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悪魔は 異界で 神となる 【人外進化】  作者: 春の日びより
第一章【奮闘】

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8/110

08 初めての集落




 新作VRMMORPG、イグドラシア・ワールドのβテストが開始されてから五日が経過した。

 VRチャット掲示板では次々と新しい情報が飛び交い、効率的なスキルの上げ方や、魔物の分類、世界各国の情報が刻々ともたらされている。


【第7チャット掲示板・※ゲーム内共用言語を使用すること】


『やっぱり、魔物を適当に倒すより、適度な敵でスキル上昇を狙ったほうがいい』

『でもさ、魔力値が低いと結局ジリ貧で、戦闘効率が悪くなるぜ?』

『大体、MPを使わないと戦闘スキルが反映されないとか、面倒すぎ』

『薬品に頼れよ。魔力回復ポーションあんだろ』

『あれ、高いじゃん。1本銀貨1枚とか、がぶ飲みできねーよ』

『カランサンクとかだと小銀貨6枚くらいだよ』

『やっすっ! どこだよそれっ!』

『えっと……世界地図の左?の真ん中辺り。建物とか東欧っぽい感じ』

『遠いな……俺、カトルバサン。東洋っぽい雰囲気。地図の反対側だし』

『ちょ、世界は丸いんだからすぐ隣じゃんっ!』

『大陸間移動って誰かやった?』

『無理じゃね? 一番船賃高い高速船で、最低数週間かかるそうだから』

『え……その間どうすんの? 船でジッとしてんの?』

『船室でログアウトすればそこに戻るらしい。ログアウトしたままでも最寄りの神殿でログインできるらしいし、船でも魔物は襲ってくるから、武器スキル上げなんかは出来るんじゃね?』

『暇人しか旅は出来ないな……釣りとか出来たっけ?』

『釣り具売ってたよ。そういえば、中央大陸は中世の西欧っぽいけど、他の国はどんな感じ? ちなみに中央大陸真ん中、聖都アユヌ。世界樹に一番近い国。天気のいい日は遠くに見える』

『いいなぁ……俺も時間帯が合えばなぁ。ちなみに地図の左下、ソーサンセット王国。南国っぽい?』

『中世っぽいのに、便利すぎ。トイレは水洗』

『飯も結構美味そうなのに食えない。酒は飲めるけど』

『食事はバフ効果がまだ無いんだって。ヴァージョンアップに期待』

『甘いブロックもう飽きた』

『リアルで食えよ。VRで食っても腹は膨れないだろ』


『それでさ……最近、変なモンスターが出てくるって話、誰か知ってる?』

『なにそれ? 何の魔物?』

『種類は色々。色が違ったり、特殊技能を持っていたりするから『亜種』っぽい感じらしい。他の国の奴が他の掲示板で話してた』

『あ、それ、知ってる。直接見てないけど、あちこちで出現しているらしくて、冒険者ギルドで情報出てた。どっかのサイトで目撃情報まとめてたよ』

『イベント的なモンスター? ちょっとサイト探してくる』

『あ、……それ、私のフレが襲われた奴かも』

『やっぱ、敵対的か』

『うん。見つけた瞬間に襲いかかってきて、ホブゴブリンなのに肌が赤くて、四人パーティだったから倒せたけど、一人犠牲が出て。……何かね、ゲームなのに狂気を感じて怖かった、って……』


『見てきたーっ。情報があったのは10匹くらいだな。やっぱり新しいイベント?』

『どのくらいの強さ? 何か新しい情報はあった?』

『強さは、戦闘スキルレベル2とか3ので倒せたって。新しい目撃情報は、セーズ王国の西の森に、白っぽい幽霊とか霧とかそんなのが出たらしいよ』


   ***


【―NO NAME―】【種族:ガスト】【低級悪魔(ローデーモン)(下)】

・塵とガス状の身体を持つ低級悪魔。脆弱な精神生命体。

【魔力値:132/150】20Up

【総合戦闘力:145/165】22Up

固有能力(ユニークスキル):再判定】【簡易鑑定】


 あのβテスターと戦闘をしてから二日経過した。

 そういえば、向こうは人間種族しか選べないからよっぽど勘が良くないと、魔物がプレイヤーなんて気付かないかもね。どうも、ただのプレイヤーに救いを求めるほど私の精神は追い詰められていたみたい。

 それとは別に二日間色々試してみたけど……レベル的にあんまり上がってない。

 私が強くなってきたのもあるけど、この森だと私以外には魔物がイモムシ系しかいなかったので、あちこち移動して普通の動物も狩ってみた。

 人の精神って……慣れるもんだね。

 いや、今の身体に慣れて『違和感』がなくなったんじゃなくて、違和感があることに慣れたというか。気持ち悪いのに慣れた感じ?

 そんな感じになったので、少し広範囲に移動してみたら、イモムシが少なくなって野生の獣を見かけるようになった。

 兎とか狐とか狼とか猪とか野鳥とか。狐とか鳥は、私が近づいただけで逃げちゃうけど、狼や猪と戦ってみた結果、普通の野生動物は私の敵にならなかった。


 多分、普通に戦ったら狼なんて赤イモムシに勝つし、猪だって突進で押し潰せば黒イモムシにだって勝てると思う。

 でも野生動物は魔物と違って魔力値が小さい。ヘビと同じくらいしかない。

 どういう事かと言うと、魔物は魔力を消費しながら戦うのに、野生動物はただ少ない魔力を持っているだけで、魔力を使って戦わず肉体の力だけで戦っていた。

 黒イモムシやあのプレイヤーの物理攻撃でも、私は1とか2とかダメージを受けていた。でもそれは魔力で強化しながら戦っていたからで、魔力の籠もっていない野生動物の攻撃では、精神生命体であり物理耐性を持つ【ガスト】である私を傷つけることが出来なかったのです。

 そう考えると、あのヘビは魔力を使っていたから、野生動物じゃなくて魔物の幼生体かもしれないね。

 その結果、結構倒したはずなのに微々たる成長しかしていない。

 その私が今、何をしているのかというと、武器を持った人間達に追われている。


「向こうに行ったぞっ!」

「そっちだっ」

「任せてっ、【ストーン・ボルト】っ!」


 ビキンッ!

 ひっ! 石の弾みたいな物が飛んできて、私が咄嗟に身を隠した木の幹が弾けた。見た目は石でも、魔法だから私は普通にダメージを受ける。(実証済み)

 相手は剣や杖を持った三人の人族達。

 一般冒険者のNPCって可能性もあるけど、こんな森の中まで考え無しに突っ込んでくる人なんて、多分プレイヤーだと思う。


【剣士っぽい若い男】【種族:人族♂】【冒険者】

【魔力値(MP):55/65】【体力値(HP):118/120】

【総合戦闘力:145】


【魔術師っぽい若い女?】【種族:人族♀】【冒険者】

【魔力値(MP):57/75】【体力値(HP):58/80】

【総合戦闘力:144】


【戦士っぽい若い男?】【種族:人族♂】【冒険者】

【魔力値(MP):63/70】【体力値(HP):94/110】

【総合戦闘力:148】


 剣士の男の子はそのままっぽいけど、女性魔術師は年齢誤魔化している気がする。

 そして多分、戦士の男性は、動きがギクシャクしているから、リアルだと太っているんじゃないかと予想。

 森の中を追いかけっこしているけど、これはさすがに勝てない。全員が私と同程度の戦闘力で一人は確実に魔術師。他の人も魔法を持っていないとは限らない。

 連中は慣れない森の中で脚は遅くなっているけど、私も頑張って競歩並の速度でしか出ないから、離したり迫られたりしている。

 ……全力で移動していると目眩がするんですけど、いい加減諦めてくれないかな。


 どうしてこんな状況に陥ったのかというと、あの脳筋プレイヤーとの戦闘後、他にもβプレイヤーがいないか注意したり、黒イモムシはいないかと捜したりしてあちこち彷徨っていると、人族の住む農村みたいな集落を見つけたのです。

 思わず興味があってそこに向かったんだけど、……いや、人を襲ったりはしないよ、一応。目的は馬とか牛とか大型の家畜なら、もしかして良い経験値になったりしないかなぁ…と思ったりして、お試し気分で出向いてみた。

 そこでは想像するような昔の村落ではなくて、ある程度裕福そうな農村があった。

 でもそこで働いているのは、エルフ?とか犬耳猫耳の獣人で、奇妙な首輪を付けて覇気も無く働いていた。

 何だろう? 奴隷? 偶に人族が来て、指示を出したり蒸かした芋とスープを与えていたから、思ったよりも酷い環境ではなかったけど、結局働いていたのは人族以外の人達だけだった。

 その人達が気になった、と言うよりは、ケモ耳と尻尾が気になって、もっと近くから見ようと近づいたら、畑に近づく手前で見えないビリビリする何かに弾かれた。

 何これ? ちょっぴりダメージ受けてるし。意味が分からなくて呆然としていたら、建物のほうから武器を持った農民達が現れたので、私は慌てて逃げ出した。

 別に戦ってもただの村人なら負けはしないと思うけど、下手に手を出して兵隊とかで山狩りされたら面倒だからね。

 森に入ったら農民達は追ってこなかったので、安心して近くの森で動物を狩りながらほとぼりが冷めるのを待っていると、あの三人がやってきたの。


 そして、いきなりそのプレイヤー達に攻撃を仕掛けられて今に至るわけなんだけど、どんどん森の奥へ逃げているのに、後の事なんて全くお構いなしに追ってくる。

 また石の弾を撃ってきたっ! あの魔術師、どうして魔力が尽きないの? クスリでも使ってるのかな? また魔法を…あっ、今度は火の魔法を使おうとしているっ!

 この………、いい加減に、しろっ!!


 《再判定》


 ボンッ。

「きゃああっ!?」

 杖の先に燃えてた炎が暴発して、魔術師が悲鳴をあげた。

 え? もしかして魔術師の魔法使用を《再判定》しちゃったの? まさか、自分のだけじゃなくて他人の成否まで干渉できるなんて……あ、ヤバい。


【―NO NAME―】【種族:ガスト】【低級悪魔(ローデーモン)(下)】

・塵とガス状の身体を持つ低級悪魔。脆弱な精神生命体。

【魔力値:65/150】

【総合戦闘力:72/165】

固有能力(ユニークスキル):再判定】【簡易鑑定】


 固有スキルを変な使い方したから、魔力がすっごく減ってるっ。

 もう戦闘どころじゃない。魔術師だけでなく他の二人も驚いて脚を止めているから、今のうちに逃げ切ろう。

 どうやら撒いたみたいだけど、私はそのまま休みなく(疲れないけど)森を突っ切って遠くへ離れた。

 途中で見つけたイモムシなんかを倒して、さらに三日ほど昼夜を問わず移動し続けていると、深い森の中に隠れるようにして、原始的な集落を発見した。





挿絵(By みてみん)


イグドラシア・ワールドの世界地図になります。

見えにくいと思いますが、赤の数字は大国で、黒の数字は小国です。


次回、エルフの集落と初めての接触


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― 新着の感想 ―
集落という事は奴隷じゃない?
[一言] 地図中央にある絶海の孤島みたいなの見るとワクワクするよね
[一言] 倫理的に奴隷はこの手のゲームでNGだな
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