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カル&マクのどろり二人旅  作者: ブーブママ
第五章

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39/53

闖入者

「死ぬかと思った……」

「だぁーら、死ななかったろーが。いつまで言ってんだよ」


 森の濃い場所では、陽が傾いただけで暗くなる。


 ボクが今日の寝床と決めた木の根元に座ってぼやくと、カルはめんどくさそうに反論した。


「考えなしに崖から飛ぶから、あんなことに……」

「きっちり着地したろ?」


 するには、した。


 空中で、至法の指輪が作り出した球を矢で破壊されて──ボクたちはすさまじい勢いで杜へと向かって落下した。もうダメだと思ったその時、カルは鉤縄を取り出して太い枝に向かって投げ……うまく枝にかかった鉤が、縦に落ちる力を無理やり横の力に変えた。


 そして縦に落ちる速度のまま、猛スピードで迫りくる木々や枝をカルが蹴って跳んでかわして……ひとつぶつかれば、命はなかった。


「ま、オレじゃなきゃどこかで死んでただろーな」


 それをこのダークエルフは反省の色もなく、むしろ得意気に言うのだった。ボクは呆れてしまう。


「……本気で殺しにきてたよね。ほんと、フィンデリオンと何があったのさ?」

「おっ。オレとアイツの関係がそんなに気になるか?」

「そりゃ死にそうになったからには──って、近いよ」


 カルがニヤニヤと近づいてくるので、両手で押して離せ──ない。


「ちょ、なんだよ! 近いってば!」

「別に二人きりなんだし構わねえだろ?」

「ハァ!?」


 急に何を言って……って、そうだった。


 しばらく寝込みを襲われなかったからすっかり頭から抜けてたけど──コイツ、男のくせに男を襲うようなヤツだった!


「な、なんっ──そういうの、旅に出るときなしって言っ──」

「約束した覚えはねえなあ」

「ひっ」


 カルの手が上着の下に入り込んでくる。


「し、しばらくしなかったじゃないか、だっ、ひっ、だからっ、約束──」

「あァ。里に帰るまでに機嫌損ねられちゃ困るからな、自粛してた。──それとまァ、計画をぶち壊しにするのにゃそれなりに覚悟がいって、そんな気になれなかったってのもある」


 口をへの字にしながらも、カルはボクの服の下で手を動かし続けてくる。ボクは叩いて、押して、抵抗──だめだ、ぜんぜん意に介してない。


「そこんとこ、もう今はやることこなしてくしかねえしな。てことでヤルこともヤルことにした」

「あっ、んッ……ひぅっ」

「イイだろ? どーせたまってんだし?」

「なっ、なに言って──」

「二人旅だからなぁ。一人で処理しておく暇はなかったろ? マッ、むしろそれとなくさせないようにして溜めさせたんだが」

「こっ──」


 コイツ──そんな回りくどいこと──


「その証拠に、こんなガチガチになってんじゃねーか、身体は正直だな?」

「あッ──ちが──」

「イーッてイーッて。気持ちよくなってスッキリしちまおうぜ」


 カルがこちらに体重をかけてきて──ボクは、耐えきれずに押し倒されて、カルの、手が──


 ──ガサッ


 背後の茂みが──音をたてる。カルはゆっくり振り返った。


「誰だ?」


 ものすごい不機嫌そうな声に──


「あ、構わないで続けて?」


 ひょっこりと茂みから顔を出した男が、のんびりした声で続けた。


 特徴的な金と黒の二色にわかれた長い髪──より目立つ、小さな眼鏡をかけた長い顔──というか顎。マトール族の男は、無遠慮に続ける。


「あ、それとも、もうおしまいですか? じゃ、次は僕いいですかね、使わせてもらっても?」


 ボクを指して、のんびりと言う。


「いやーついてるなーこんなところで童貞捨てられるなんて」


 茂みから出てきて、ベルトを緩めながら。


「ダークエルフの兄さんとはこれで穴兄弟ってことになるんですねえ、えっへっへ、よろしく」

「いやよろしくじゃねえよ」

「アガ!?」


 カルが股間を蹴りあげると、顎の長い男はあっさり白目をむいて崩れ落ちるのだった。

2022/1/7改稿

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