第八十六話:不安
「先輩方に相談させて頂きたいことがあるのですが」
放課後。俺達の教室にやってきた皐月が徐にそんなことを言ってきた。その為、今ここには俺、クレア、長月、圭太、神無月が帰宅せずに残っている形となった。
「どうしたんだ?」
「実は……………あの件があってから、優梨奈とまだ仲直りができていないんです」
「おいおい……………マジかよ」
圭太が心底驚いたような表情でそう呟く。俺としてはあの件と言われて、いまいちピンときてはいなかった。
「あの件?」
「神無月の家の庭で焼きいもやっただろ?その時のだよ」
「……………ああっ!あの時のか!………………ん?あれって、二ヶ月以上前のことだよな?」
「そうね」
「ってことはお前ら、二ヶ月以上もまともに口きいてないのか?」
「……………はい」
「皐月さんにしては珍しいね。そういうことは早く解決するもんだと思ってたよ。僕と睦月くんでさえ、仲直りは早かったよね?」
「だろ?だから、結構前に俺が背中を押したはずなんだが……………」
「その節はありがとうございました。そして、すみません。これは言い訳になってしまうのですが、仲直りをしようと思ってこちらが出向いても何故か、優梨奈が毎回いなくて会えないことが多くて……………」
「単にタイミングが悪いだけなのか、それとも避けられてるのか」
「どうなんだろうね?まぁ、それでいうと私と霜月さんもそんな時期が多少はあったけど………………ちなみに連絡は取ったりしてるのかな?」
「いいえ。私が一方的にメッセージを送っているんですが、返事がなくて…………まぁ、そもそも仲直りは直接会ってしたいと思ってたんで……………というよりも私と優梨奈なら、それができると思ってたんです」
「ん〜悪いな。気付かなくて。まさか、お前らがそんなことになってたとはな」
「謝らないで下さい。むしろ、こちらがすみません。先輩方は明日から修学旅行だっていうのに」
「いいや。皐月のことだ。おそらく、俺達に心配や迷惑をかけまいとギリギリまで動いていたんだろ?でも、いよいよ明日から俺達が修学旅行でいなくなってしまうから、声を掛けたと」
「本当にすみません。結果的にご迷惑をおかけてして」
「友達のことに迷惑とかないから、安心しろよ……………まぁ、でも俺達の方でも何かないか考えておくよ。なんてったって修学旅行は数日ある。その間に他の土地で過ごしていたら、何かいいアイデアが浮かぶかもしれないしな」
「如月先輩……………」
「ま、俺らがいない間に仲直りしている可能性の方が高そうだけどな。お前らなら、大丈夫だろ」
「っ!?ありがとうございます!!私、頑張ります!!」
「おぅ!」
その後、少し間を空けた皐月は少し照れながら、こう言った。
「あの、その、じゃあ……………先輩方、いってらっしゃい!!」
「「「「「行ってきます!!!!!」」」」」
こうして、次の日。俺達は不安がる皐月を残して他の土地へと旅立っていった。それから数日後、修学旅行から帰ってきた俺達に皐月からもたらされた報告は驚くべきものだった。




