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こちら陽気なたんぽぽ荘 ~大家と店子の家賃戦争~  作者: かきくけ虎龍
第一部 たんぽぽ荘の家賃徴収人のお仕事編
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地獄の一丁目編……極丸の想いと餓える亡者との開戦

おはようございます。

楽しんでいただければ嬉しいです。

生まれた時……瞼をあけたその瞬間から世界は真っ暗な闇だった。


ともに生を受けたはずの兄弟たちは飢えきった親に抵抗する術もなく食い殺さた。


足を滑らせるようにこの世の果てに流れていくと言われる、鉄錆の色をした濁った下水に飛び込んで逃げたことが全ての始まりであり、ここに至る運命の導きだったのかもしれない。


 瀕死の状態で流れ着いた土地は、水銀や亜鉛に蝕まれた死の大地、放射線が跳梁跋扈する汚染された大気、人どころか小さな微生物さえも生きることが許されないドロリとした鈍色の川。


 幼少期の麻呂はそんな世界で不純なるものを食し、この小さな身体に悪意と憎悪を蓄えて生き延びてきた。


――今日からお前は極丸ですわ、私がしっかりと飼ってあげますからご安心なさい――


 この牢獄のような世界に射した一筋の光。


 薄汚れた死体(ゴミ)は大地に這い蹲り、蛆が蠢く鬱蒼とした世界に生きた麻呂を拾い上げてくれた土偶神アラハ様。


 どんな時でもあの瞬間だけは鮮明に思い出せる。


 そして……麻呂はキミと出逢うことができた。


「このサソリっぽい姿はトゲトゲしすぎてあまり好きでないでおじゃるが、スコーピオンクイーンになった麻呂は強いでおじゃるぞ! 麻呂の背中に乗ってしっかり掴まっているでおじゃる……あはーん、リン殿は性欲の塊でおじゃるなぁ、そこはピーピーな場所でおじゃるゆえ触るのはベッドの子作りの時だけで!」


 麻呂は優れた空間認識能力を行使して周囲を見渡し、背中で怯えるリン殿にかからないようにパープルブレス(毒霧)を吐きすべての視界を遮る。


「ピーピーってなんですか!? それよりも極丸さーん、肌がとっても瑞々しくすべすべしていて滑ってしまうーっ!」


「何をいっているでおじゃるか! そんなことは地球に大気があるぐらい当たり前でおじゃりまくる! 将来のお婿様(リン?)のために日夜、お肌の手入れは欠かしたことがないでおじゃる! 素敵なお肌は全乙女の憧れであり嗜みでおじゃるから」


「極丸さんは100パーセント男の子じゃないのですかーっ!」


「リン殿、その言葉は不問でごじゃる! 不純すぎるパォーなびっくりぞうさんのお鼻がついていた昔の黒い歴史のことはしっかりと脳内消去されて、もう途方の彼方に忘れてきたでおじゃるよ」

 

「ええーっ、極丸さんは取り外しているのですかーっ!?」


「同じ穴のムジナでおじゃる、リン殿と一緒で取り外しているでおじゃる、うっふん」


「僕は好きで取り外されたんじゃありません!」


そんな冗談をいいながらも亡者どもが射てくる明確な欲情と殺気を受け流し、麻呂たちが置かれている状況を冷静に分析する。


麻呂は苦笑してしまった。


数千、数万の蠢く亡者などが徒党を組んだところで麻呂には傷一つつけることも叶わぬ……が心配そうに麻呂のキュートな顔を見つめてくるリン殿にわざとらしく得意げな顔をして軽く尻尾を振った。


かちかちと両手のハサミを動かす……麻呂は亡者たちに大地を這い舐めるような毒気を撒き散らす……欲望のみに興じた亡者の存在を荒唐無稽なほどの力の差を見せつけるために。


「リン殿」


「何ですか、極丸さん?」


「お尻の菊門を麻呂に捧げる前に一つだけ約束してほしいでおじゃる」


「絶対にささげません! それで約束とは?」


「そうでおじゃる……麻呂はりん殿のことを本気で気に入っているでおじゃる……なので今から暴れる姿……本当の麻呂を見てしまったら嫌われるのではないかと怖くて……怖くてしかたがないのでおじゃる」


 麻呂は心の叫びを気取られぬように丁寧にゆっくりと話すが、嫌われてしまうかも知れない恐怖が少しだけ心を締め付ける。


「今から麻呂は獰猛なスコーピオン族の王たる所以の本能の一端を具現化させるでおじゃる……容赦の欠片も慈悲の欠片も持ち合わさぬ戦士(スコーピオンキング)になってしまうのでおじゃる……そして、その姿も幼少期の名残をとても残していて醜いでおじゃる」


「極丸さんは醜くないですよ! 僕にとっては大切な仲間、アラハ先輩も僕に言ってくれましたが、そう、言うなれば僕たち家賃徴収人の仲間は家族同然じゃないですか!」


「家族……麻呂のことを家族と?」


「極丸さんよりも僕は心も身体も醜いですよ……今も怖くて、泣きそうで、極丸さんなら何とかしてくれるんじゃないかな、と他力本願で……だけど……どうしてもシルクに逢いたくて……」


「家族……うむ、麻呂は決意したでおじゃる!」


 思わず頬が緩んだ、そんな感覚が……『家族』と言ってもらえた幸せが麻呂の決意を促す……麻呂の命に変えても、どんなに極悪非道で後ろ指さされる手段を用いてもりん殿を現世に連れ戻すでおじゃる。


「リン殿!」


 麻呂は気持ちが高揚したらしく、思わず本音を大きな声で叫んでしまった!


「この借りは……いや、少しでも、一ミリでも麻呂が怪我をしたら、極上の傷モノで嫁の貰い手がなくなるので、リン殿は責任をもって麻呂をお嫁に貰ってもらうことで、真の家族になって共にアラハ様に恩を返えすでおじゃるよ!」


いかがでしたか?

少しだけ極丸ストーリーを挟んでみました。

少しでもクスッと笑って頂ければ嬉しいです。

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