表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月見草の令嬢は王宮庭園で花開く  作者: 海老川ピコ
8/51

第8話:下町の子供たち

 昨夜の十六夜会では、ルナと静かに庭の未来を語り、癒しの場への決意を新たにした。

 今夜は少し賑やかな予感。

 王都の下町の子供たちが、庭に遊びに来るという噂を耳にしたのだ。


「ふう、子供たちが来るなら、庭を楽しくしないと! 花冠作り、喜んでくれるかな……」


 私は呟きながら、苔むした石の階段を下り、錆びた鉄の門をキィッと開けた。

 月光が庭を優しく照らし、月見草がキラキラと輝く。

 夜光蝶がふわふわと舞い、どこからかフクロウの「ホウ、ホウ」という低い鳴き声が響く。

 庭はまるで夢のオアシス、幻想的な空間だ。

 私は花壇のそばにしゃがみ、月見草に触れた。

 指先がふわりと光り、花がさらに輝く。


「ルナ、どこ? 今日、子供たちで賑やかになるよ! 準備手伝って!」


 私は笑いながら周りを見回した。

 月見草の光の中に、ルナがふわっと現れた。

 銀色の髪が月光に揺れ、白いドレスがキラキラ輝く。

 夜光蝶が彼女の周りをくるりと舞い、フクロウの鳴き声が響く。


「姉貴、子供たち!?  うわ、めっちゃ騒がしくなりそう! 私のキラキラな庭、荒らされないよね?」


 ルナはジトッとした目で私を見ながら、ニヤリと笑った。

 私は腰に手を当てて反論した。


「荒らすわけないよ! 子供たちに月見草の花冠作り教えて、癒しの場を広げたいの。ルナ、夜光蝶でキラキラな演出、頼むね!」

「ふっふー、姉貴、いい計画だね! よし、ルナ様の光のショー、子供たちにも見せてやるよ!」


 ルナはくるりと空中で一回転し、指をパチンと鳴らした。

 月見草の光が強まり、夜光蝶がキラキラと舞い上がる。

 蝶の翅が月光を反射し、庭がまるで星の海のようだ。

 フクロウの鳴き声がその幻想的な雰囲気を深める。

 私は小さな木のテーブルに月見草の茎と花びらを用意し、花冠作りの準備を整えた。

 その時、苔むした階段から小さな足音が複数聞こえてきた。

 子供たちの笑い声と、弾むような話し声が近づく。

 夜光蝶がふわりと月見草の光に隠れ、フクロウの鳴き声が一瞬止まる。

 私はテーブルから立ち上がり、入り口を見た。


「エリス姉ちゃん! ここ、めっちゃキレイ! 光ってる花、すげえ!」


 下町の子供たち、五人ほどが駆け込んできた。

 リーダー格の女の子、ミナが目をキラキラさせて叫んだ。

 10歳くらいの男の子たちが、月見草の花壇に飛びつく。

 私は慌てて手を振った。


「ミナ! みんな、待って! 花、踏まないでね! ここ、月影の庭だよ。今日は花冠作り一緒にやろう!」

「花冠!? やった! 姉ちゃん、教えて教えて!」


 ミナが弾んだ声で言い、他の子供たちが「オレも!」「私も!」と騒ぐ。

 ルナがふわっと子供たちの前に現れ、腕を組んでニヤリと笑った。


「ふーん、ちび人間たち、うるさいね! 姉貴の庭、ちゃんと大事にしろよ! ほら、夜光蝶見てみな、キラキラだろ?」


 ルナが指を振ると、夜光蝶が一斉に舞い上がり、月見草の光と絡み合ってキラキラと輝いた。

 子供たちが「うわっ!」「蝶、光ってる!」と目を丸くする。

 フクロウの「ホウ、ホウ」が再び響き、庭の幻想的な雰囲気が子供たちの笑顔を包む。

 私はテーブルに子供たちを呼び、月見草の茎を手に持たせた。


「ほら、みんな、こうやって茎を編むんだよ。花びらをそっと挟んで……優しくね」


 私は転生前の花屋の技術を思い出し、ミナに花冠の作り方を教えた。

 子供たちは不器用ながら、楽しそうに茎をいじくる。

 ミナができたての花冠を頭に載せ、ニッコリ笑った。


「姉ちゃん、できた! でも、なんか……ぐちゃぐちゃ?」

「ぐちゃぐちゃ!? ミナ、センスゼロじゃん! 私の月見草が台無し!」


 ルナが空中で笑いながら毒舌を吐いた。

 私はルナをチラッと見て、ツッコんだ。


「ルナ、ひどい! ミナ、初めてにしては上出来だよ! ほら、夜光蝶もミナの花冠に止まってる!」


 夜光蝶がミナの花冠にふわりと止まり、キラキラと輝く。

 子供たちが「すげえ!」「私も!」と騒ぎながら、花冠作りに夢中になる。

 フクロウの鳴き声が静かに響き、庭が笑顔と光で満たされる。

 私は子供たちの笑顔を見て、胸が温かくなった。


「みんな、楽しそう! この庭、こうやって笑顔でいっぱいにしたいんだ」

「姉貴、いいねその夢! でも、ちび人間たち、もっとセンス磨けよ! ほら、私が光のいたずらしてやる!」


 ルナはニヤリと笑い、指をパチンと鳴らした。

 夜光蝶が子供たちの花冠に集まり、小さな光の輪を作った。

 ミナが目を輝かせ、他の子供たちが「うわ、魔法!」「姉ちゃん、すごい!」と叫ぶ。

 私は笑いながらルナにツッコんだ。


「ルナ、目立ちすぎ! でも、子供たち喜んでるから、いいよ!」

「ふっふー、私の光、子供にも大人気! 姉貴、もっと花冠教えてやりなよ!」


 ルナが得意げに空中で一回転した。

 私は子供たちに新しい茎を渡し、一緒に花冠を編んだ。

 転生前の花屋では、忙しさでこんな純粋な笑顔を見る余裕がなかった。

 でも、この庭では、子供たちの無邪気な笑顔が私の心を癒す。


「エリス姉ちゃん、この花冠、ママに持ってく! めっちゃキレイ!」


 ミナが花冠を掲げ、ニコニコ笑った。

 私はその笑顔に、胸がじんわりと温かくなった。


「ミナ、きっとママも喜ぶよ。みんな、この庭、いつでも遊びに来てね。ここは、みんなの癒しの場だから」

「癒しの場!? 姉ちゃん、なんかカッコいい! また来る!」


 男の子の一人が叫び、子供たちが花冠を頭に載せて走り回った。

 夜光蝶が彼らの後を追い、キラキラと光る。

 フクロウの鳴き声が庭に響き、月見草の甘い香りが漂う。

 私はルナと顔を見合わせ、クスッと笑った。


「ルナ、子供たち、めっちゃ楽しそう。やっぱり、この庭は特別だね」

「ふん、姉貴の夢、ちょっとカッコいいじゃん。私の月見草と夜光蝶、フクロウの声があってこそだけど!」

「ルナも花バカでしょ? この庭、みんなでキラキラさせようね!」


 私はツッコみながら、月見草を見つめた。

 子供たちが花冠を手に庭を走り回り、笑い声が夜空に響く。

 この幻想的な庭でのスローライフは、子供たちの笑顔でまた一歩進んだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ