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第20話 まだまだ調査中

 『死の接吻』を受けた翌日、俺は巫女様の許しを得て休暇を取った。

 子供達を預かる為だ。


「寂しくなるな」


 巫女様が雇っていた男達の頭目のゲイツが、強面に似合わぬぼやきを零した。


「なんだ、情があったのか?」


「子供は嫌いじゃないからな」

「嫌いだったらお嬢と仕事なんかできんだろうさ」

「言えてらぁ」


 俺とゲイツが話しているところに、ぶらりとやって来た仲間の男二人が会話に入ってきた。

 気の置けない気さくな連中だ。

 俺は二十人掛けの大きなテーブルに、ゲイツと向かい合って座り、出された茶を飲んでいた。

 外の庭では、子供達が思い思いに遊んでいる。

 

「他の連中はどうしたんだ?」


「解雇されたんで、仕事探しだ」


「ごろつきの癖にやけに物分りがいいんだな」


「お嬢を心配させたくないからな。それに、ここはエル嬢の屋敷だ。仮にお嬢が許しても、婚約者のあんたがいつまでも俺達なんぞを住まわせたくねぇだろうと思ってな」


 俺の猿芝居で、彼らと巫女様の繋がりを断ち切った。

 彼らは俺のついた嘘を信じ、恨むことなく受け入れてくれていた。

 そして新たな道をそれぞれが模索しているようだ。


「で、次に住む所は見つかったのか」


「探してるとこだ。俺達意外はまだ就活中でそれどころじゃねぇから、住む所を見つけれねぇやつも出るだろう。数人で住めそうな場所がありゃいいんだがな。早く追い出したいんなら、良さげなとこ紹介してくれよ」


「一軒だけ心当たりがある」


 俺が真面目腐って指を立てて見せると、男三人が食いついてくる。


「なんだ、戸建てかよっ」 


「そうだ。お前ら全員が住めてまだ部屋もあまるぐらいだ。しかも庭付きだ」


「マジかよ、ここと同じじゃねぇかよっ」


 二人の男が盛り上がる中、ゲイツだけがしらけた目で俺を眺めて腕を組む。

 なかなかに冷静な男だ。

 いや両側のやつらが間抜けなだけか。 


「エル嬢か」


 俺は巫女様の名に思わず口元を緩めた。


「エルから、ここはもともと子供たちを住まわせる為に用意したと聞いた。お前らに、子供たちの面倒を見てもらえて感謝してた。だからその礼だってよ」


「だがあんたはそれでいいのか?」


「エルがそれでいいなら俺も別段問題はないんで構わんが、一つだけ条件をつける」


「なんだ?」


「悪事は一切するな。無料(ただ)で住まわしてやるんだ、それぐらいのことは守れんだろうが」 

「あんたに言われなくたってわかってるよ」

「エルの受け売りだな」

「惚れてんだよ」


 そんなつもりではなかったのだが、妙に納得されて調子が狂う。

 

「で、お嬢は元気なのか?」


 昨日の午前中、談話室で話した後、巫女様はまるで憑きものが取れたかのように、穏やかな顔をされていた。

 俺が子供たちの生活から将来までを約束したことが、よほど安心できたようだ。

 お勤め以外の時間は、これまで通り、お庭に出られたり、図書室の本を居室に持ち込まれて、ゆっくりお過ごしになられていた。


「ああ。俺が秘密を暴いたんで怒ってたが、子供たちを預かると言ったら安心してくれた」


「そりゃそうだろう。あいつらのことを本当の家族みたいに大事にしてるからな。……怪盗業をしていたことは責めたのか?」


「いや、責めてはいない……怒らせただけで事情は話してはくれなかったよ」


「もし今後するなら、責めないでくれ。俺が言える立場じゃねぇのはわかってんだがな、頼むよ」


「エルの何を知ってる?」



 ゲイツは俺にエルという少女のことを教えてくれた。


 『死の接吻』を受けた翌日、俺は巫女様の許しを得て休暇を取った。

 子供達を預かる為だ。


「寂しくなるな」


 巫女様が雇っていた男達の頭目のゲイツが、強面に似合わぬぼやきを零した。


「なんだ、情があったのか?」


「子供は嫌いじゃないからな」

「嫌いだったらお嬢と仕事なんかできんだろうさ」

「言えてらぁ」


 俺とゲイツが話しているところに、ぶらりとやって来た仲間の男二人が会話に入ってきた。

 気の置けない気さくな連中だ。

 俺は二十人掛けの大きなテーブルに、ゲイツと向かい合って座り、出された茶を飲んでいた。

 外の庭では、子供達が思い思いに遊んでいる。

 

「他の連中はどうしたんだ?」


「解雇されたんで、仕事探しだ」


「ごろつきの癖にやけに物分りがいいんだな」


「お嬢を心配させたくないからな。それに、ここはエル嬢の屋敷だ。仮にお嬢が許しても、婚約者のあんたがいつまでも俺達なんぞを住まわせたくねぇだろうと思ってな」


 俺の猿芝居で、彼らと巫女様の繋がりを断ち切った。

 彼らは俺のついた嘘を信じ、恨むことなく受け入れてくれていた。

 そして新たな道をそれぞれが模索しているようだ。


「で、次に住む所は見つかったのか」


「探してるとこだ。俺達意外はまだ就活中でそれどころじゃねぇから、住む所を見つけれねぇやつも出るだろう。数人で住めそうな場所がありゃいいんだがな。早く追い出したいんなら、良さげなとこ紹介してくれよ」


「一軒だけ心当たりがある」


 俺が真面目腐って指を立てて見せると、男三人が食いついてくる。


「なんだ、戸建てかよっ」 


「そうだ。お前ら全員が住めてまだ部屋もあまるぐらいだ。しかも庭付きだ」


「マジかよ、ここと同じじゃねぇかよっ」


 二人の男が盛り上がる中、ゲイツだけがしらけた目で俺を眺めて腕を組む。

 なかなかに冷静な男だ。

 いや両側のやつらが間抜けなだけか。 


「エル嬢か」


 俺は巫女様の名に思わず口元を緩めた。


「エルから、ここはもともと子供たちを住まわせる為に用意したと聞いた。お前らに、子供たちの面倒を見てもらえて感謝してた。だからその礼だってよ」


「だがあんたはそれでいいのか?」


「エルがそれでいいなら俺も別段問題はないんで構わんが、一つだけ条件をつける」


「なんだ?」


「悪事は一切するな。無料(ただ)で住まわしてやるんだ、それぐらいのことは守れんだろうが」 

「あんたに言われなくたってわかってるよ」

「エルの受け売りだな」

「惚れてんだよ」


 そんなつもりではなかったのだが、妙に納得されて調子が狂う。

 

「で、お嬢は元気なのか?」


 昨日の午前中、談話室で話した後、巫女様はまるで憑きものが取れたかのように、穏やかな顔をされていた。

 俺が子供たちの生活から将来までを約束したことが、よほど安心できたようだ。

 お勤め以外の時間は、これまで通り、お庭に出られたり、図書室の本を居室に持ち込まれて、ゆっくりお過ごしになられていた。


「ああ。俺が秘密を暴いたんで怒ってたが、子供たちを預かると言ったら安心してくれた」


「そりゃそうだろう。あいつらのことを本当の家族みたいに大事にしてるからな。……怪盗業をしていたことは責めたのか?」


「いや、責めてはいない……怒らせただけで事情は話してはくれなかったよ」


「もし今後するなら、責めないでくれ。俺が言える立場じゃねぇのはわかってんだがな、頼むよ」


「エルの何を知ってる?」



 ゲイツは俺にエルという少女のことを教えてくれた。



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