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勇者パーティを追い出された器用貧乏~パーティ事情で付与術士をやっていた剣士、万能へと至る~【Web版】  作者: 都神 樹
第十章

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309.今後の方針

「さて、それでは私はこれで失礼しますね」


 全員が食事を終えて一息ついていたところに、ナギサの声が響いた。


「復興作業の進捗を見に行かないと。……それと、各所の方々とお話ししておきたいですし」


 席を立つナギサの後ろに、ハルトさん、カティーナさん、ヒューイさんが自然に並ぶ。


「俺たちも行く。顔合わせってやつだろ?」


 ハルトさんが笑みを浮かべる。


「今のうちに顔を繋いでおけば、あとが楽になるでしょうし」


 カティーナさんが軽く肩をすくめながら言う。

 表情は柔らかいが、その目にはしっかりとした計算高さが宿っていた。


「フウカさんが表立って動くわけにもいきませんからね」


 続けたのはヒューイさんだった。

 真剣な声音に、場が一瞬だけ引き締まる。


「三人ともありがとう」


 フウカが静かに頭を下げる。

 その声音には照れよりも、感謝の念が色濃く滲んでいた。


「これくらいは当然よ」


 カティーナさんはさらりと返し、ほんの少し口元を緩める。


「そうですよ。これは、僕らを救ってくれたフウカさんへの恩返しでもあるんですから」


 ヒューイさんも真っ直ぐな眼差しで言葉を重ねた。


 フウカが彼らと一緒に行かないのは、自分が望まぬ立場に祭り上げられるのを避けるためだ。

 下手に姿を見せれば「フウカを姫に」と担ぎ上げようとする者が現れるだろう。

 それがわかっているからこそ、彼女は意図的に距離を取っている。


 そのため、三人が代わりに各所と顔を繋ぎ、自然とナギサが前に立つ形を整えておく必要があった。


「気をつけてな、ナギサ」


 俺が声をかけると、彼女は軽く振り返り、穏やかに笑った。


「はい。皆さんは、ゆっくりお過ごしください」


 そうして、ナギサと三人は旅館を後にした。


 その背を見送るのは、俺とシオン、フウカ、ルーナ、そしてオリヴァー。


 フウカはわずかに唇を結び、襖の向こうに消えていく妹分と家臣たちの姿をじっと見つめていた。


「それで、俺たちはこれからどうする?」


 オリヴァーが問いかけると、シオンが小さく顎に手を当てた。


「私は……テルシェと合流しようと思ってる」


「テルシェさんは、今ツラナミに居るんですよね?」


「うん。キョクトウ西部の偵察をしに行ってる。海を挟んだ隣国ルダイン連邦や大陸の動きを探ると同時に、まだ国内に潜んでいるであろう教団の残党についても調べているはずだから、その手伝いをしようかなって」


 キョクトウは中央に霊山が聳え、その周囲を東西南北の四区画が取り囲んでいる。


 南は国政と文化の中心である、首都ハネミヤ。


 西のツラナミは外国との交易を担う都市で、物資と海外の文化が集まる海路の要衝だ。


 他にも広大な田園で国を支える北の農業都市ホナエと、漁業と塩の生産により国を潤す東の漁業都市シオハラによってこの国は成り立っている。


 そして、テルシェさんは現在、国外と接点のあるツラナミで情報収集をしている。


「オルンは術理の調査があるけど、ほかの三人はやることがないなら、私と一緒にテルシェのとこ行く?」


 シオンの提案に、フウカが「いいかも」と頷いた。


 ルーナとオリヴァーも乗り気な様子だ。


 だが、俺は首を横に振った。


「待ってくれ」


 三人の視線が一斉にこちらへ向く。


 俺はルーナを見やり、静かに告げた。


「ルーナには、別にやってもらいたいことがある」


「……私に、ですか?」


 ルーナが驚いたように瞬きをする。


「あぁ。ルーナ、君にはこれから――外の理に触れてもらう」


 その言葉に、部屋の空気が一瞬張り詰めた。


「外の理……。それはつまり、ルーナに超越者に成ってもらうってことか?」


 オリヴァーが問いかけてくる。


「そうだ」


「……急な話ですね。ですが、そうですね。私は皆さんと比べると随分と力不足ですし……。だから、力を底上げするために必要なのだと、そういうことですね?」


「それは、違う」


 俺は即座に否定した。


「ルーナが弱いとは思っていない。事実、ルーナの実力は世界を見渡せば上位に位置するだろうしな。ルーナに超越者に成ってもらいたいのは別の理由からだ」


「……その、別の理由とは?」


「さっき俺は術理の在る不死鳥の社に行ってきた。そこで、――ティターニアと会った」


「…………え?」


 ルーナの目が大きく見開かれる。


「……? なぁ、ティターニアって……誰だ?」


 場の緊張を割るように、オリヴァーが首を傾げた。


「ちょっとオリヴァー、今はそんなボケをして良い場面じゃないでしょ」


 シオンが突っ込みを入れる。

 だが、オリヴァーの眼差しは冗談で言っているとは到底思えないものだった。


 それを見て、再び俺の胸がチクリと痛む。


 シオンもそんなオリヴァーを見て、動揺が滲んでいた。


「シオン、俺も昨日知ったことだが、俺とシオン以外、ティターニアを知っている人間は存在しない。じいちゃんと同じように――ティターニアの足跡は失われているんだ」


「そんな……」


 シオンの声が震える。


 その隣でルーナがそっと唇を結び、恐る恐る問いかけてきた。


「……それはつまり、不死鳥の社に行けば……ティターニアに会えるということですか?」


「そうだ。あの場所でなら、ティターニアと言葉を交わすことが出来る」


 俺は迷いなく頷いた。


 ルーナの瞳が大きく揺れ、そして次の瞬間、真っ直ぐにこちらを見据えた。


「……それなら、私は、超越者に成ります!」


 その言葉には確かな覚悟が宿っていた。


 場に張り詰めた沈黙を破ったのはフウカだった。


「私はルーナに協力する。ルーナは私たちのために、この国まで来てくれた。力を貸してくれた。だから今度は私の番」


「私も協力するよ」


 シオンがすぐに続ける。


「仲間のためだから。それに……これがティターニアへの恩返しになるのなら、迷う理由なんてないね」


「当然、俺もだ」


 オリヴァーは短く言い切り、腕を組んだまま力強く頷いた。


「ルーナには散々迷惑を掛けてきたからな。俺にできることなら、何でもやるさ」


 フウカ、シオン、オリヴァー。三人の言葉が重なり、ルーナの胸に真っ直ぐ届く。


 彼女は小さく目を潤ませ、胸に手を当てて深く頭を下げた。


「皆さん……。ありがとうございます」


最後までお読みいただきありがとうございます。

次話もお読みいただけると嬉しいです。


また、本日(11月28日)本作書籍版第5巻のオーディブル版が配信されました!

ぜひチェックしていただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
ルーナが超越者に!!!!!!!!複数属性合わせた魔法をガンガン使えるようになったりするんですかねぇ。。楽しみ!
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