表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者パーティを追い出された器用貧乏~パーティ事情で付与術士をやっていた剣士、万能へと至る~【Web版】  作者: 都神 樹
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/313

58.それぞれの過去

 ログとの会話を終えてからエステラさんの元へ向かう。

 朝挨拶した時と同じ机で書類仕事をしているようだ。

 セルマさんはもう帰ったみたいだな。


「エステラさん、お忙しいところすいません。今少し大丈夫ですか?」


「んにゃ? お~、オルっちじゃん! 今日の教育は終わりかね?」


「えぇ、ひとまず初日ってことで、早めに切り上げました」


「そかそか。改めてになるけど、引き受けてくれてありがとね! それで? 私に用事とはなにかな? はっ! もしかしてデートのお誘い!? いや~、困っちゃうな~」


「……すいません。真面目なお話です」


 俺が真剣なトーンでそう言うと、エステラさんの雰囲気も真面目なものに変わる。


「そっか。茶化してごめんね。それで、用件は?」


「用件はキャロラインについてです。彼女の過去について知っていることを教えてください」


「……なるほどね。ここでは話せないからこっち来てくれる?」


 そう言って席を立つと、俺を連れて小さな会議室の中に入る。


「さてと、まずはゴメン。彼女のことを話す前に教育を任せちゃって。先入観無しで彼女と一度会ってほしかったんだよ」


 エステラさんが頭を下げて謝ってきた。

 ここに連れてきたということは、あまり大っぴらにはできない事情があるということだろう。

 でも、話すつもりがあったなら、最初から教えてほしかった。


「もう済んだことなので、いいですよ。今後は前もって話してくれると助かります。キャロラインのこともですが、ローガンとソフィアについても知っていることは全部教えてください」


「うん、わかった。そしたら、比較的軽いお話からしようか。……他人の過去を重い軽いって言うのは失礼だけど、そこは大目に見て。まずはローガン君のことだけど、彼の過去は知っている?」


「さっき聞きました。寒村で生まれ育ったと」


「そっか。それならローガン君について話すことは無いかな。私が知ってることは、その村のみんなに送り出されて、新人募集をしていた《夜天の銀兎》に加入しているってことだから。それじゃあ次はソフィアちゃんについて。彼女のことは聞いてる?」


「正直あまり詳しくは無いですね。貴族の子どもが、貴族院に行かずにここに居る経緯とかもよくわかっていません」


「貴族の制度なのによく知っているね。探索者には関係の無い話なのに」


「勇者パーティにいた頃に貴族と接する機会がありましたから、そこで知りました。それで、ソフィアが貴族院に行っていない理由は知っているんですか?」


「うーん、正直私が知っていることは、表面的なことだけなんだよね。ソフィアちゃんは、どうやら妾の子らしいんだ。それで、その……、ソフィアちゃんのお母さんが、彼女を産んですぐに亡くなっちゃったみたいでね、クローデル伯爵家で育てられたみたいなの。だけど、正妻、つまりセルマっちのお母さんから迫害されていたみたいでね」


 妾の子とは、婚姻関係に無い男女の子どもという意味だ。

 この国は一夫一妻制となっている。

 他国では一夫多妻制を導入している国もあるらしいけど。


「セルマっちはそんなこと気にしていなくて、ソフィアちゃんを可愛がっていたらしいんだ。セルマっちが傍に居るときは、正妻もそこまでひどい扱いをしていなかったみたい。でも、セルマっちが探索者になって、家に帰る回数が少なくなってから、虐待がひどくなったんだって。それを知ったセルマっちが、ソフィアちゃんをここに連れてきたの。正妻としても、元から貴族院に行かせる気はなかったそうだよ」


 なかなかにエグイ話だ。

 貴族が庶民とは違う考えの上で生活していることはわかるが、気分のいい話ではないな。


「最後にキャロラインちゃんの過去だね。それを話す前にオルっちは、《シクラメン教団》って知っている?」


 《シクラメン教団》とは、おとぎ話で語られている最凶最悪(さいきょうさいあく)の魔獣――邪神を信仰している組織だ。

 そして邪神の復活を目標に掲げている。

 いるかもわからない存在の復活を目論(もくろ)んでいる時点で、怪しい組織ではある。

 そしてその実態は、人体実験や人身売買などの非人道的なことに手を染めている。

 その他にも、街や村を襲うと言ったテロ行為も行っていて、二大犯罪組織の一つに数えられている。


「えぇ、知っています。ここでその教団の名前が出てくるってことは……」


「うん、オルっちの推測通りだと思うよ。二年くらい前の話になるんだけど、ギルドの依頼で複数のクランの実力者を集めて、《シクラメン教団》の拠点の1つを叩き潰したらしいんだ。当時、私は幹部じゃなかったから詳しいことはわからないんだけど、《夜天の銀兎》からはアルバートさんだけが参加したらしいよ。そこでアルバートさんが、キャロラインちゃんを連れて帰ってきたって、昔の報告書には書いてあった」


 つまり、キャロルはそこで保護されたってことか?


「キャロラインちゃんはどこかから(さら)われたらしいんだ。これは本人が言ってた。ここからは私の推測も混じるんだけど、教団の拠点で、非道な扱いを受けたんじゃないかなって思っている。その、あの子の異能的に、ね」


 胸糞悪い話だ。

 元から良い印象を持っていなかった《シクラメン教団》に対して殺意が湧いてくる。


「ちょっ! オルっち、抑えて! めっちゃ怖い!」


「あ、あぁ、すいません」


 はぁ……。

 身近な人が被害に遭ったとわかった途端に、こんな感情を持つなんて偽善だな……。


 でも、三人の過去はある程度把握した。

 全員辛い過去を持っていると知った。

 あいつらの心のケアもしていけたらいいな。



最後までお読みいただきありがとうございます。


『面白かった』『続きが読みたい』と思っていただけましたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします!

面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直な感想で構いません。


また、ブックマークもしていただけると嬉しいです。


是非ともよろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ