで眠っていたことに気づいた。


「ルシウスさん...僕、どうして...」

「昨日の冒険で疲れ果てて眠っていたんだよ」ルシウスは微笑みながら説明した。

「さて、気分はどうかな?」


 遥斗は自分の手をじっと見つめた。筋肉の一つ一つが、今にも躍り出しそうな活力に満ちている。


「なんだか...力があふれている感じがします」

「それがレベルアップの効果だ。君は昨日、一気にレベル28まで上がったんだよ」


 ルシウスは満足げに頷いた。


「え!?そんなに...」

「ああ」


 ルシウスは続けた。


「しかし、まだ一般の成人男性には及ばないがね。成長の余地は十分にある」


 遥斗は複雑な表情を浮かべた。大きく成長したことは嬉しいが、まだ一般人にも及ばないという現実に、少し落胆を覚える。


「でも、エレナのレベル20や、トムのレベル12と比べれば、君の成長は目覚ましいものだ。特に、トムよりはステータスが上回っているよ。さあ、それじゃあ早速アイテムを登録しようか」

 ルシウスが立ち上がり、棚から何かを取り出そうとする。


「ちょっと待って!」


 エレナが腕を組んで厳しい表情でルシウスを見つめている。


「もう学園に行く時間よ。遅刻しちゃうわ」

「え?」遥斗は驚いて窓の外を見た。確かに、朝日はすでに高く昇っている。

「ほら、急いで!授業に遅れちゃう!」エレナが遥斗の服を投げ渡す。


 遥斗は慌てて服を着替え始めた。ルシウスはため息をつきながら、


「仕方ない、授業が終わってからにしよう」


 三人は急いで外に出ると、待機していた馬車に飛び乗った。

 馬車は石畳の道を駆け抜けていく。遥斗は窓から見える街並みを見つめながら、昨日の冒険を思い返していた。アイアンシェルクラブとの戦い、アリアとの会話...全てが幻の出来事のように感じられる。


「ねえ、遥斗くん。本当に大丈夫なの?無理しすぎちゃダメよ」エレナが心配そうに尋ねた。

「うん、大丈夫。むしろ、すごく元気があふれてる感じがするんだ」


 遥斗は微笑んで答える。



 馬車が学園の門をくぐり抜けた瞬間、鐘の音が鳴り響いた。

「やばい!」トムが叫ぶ。

 三人は馬車から飛び降り、全力で教室に向かって走った。廊下を駆け抜け、教室のドアを開ける。


「はぁ...はぁ...」


 息を切らせながら、三人は自分の席に滑り込んだ。その直後、アルフレッド先生が入ってきた。


「おや、君たち。随分と慌ただしい様子だね。朝から元気が有り余っているようだが」先生は眉をひそめる。

「すみません...」

 クラスメイトたちがクスクスと笑う中、遥斗たちは申し訳なさそうに頭を下げた。

 教室の後ろの方で、マーカスが不機嫌そうに三人を見つめているのが感じられた。特に遥斗に向けられる視線には、何か底知れぬ敵意が込められているようだった。


 アルフレッド先生は軽く咳払いをして、授業を始める。

「さて、今日は錬金術の基礎理論について学びましょう」

 遥斗は深呼吸をして、気持ちを落ち着かせた。昨日までとは全く違う自分を感じながら、彼は新たな一日の始まりを迎えていた。




 その日の午後、陽光が魔力フィールドに差し込み、幻想的な光景を作り出していた。生徒たちは期待と緊張の入り混じった表情で、フィールドの周りに集まっている。

 アルフレッド先生が咳払いをして、全員の注目を集めた。


「さて、今日の戦闘実習では、バウンドホッパーを倒してもらいます。数は多めに出しますので注意してください」


 その言葉に、生徒たちの間でざわめきが起こる。マーカスは、不敵な笑みを浮かべながら遥斗の方をちらりと見た。

(ふん、あの時のザマは忘れられんぞ)

 マーカスの脳裏に、以前の実習で遥斗がバウンドホッパーに翻弄される姿が蘇る。その記憶に、彼の口元が歪んだ。


「では、始めましょう」


 アルフレッド先生の合図と共に、フィールド内に複数のバウンドホッパーが放たれた。長い耳と強靭な後足を持つ巨大ウサギのような姿に、多くの生徒が身構える。

 マーカスは、さりげなく遥斗の近くに移動した。彼の目には底意地の悪い光が宿っている。

(またみんなの前であいつの無能さを晒してやる)


 バウンドホッパーが生徒たちに向かって跳躍を始めた瞬間、マーカスは巧妙に動いた。彼は自分の前にいた生徒を押しのけ、その隙間からバウンドホッパーを遥斗の方向へ追い込んだ。


「おっと、危ないぞ!」マーカスは偽りの警告を発した。


 しかし、彼の予想に反して、遥斗の動きは昨日とは全く違っていた。

 遥斗は、昨日のアイアンシェルクラブと戦っているかのような落ち着きを見せた。彼の目には、バウンドホッパーの動きが以前よりもずっとスローモーションに見えている。


(なんだ...こんなに遅かったっけ?)


 遥斗は軽々とバウンドホッパーの攻撃をかわし、反撃の隙を見出した。彼の手に握られたナイフが一閃する。

 バウンドホッパーは、悲鳴も上げる間もなく光となった。


 場が静まり返る。


 エレナが感嘆の声を上げた。

「すごい...遥斗くん、いつの間にそんな...」

 マーカスの顔が引きつる。彼の計画は完全に裏目に出てしまった。

(くそっ...なんでだ?あいつ、昨日までは...)


 憤慨するマーカスを他所に、遥斗は自分の成長に少し戸惑いながらも、達成感に満ちた表情を浮かべていた。

 マーカスは歯軋りしながら、バウンドホッパーを追いかける。


(くそっ、俺ならもっと...)


 マーカスは意気揚々と前に出た。そして彼は華麗な剣さばきでバウンドホッパーに斬りかかる。確かに、支援職とは思えない程技は洗練されており、一般の生徒を遥かに凌駕している。


 バウンドホッパーは、マーカスの一撃で倒れた。


「ふん、こんなものよ」マーカスは得意げに宣言した。


 彼は、自分の勝利の瞬間をエレナが見ていると信じて、彼女の方を振り向いた。しかし...

 エレナがいるはずの場所には、トムが立っていた。トムは何故か自分を得意げに見てくるマーカスを不思議に思った。


(な...なんだと?)


 彼の取り巻きの二人が駆け寄ってきた。

「さすがですね、マーカス様!」

「本当に素晴らしい剣さばきでした!」

 しかし、マーカスの耳にはその言葉も入らない。彼の目は、遥斗とエレナが何か楽しそうに話している姿に釘付けになっていた。


 マーカスの中で、怒りと嫉妬が渦巻いていく。


(くそっ...くそっ...)


 彼の拳が震えている。


 授業が終わり、生徒たちがフィールドを出ていく中、遥斗は不思議な高揚感を覚えていた。


(これが...レベルアップの実感なのかな)


 彼の体の中で、新たな力が目覚めたような感覚がある。

 エレナとトムが遥斗に駆け寄ってきた。

「遥斗くん、本当にすごかったわ!」エレナが目を輝かせて言う。

 トムも頷いて、「うん、まるで別人のようだった」と付け加えた。


 遥斗は照れくさそうに頭を掻きながら答えた。

「...なんか、体が勝手に動いた感じなんだ」

 その様子を、マーカスが陰から睨みつけていた。彼の目には、憎悪の炎が燃えている。


(覚えていろ...必ず、お前を叩きのめしてやる)


 マーカスの心の中で、遥斗への鬱憤が募っていくのだった。




 馬車が研究所に到着すると、ルシウスが両手を広げて出迎えた。その表情は、まるで子供がプレゼントを開ける直前のような、はしゃいだ様子だった。


「おお、待っていたよ!さあ、早く中へ!」ルシウスの声には抑えきれない興奮が滲んでいる。

 研究所に入ると、そこにはアリアも腕を組んで待っていた。


「やれやれ、まるで新しいおもちゃを手に入れた子供のようだな」アリアはため息をつく。

 ルシウスは気にする様子もなく、大きなテーブルの上に並べられた様々なアイテムを指差した。


「見てくれ、遥斗くん!これらは全て、君に登録してもらうアイテムだ」

 遥斗は圧倒されて目を丸くした。「え...これ、全部ですか?」

 エレナが心配そうに言う。「おじさま、少し欲張りすぎじゃない?」

 トムも頷いて、「そうですよ。遥斗の体調も考えないと...」


 しかし、ルシウスは両手を振って二人の心配を払いのけた。


「大丈夫、大丈夫!遥斗くんなら出来る。そうだろう、アリア?」


 アリアは冷静に答えた。

「ま、昨日の様子を見る限り、予想以上の潜在能力はあるようだがな」

 次々と新しいアイテムを手渡しながら、ルシウスは興奮気味に説明を続けた。


「これは混乱解除のポーション、こちらは聴覚強化のポーション。ああ、この赤いのは発熱抑制のポーションだ。それから、この透明なのは...そう、言語理解のポーションだよ」

 遥斗は言われるがままに鑑定と登録を繰り返していく。その様子を見ていたアリアが、少し感心したように言った。


「なるほど、レベルが上がったおかげで、次々と新しいアイテムを登録できるようになったわけか」


 ルシウスは嬉しそうに頷いた。

「そうだ!アイテム士の真価はここにある。レベルが上がれば上がるほど、より多くの、そしてより高度なアイテムを扱えるようになるんだ」

 ルシウスは満足げに頷いた。


「まだまだたくさんのアイテムがあるぞ。次は...」


 エレナとトムは心配そうに遥斗を見つめているが、遥斗自身は新しいアイテムに触れるたびに目を輝かせ、その能力の可能性に思いを巡らせていた。

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