お久しぶりです
エルデンリングDLCクリアしました!
とりあえず、ラダーン、ベール、ガイウスの順番で嫌いでしたが、エルデンリング熱が再発するくらいには面白かったです。
「皆さん、お久しぶりです」
派遣が早すぎると困惑をしたが、すぐに氷解した。
「真門くん、久しぶり。ゴールデンウィークでは世話になったが、その後に声もかけずに不義理なことをしたな」
「いえいえ、香織ちゃんから何か言われた結果ですよね。僕も結構怒られたので、お相子ということにしましょう」
「分かった、そうしよう」
隈護真門。
天乃宮の分家、隈護家の長男であるが、政治的要因から継承権を持たない。
しかし、天乃宮の星詠みとの繋がりがあるなど、一族から疎まれているわけではない。
「ところで、そっちのよく分からない子はナンだ?」
睨むように半眼となる。
殺意も闘気もにじみ出ないように、細心の注意を払いながら。
「ああ……、名前は小隈綾芽。隈護の分家の子で、諸事情あってうちで預かってるというか、なんというか……詳しく聞かないでください」
「泥沼にハマりそうだから聞く気はない。だが、君には借りがある。厄ネタだったとしても手を貸すつもりだから、必要があれば声をかけろ」
「はは、は……――ご厚意には感謝しますが、綾芽に関しては問題ありませんよ。悠太先輩はもとより、香織ちゃんの手を煩わせる気もありませんから」
真門の後ろに控える少女は、つまらなそうに呆けている。
小柄な体躯と相まって幼さを感じさせるが、悠太は綾芽に脅威を感じている。それは、スクラップや鬼面に対する以上のものだが、真門が言うのならばと胸の内にしまう。
「あの、パイセン。挨拶は終わりでいいんですか? 物騒な会話してましたけど、話は付いたってことでいいんですよね?」
「ああ、悪い。そろそろ本題に――」
「綾芽ちゃーん! 今日からよろしくね!! ってか、これを機に魔導戦技部に入らない!? 部活はいってないでしょ!!」
むぎゅぅ、と可愛らしいうめき声が漏れる。
呼吸すらままならない抱きつき方をするが、綾芽は「鬱陶しいな」と成美の背中を眺めるだけ。
(……もう少しばかり、人間らしい擬態をしてほしいものだが)
口には出さず、狼狽える真門を眺める。
純粋に心配しているようにしか見えず、警戒するのが無駄のような気がしてくる。
「後輩、その子と知り合いなのか?」
「クラスメイトです!! 仲良くしたくてアタックしてるんですけど、いっつもどこかにフラっと出て行っちゃって上手くいかなくて――でも、同じ部活になれば!!」
「離して」
「あ、はい……」
解放されると同時に、小走りで真門の背に隠れる。
成美は空になった手を眺めながら、閉じたり開いたりを繰り返す。
「後輩がすまん」
「いえ、本当にイヤなら逃げたり無理やり逃げ出すので……」
「え!? じゃあ、もう一度」
「ヤダ」
ノータイムで拒絶され、崩れ落ちる成美。
拒絶した綾芽は無表情で、声も平坦であるが、不思議と嫌悪の感情はなかった。
「迷惑な後輩は置いといて、真門くんは魔導戦技の空間を作れるということでいいんだよな?」
「サーバーが必要にはなりますが、作成ツールはあるので可能です。ただ、サーバーの設置は本番の三日前になるので……そこはご了承ください」
「高い物だろうから、仕方ないか。――だが、三日じゃデバックや難易度調整の時間が取れないな。色々と考え直す必要が」
「その点はご心配なく。部室にサーバーを持ち込むことは出来ませんが、最初からサーバーが設置されている場所で試せば良いんです」
すでに設置されている場所は、言われてすぐ思い至った。
というよりも、思い出した。魔導戦技部にとっては当たり前すぎて盲点となっていた。
「魔導センターか。あそこなら確かにサーバーがあるが、設定をイジって良いのか? オンラインだから他の機体に影響がでないか?」
「オンラインサーバーなら影響がでるのでイジれる設定にはなってません。ですが、エネミーと戦う練習モードなどはオフラインですし、ステージを構築するモードもあります。今回使うのはこの構築モードで、保存しておけばすぐにコピーできますよ」
紹介されただけあり、魔導戦技の詳しい仕様を理解している。
感心するところであるが、魔導戦技部の面々はポカンと口を開けている。
「あの……どうしました? もしかして、何か不都合でも?」
「いや、練習モードだとか、構築モードだとか、そんなのがあったんだなと」
「あたしら、オンラインしか使ってなかったというか、パイセンの課題をこなすのに手一杯で他のモードがあることに気付かなかったというか――気付いてたら色々と遊べたのにいいいぃぃぃ!!」
「私は、気付いても使いこなせないけど、エネミーは気になるな。きっと、魔導災害で魔獣がでたときの対策のためにあるんでしょ。ヴォルケーノがいるから、そっち方面になりそうだし、今のうちになれといた方がいいかなって」
魔導戦技は正式稼働前のため、知らなくとも無理はない。
普段使わない機能など、誰かから紹介されない限り使わない人も珍しくないのだ。
「まあ、メインはオンラインのサバイバルモードなので、知らなくても問題ありませんが……どんな課題を出したんですか?」
「後輩とライカ先輩は八〇位以上、フーは五〇位以上、俺は祓魔剣を使わずに討伐数トップで最後まで生き残ること。中々に厳しいが、無茶と言うほどではない」
「……悠太先輩の縛りと目標は別にして、他は厳しくありませんか? 特に悠太先輩が入る時は、奥伝や魔導一種がゴロゴロいる魔境ですよ」
「やっぱり、俺が入るときはレベルが上がってたのか。腕利きが多くて不思議だったんだ」
「……自分の価値に、少しは目を向けてください」
剣聖の中では最弱であろうと、剣聖という時点で価値がある。
闇討ちを別にすれば、剣聖との手合わせなどは大金を積んでも叶うとは限らないほど貴重。それが無料かつ死なずに死闘を繰り広げる機会があると知られれば、集まらないはずがないのだ。
「向けたところで、何か変わるわけでもない。むしろ、予測しないことに対処する鍛錬になるからいいんだが……俺以外は別だな」
思案のため、指を唇まで動かすが、そこに待ったがかかる。
「ちょーっと、待ってください。もしかしてですけど、あたしらとパイセンの入る時間を変えよう、なんて言いませんよね?」
「連携や対策は取れてるのに、順位が伸び悩んでいるのが不思議に思っていた。俺のせいで難易度が不当に上がっているとしたら、さすがに――……」
課題を設定したとき、ライカと成美の二人はすぐにクリアすると悠太は考えていた。
実戦経験がないとはいえ、資質だけを見れば二人は一級品。呪力や才能のごり押しでも達成すると思っていたが、今日まで達成できないのを不思議に思っていたのだ。
「あのですねー、パイセンが原因なのはこっちは百も承知なんですよ! その上で、パイセンの課題を超えようと努力してるんです。いまさら難易度を下げてクリアだなんてヌルいこと、するわけないでしょうが!!」
「そうですよ、南雲くん。一流の魔導師の戦い方を間近で体験することが、上達の近道なんですから。その機会を奪おうだなんて、剣聖だからって許されることではありません。フーカちゃんに聞いても、同じ事を言うはずです」
剣人会との抗争を乗り越えたのは、魔導戦技で一流の闘争を経験していたから。
呪力や才能面では劣っていても、技術や戦術、経験で圧殺されたことは、フレデリカに斬り殺され続けた以上の衝撃だった。
「格上との手合わせは、上達の近道ですからね。これまで潰れなかったのであれば、無理に帰る必要もありませんね」
「そうですそうです! なのでこの話は終わり、いいですね!?」
ライカと成美の強い眼差しに、思わず笑みがこぼれる悠太であった。
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