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勇者パーティを追い出された器用貧乏~パーティ事情で付与術士をやっていた剣士、万能へと至る~【Web版】  作者: 都神 樹
第二章

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75.【sideソフィア】勝算の無い戦い

「ぅ……はぁ……はぁ……」


 異能を使用した直後、体がどっと重くなる感覚に襲われる。


(これ、すっごく疲れる……)


「もぉ、ギブア何やってるのよ。シオンさん、めっちゃ不機嫌だから早く殺しちゃってよ!」


 これまで私たちの戦いを眺めていた女性が声を上げる。


「別に不機嫌ではないよ。でも、なんで手間取っているのかな、とは思ってるけどね」


 ローブを被っている女性も発言する。


「ちっ、今すぐ殺すから待ってろ‼ ――少々遊びすぎたな。次は確実に殺す」


 男から強烈なプレッシャーが放たれる。


(っ⁉ 怖い……。でも、黒竜の圧に、比べれば……!)


 黒竜からのプレッシャーを経験していなかったら、この時点で戦意を喪っていたかもしれない。


「ソフィー、ありったけの攻撃魔術を叩き込め! 僕に当てても構わないから!」


 私は術式を五個同時に(・・・・・)構築する。


(え? なんで⁉ ――ううん、そんなのどうでもいい!)


「――っ!」


 【雷矢(サンダーアロー)】三つと【土棘(ロックニードル)】二つを同時に発動する。


 ログも【土塊武器(アースンウェア)】で作った槍で、さっきと同様に突きを中心に攻撃している。


 でも、それだけじゃなくて、【雷撃(サンダーショック)】などの初級魔術も発動している。


 ……オルンさんみたい。


 でも、更にキレの増した大男には、全く通じていない。


  ◇


(止まって!)


「ちっ、またかよ!」


 これが何度目かの攻防。

 どんどん疲労が蓄積していくけど、それを無視して異能で大男の動きを止めて強引に戦況をリセットする。


 異能で大男の攻撃を妨害しながら、私とログの連携でどうにか戦えている。


 だけど、ジリ貧だって言うことはわかっている。


 仮にこの大男を倒せてもまだ三人残っているし、そもそも私がいつまで異能を使い続けることができるかもわかっていない。




 ――そしてついに私が限界を迎えた。




「……ぅ……」


「ぐわぁ……」


 ログが大きく飛ばされた。


 私の異能で大男の動きを完全に止めることができず、ついにログにダメージが入る。


 幸い大きなけがはしていないようだけど、次は……。


「ようやくか。ま、ガキどもにしては粘った方じゃないか? 今から殺して楽にしてやるよ」


 動く体力も無く、膝をついたまま動けない私に向かって、大男が歩いてくる。



 怖い……。



 イヤだ……。



 死にたくないよ……。



 お姉ちゃん……。




 オルン、さん……。




「やめろぉぉぉ!」


 ログの叫びを無視して、大男が剣を振り上げる。


 直後、後ろで何かが爆発したかのような大きな音が鳴り響いた。


「……あぁ?」




 大男がその方向に注意が向いた瞬間、私の横を一陣の風が吹く。




「――ドライ」


「ぐおぉ!?」


 そして大男の驚いた声がしたと思ったらその声はどんどん遠くなって、再び大きな音がした。


「遅くなってごめん」


 何が起こったのかわからず混乱しているところに、私が今一番聞きたかった人の声が聞こえる。


 顔を上げると、そこにはオルンさんの後ろ姿があった。


「オルン、さん……」


 オルンさんが来てくれた。

 その安心感でこれまで我慢していた涙が流れてしまった。


「うん、俺はここに居るぞ。よくがんばったな。えらいぞ。もう大丈夫。安心してくれ。あとは俺が引き受けるから」


最後までお読みいただきありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[一言] 奇兵隊の到着。
[一言] いつも更新ありがとうございます。
[一言] やっときたー 気づくの遅いっすよ
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