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勇者パーティを追い出された器用貧乏~パーティ事情で付与術士をやっていた剣士、万能へと至る~【Web版】  作者: 都神 樹
第二章

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73.【sideソフィア】30層攻略開始

 オルンさんに見送られて、私たちは三十層の入り口へと転移してきた。


「どう? 似合うー?」


 さっきオルンさんからもらったネックレスを首からかけているところを見せてきた、キャロルが質問してくる。


「うん、似合ってるよ」


「ありがとー。ソフィーも似合ってるよ!」


「そ、そうかな?」


 首から下げているオルンさんから貰った赤色のネックレスを見る。


(オルンさんからのプレゼント……。えへへ、嬉しいなぁ)


「二人とも集中しろ。安全地帯とはいえ、もう大迷宮の中なんだぞ?」


 ログが注意をしてくる。

 でも、ログは必死に顔がほころぶのを我慢しているような微妙な顔をしていて、言ってることは正しいのに説得力があんまりない、かな。


「そんな顔して言われてもね~」


 案の定キャロルから指摘を受ける。


「し、仕方ないだろ! 師匠からプレゼントを貰えるなんて思ってなかったんだから! 不意打ち過ぎるんだよ!」


 ログはこの一か月間ですごく変わったと思う。

 ちょっと前までは周りのみんなをバカにしたような感じだったけど、今はその感じがきれいさっぱり無くなっている。


 オルンさんは黒竜だけじゃなくて、ログの感じ悪かった部分も倒してくれたのかな?

 なんちゃって。


「とりあえず、もう一度ルートと作戦を確認しよ?」


 私が二人に最終確認するよう提案する。

 私も貰ったネックレスをずっと眺めていたいけど、ここに来たのは三十層を攻略するため。

 オルンさんに無理を言って三人だけで挑んでいるんだから。

 私たちが成長しているってところをオルンさんに見せたい。

 がっかりさせたくない。


 二人が私の提案を了承してくれた。

 私は収納魔導具から三十層の地図を取り出して、最終確認をする。

 三十層の地形はフロアボスまでのルートを含めてほとんど記憶している。

 万が一のための各地の逃走ルートも決めているから大丈夫。


 戦闘に関しては、キャロルが前衛、ログが中衛、私が後衛となっている。

 ダメージディーラーは私とキャロル。

 ログは私たちにバフを掛けながら、状況に応じて前衛と後衛を切り替えて戦う。


 これはログの負担が大きい。

 オルンさんも言ってたけど、なるべく戦闘時間を長引かせないようにしないと。


「うん、これなら大丈夫。オルンさんからもお墨付きを貰っているから、気を抜かないで進んでいこう!」


「「おぉ!!」」




 周囲を警戒しつつ、過度に緊張をしないように心を落ち着かせながら決めたルートを進んでいく。


「ストップ! 前方から足音が聞こえる」


 このパーティの索敵はログが担当している。

 ログはオルンさんから教えてもらった【聴覚上昇(ヒアリングアップ)】を発動していて、聴覚を大幅に強化している。


 ログの強化された聴覚が魔獣の足音を捉えたみたい。


「種類はわかる?」


「ごめん、そこまではわからない。でも多分三体」


 ここは狭い一本道だからここでの戦闘なら魔術の方がいい。

 三十層には遠距離攻撃を持っている敵もいるけど、威力は低いからそこまで気にしなくても大丈夫。


「前方から来ているなら、私とログの魔術で迎撃する。キャロルは背後から魔獣が来ないか確認をお願い」


「わかった」「あいあいさー」


 二人に指示を出しながら術式を構築する。

 そして前方から四体のゴブリンがこちらに向かって歩いてきた。

 まだ向こうは私たちに気づいていない。


「ごめん。数間違えた」


「大丈夫。予定通り魔術で倒す! 全員の足を潰すからログは右から三体をお願い! 左は私が倒す! 【風刃(エアロカッター)】!」


 地面を這うように、通路の横幅と同じくらいの風の刃がゴブリンたちの膝から下を斬り飛ばす。


「【土棘(ロックニードル)】!」


 槍のように隆起した地面が、倒れた三体のゴブリンの急所を正確に貫く。


「【雷矢(サンダーアロー)】!」


 【風刃(エアロカッター)】発動直後に構築していた魔術で、残ったゴブリンを倒す。


 私はまだ並列構築が上手くできていない。

 ログは既にマスターしているようで、魔術士である私よりも早くそして正確に魔術が発動できている。


 無いものねだりしても仕方ないけど、やっぱり悔しい。

 私は魔術士なんだから、攻撃魔術はこのパーティで一番にならないと!

 もっともっと頑張んないと、だね……!


「二人ともお疲れー!」


「ソフィーの指示が正確で動きやすかった。今ならこの前師匠に僕の指示がお粗末だと言われていた理由がわかるよ……」


「私もまだまだだよ。お姉ちゃんから色々教えてもらっているけど、全然上手くできていない」


「二人ともネガティブすぎるよー。経験値が違うんだから仕方ないよ。あたしたちはこれからなんだから! まだ上級探索者たちと自分を比較するのは早いと思うよ?」


「うん、そうだね。オルンさんに色々教えてもらったこの一か月間で、私はすごく成長できている実感がある。もっともっと頑張って先輩たちに追いつこうね!」


「よし! そのためにも、まずは三十層攻略、中層進出だ! そうすれば僕たちも第三部隊の仲間入り。本格的に探索者として活動していくことになる! 三人で頑張っていこう!」


「「おぉ!!」」


 ……あれ?

 私たちが第三部隊に入ったらもう新人じゃなくなる。

 そうなるとオルンさんから教えてもらうことはなくなるのかな?


 オルンさんは新人教育の一環で私たちを指導してくれているはず。

 三十層を攻略したらオルンさんの指導を受けられないのかな?

 それは悲しい……。


 でも、いつまでもオルンさんに甘えてちゃダメだよね。

 私たちも早く一人前の探索者にならないと。


最後までお読みいただきありがとうございます。


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[気になる点] でも、ログは必死でにやけるのを我慢しているような微妙な顔をしていて、言ってることは正しいのに、説得力があんまりない、かな。 にやける【若気る】 1. 男色の相手。 2. 尻。特に、肛…
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