第46話:十六夜会の未来
十六夜の月が「月影の庭」を柔らかく照らし、月見草と夜来香がほのかに揺れる。
夜光蝶が静かに舞い、フクロウの「ホウ、ホウ」が遠くで響く。
私はエリス・ルナリス、18歳、没落貴族の娘で王宮の雑用係。
昨夜の月見茶会では、テオの月見草のしおりと子供たちの笑顔が庭の癒しを深めた。
今夜は十六夜会、満月より少し欠けた月光の下、静かな庭で未来を考える時間が欲しい。
ルナと二人、庭のこれからを語り合いたいと思う。
庭の中央に小さな木製のテーブルを置き、月見草の花冠とセリナ直伝のポーションの小瓶を並べる。
十六夜の月光がテーブルを淡く照らし、甘い花の香りが漂う。
転生前の花屋で、夜遅く花束を包みながら未来を夢見た記憶がよみがえる。
あの頃は忙しさに追われていたけど、この庭ではゆっくりと心を解放できる。
ルナが月見草の光の中からふわっと現れ、銀色の髪が月光に揺れ、白いドレスが星屑のように輝く。
彼女は珍しく静かな笑みを浮かべ、言う。
「姉貴、茶会のキラキラ、めっちゃ良かったな。今夜は十六夜会、しっとりモード? 私の光で、未来もドカンと輝かせちゃう?」
私は花冠を手に、くすっと笑う。
「ルナ、いつも派手だね。今夜は静かに、庭の未来を考える時間にしたい。この庭、ずっと癒しの場にしたいな」
「ふっ、姉貴の聖女パワー、しんみりバージョンか! いいよ、私のキラキラで、姉貴の夢を月まで照らすぜ!」
ルナが宙を舞い、月見草の光をそっと強める。
夜光蝶がテーブルを囲み、ふわりと舞う。
私はティーポットを手に、ポーションをカップに注ぐ。
今夜は他の参加者を呼ばず、ルナと二人で庭の静けさを味わいたい。
苔むした階段は静かで、夜の庭は私とルナだけの世界だ。
転生前の花屋で、閉店後の静かな店内で花に話しかけた時間が、この庭の十六夜と重なる。
「ルナ、この庭、昔は王妃の癒しの場だったよね。セリナさんの話やテオのしおり、フィンの夢、みんなの笑顔で、今は王都の癒しの場になってる。でも、もっと大きくしたい。貴族も平民も、みんながここで笑顔になれるように」
ルナがテーブルに降り、珍しく真剣な目で私を見る。
「姉貴、でかい夢だな。昔の王妃も、月見草で心を癒してた。この庭、姉貴の手で王妃の時代を超えたぜ。私のキラキラも、ちゃんと役立ってるだろ?」
私は微笑み、月見草に触れる。
指先がふわりと光り、庭の光がほのかに強まる。
「ルナ、めっちゃ役立ってるよ。君の光がなかったら、月見茶会もこんなにキラキラしなかった。転生前の私は、忙しくて自分の夢を見失ってた。でも、この庭で、みんなの笑顔が私の光なんだ」
ルナが目を輝かせ、空中でくるりと回る。
「姉貴、ちょっとしんみりしすぎ! でも、いいね、その目! ほら、昔の姉貴、見てみねえ? 私のキラキラで、転生前の光、呼び戻してやる!」
ルナが指をパチンと鳴らすと、月見草の光が集まり、空中に淡い幻が浮かぶ。
転生前の私が、花屋のカウンターで花束を包む姿。
疲れた顔で、でも客の笑顔に小さく微笑む瞬間。
幻はゆっくりと消え、私は胸が熱くなる。
「ルナ……あの頃、忙しすぎて自分の心を忘れてた。この庭で、みんなの笑顔が私の夢を思い出させてくれる。ありがとう、ルナ」
ルナが照れ隠しにフンと鼻を鳴らし、言う。
「姉貴、しんみりすんなよ! 君、もう王都の光だろ? 私のキラキラと月見草で、夢バッチリ叶えるぜ!」
私は笑い、ポーションを一口飲む。
甘い香りが胸に広がり、転生前の疲れた夜が遠くに感じられる。
私はテーブルに花冠を置き、十六夜の月を見上げる。
「この庭を、永遠の癒しの場にしたい。貴族も平民も、子供も大人も、みんなが月見草の光で癒される場所。ルナ、君と一緒に、もっと大きくするよ」
ルナが私の肩に降り、ニヤリと笑う。
「姉貴、いいねその気合い! 私のキラキラ、独占してもいいよね? 庭の相棒は私だけで十分だろ?」
「ルナ、独占はダメ! 庭も相棒だし、みんなの笑顔も宝物だよ。でも、キラキラはルナのおかげね」
私はツッコみながら、月見草に触れる。
指先がふわりと光り、庭の光が強まる。
夜光蝶が私の花冠を舞い、フクロウの鳴き声が静かに響く。
十六夜の月が庭を照らし、王都の夜景が遠くで輝く。
私はルナを見回し、決意を口にする。
「ルナ、この庭を王都の癒しの中心にするよ。月見茶会も、感謝祭も、テオのしおりも、フィンの夢も、全部この庭の光。みんなで未来を作っていこう」
ルナが両手を広げ、光を庭全体に放つ。
月見草と夜来香の香りが漂い、夜光蝶が光に合わせて舞う。
ルナが目を輝かせ、言う。
「姉貴、聖女パワーと私のキラキラ、最強コンビだ! この庭、永遠にキラキラさせるぜ!」
私は微笑み、月見草の花びらを手に持つ。
転生前の花屋では、客の笑顔が私の支えだった。
この庭では、ルナとみんなの絆が私の夢を広げる力になる。
十六夜の月が庭を包み、フクロウの鳴き声が静かな決意を深める。
私はルナに目を向け、笑う。
「ルナ、君と一緒なら、どんな未来もキラキラだよ。この庭、みんなで守っていこう」
ルナが空中で一回転し、光をさらに強める。
月見草の光が庭を満たし、夜光蝶が私の周りを舞う。
この幻想的な庭でのスローライフは、十六夜の月とルナのキラキラで、また一歩輝いた。




