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カル&マクのどろり二人旅  作者: ブーブママ
第六章

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海の旅人

「なかなか面白い知り合いがいるんだな? ガッハッハ!」


 空から虹が消えて──


 モルダは全裸のまま、男たちにテントへ運び込まれていった。それを追って、女の子も一緒に入っていく。彼女が救命処置を施すらしい。


「マァな」

「船乗りの話じゃ、あのマトール、裸で海に浮かんでいたそうだ。心当たりはあるか?」

「さァな。一晩酒を交わしたぐらいで、深い関係でもねぇしな」


 白々しい──とは思ったものの、ボクも川を流れていったのは見たけど詳細は知らないし、そこに意見するのは止めた。


「そうか」


 大男もそれ以上の追及はやめる。


「おお、そういえば船に用があると言っていたな。船は帰ってきたが、何の用だ?」

「乗せて欲しいんだよ。船長でも料理人でも、交渉ができりゃ構わねえ。金なら出す」


 カルは懐から金を入れた袋を取り出す。かなりの金額だ。大男はそれを見て、ふむう、と唸った。


「難しいな」

「あァ、さっきガリガリ船底こすってたしな。修理が必要だってんならそれぐらいは待つぜ」

「うむ、それもあるがな。他にも問題があってな。ガッハッハ!」


 いや問題があるなら笑うところじゃないだろう?


「いずれにしろ料理人の俺には決められんな。娘が出てくるまで待ってくれ」

「娘さん……?」

「おう、さっきのな。カワイイ娘だろう? ガッハッハ!」


 さっきの──というと、あのモルダを抱えてたマトールの女の子? え、全然似てない。


「嘘だと思ってるな? ガッハッハ! まあなあ、あの娘の母はイイトコのお嬢さんだったからな。ありゃあ美人だった。マトールにしては胸も大きくてな。……母親似だったろう?」


 まあその……大きかったね。


「ガッハッハ! なに小娘よ、お前もまだ伸びしろはある、気にするな! ガッハッハ!」


 ボクは男だ、伸びしろがあってたまるか。


「ま、いろいろあってな、今は娘があの船の船長にして、この旅団の長よ。父はただの後見人、料理人にすぎんからな。ガッハッハ!」


 笑い声が大きすぎて、そろそろ耳が痛くなってきた。もう少し控えて笑ってもらえないものか。


「さて、処置にはまだ時間がかかるだろう。体を乾かすついでに、飯でもどうだ。美人の胃袋を掴んだ腕前は、まだまだ衰えておらんからな。ガッハッハ!」



 ◇ ◇ ◇



 大き目の石を椅子にして、焚き火にあたりながらスープを飲む。


 海水をかぶって冷えていた体に、魚介をふんだんに使ったスープはすごく沁みた。料理人と言うだけあって、文句なくおいしい。特にぶつ切りにされて入っている魚が、脂も乗ってて歯ごたえもあって、思わずおかわりしてしまった。


「ダークエルフは、いらんのか?」

「そういう種族なんだ、気にすんな」


 カルはそう言って口をつけていないけど。……おいしいのになあ。


 食事をしながら話を聞いたところによると、彼らは船で海を渡って生活する部族とのことだった。魚を獲り、必要なら港に立ち寄って物々交換をし、また海に出て暮らしているという。


「じゃあ、この浜にも交易目的で?」

「いや、違うな。実はな、しばらく前に魔物に襲われてな、船と人をだいぶ失ってしまったんだな。ガッハッハ! そんなわけで、補修のために陸に上がったのだ」


 重いことを笑いながら言わないでほしい。


「ところがこの浜に上がったところ、エルフから文句を言われていてな」

「文句?」

「うむ。さっさと出て行け、とな」

「えぇ……」


 なんだそれ。リダンの森のエルフはそんなのしかいないのだろうか?


「補修が必要なんですよね? すぐ出て行ける状況じゃないのに……それどころか、困っているのに、出て行け?」

「うむ。滞在するなら税を払え、と言われてな。まあ法外な値をつけられた。よほど我らがここにいることが気に食わないらしい」


 ダークエルフじゃないけど、エルフにどんどん悪印象が溜まっていくな。


「なんとかなだめすかして、補修を終わらせたのだが……また別の問題があってな。魔物が沖に居座って、我らを狙っておるのよ」

「もしかしてさっき話に出た、旅団を襲ったっていう……?」

「そう、それよ。しつこくてなあ、船を出せば必ず襲ってくる。今日こそは追い返そうと娘も張り切っていたんだが、失敗したようだな。ガッハッハ! まいったまいった!」


 びりびりと空気が震える。なんでもかんでも笑い飛ばすから、考えが良く分からない。


「まあ、魔物は海から出られん。それなら魔物が飽きるまで陸にいればいいんだが……さっきも言ったとおり、エルフが出て行けとうるさくてなあ」

「ハン。税金も納めない流れ者なんて、エルフじゃなくても厄介モンだろが」

「ガッハッハ! 言われてしまったな! いやあ、交易で色をつけるとは言ったんだがな、ガンとして受け付けてくれなくてな」

「リダンの森だからな、ヨソモンにゃあ厳しい」


 カルが頷く。ボクも同意見だ。


「だから海に出ないとなんだよね」


 と──背後から声。


「んしょ、と」


 ボクの隣に腰を下ろしたのは、大男の娘──マトールの女の子だった。

2022/1/7改稿

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