お似合いのふたり(Ⅳ)
変態だー!と叫びたくなるくらい変態です。R15推奨。ルティ編最終話です。
そのまま彼の身体を押し倒して、今度は私が彼の上に馬乗りになる。涙を溜めた赤い瞳が驚きで開く前に彼の腕を確保して、私が拘束されたように頭の上にクロスさせ左手で押さえつける。
「ふふ、形勢逆転してしまいました」
「あ……」
少し怯えた表情の彼の顔を見ると、背中にゾクゾクと何かが這い回り、顔に熱が集まってくるのを感じる。
(あぁ、顔が熱いです)
唇をペロっと一舐めすると、恍惚とした何とも云われぬ快感が胸の底から湧き上がってくる。身体も芯が燃えるように熱くなってきた。
「君が初めてを奪ってくれないから、こちらから奪われに行かなければならなくなりました」
「ひっ」
彼の短い悲鳴を合図に右手を頬にあて、そのまま頭へとずらして行く。赤い髪に紛れた彼の敏感な耳を指でこねくり回す。
「ひぁっ! ちょっ! やめっ!」
彼が顔を赤くしながらイヤイヤする仕草に、私の感情の制御は粉々に砕かれてしまった。ふつふつと現れる愉悦感と燃え滾る欲望に、私は好き放題に振り回されてしまう。
「可愛い……」
もはや心の声が漏れようとも気にしない。ここには私と彼しかいないのだ。我慢する必要はない。
「ひぐっ。あっ。んんん!」
彼の左耳を集中的に責めれば、上気した顔を歪ませて喘ぎ声とも取れる悲鳴を上げる。私の視界もぼやけてきてしまった。限界だ。
「あぁ、もぅ我慢できません」
漏れまいとする彼の押し殺した可愛い声に、私の忍耐も限界を超えた。
「んんっ!」
彼の息遣いが分るまで顔を寄せ、静かに唇を落とす。塞がれた彼の口が何かを発しようとしてるけど、私はそれを許さない。
「んん、はむ……」
頭が痺れ、白い霧に包まれ、私は欲望のままに身体を動かした。彼の唇をひたすらに求めて甘噛みをし、舌を差し込んで口を開けさせた。その間も弱点の耳は指で優しく蹂躙していく。
一度顔を離し、彼の顔を凝視する。
「ル、ルティさん、もぅ……」
潤んだ目と泣きそうな、小さい声で訴えてくる彼に対して私は冷たく命令をする。
「ヴァジェト君、舌を出しなさい」
私の命令に息を荒げながらも、彼は素直に従った。閉じた唇からちょっぴりだけ覗いた赤いものが、私の頭を更にぐつぐつと沸騰させる。頭の中の白い霞が、湯気のように熱を帯びた。
「美味しそう、ですね」
夢中で彼の赤い舌を吸い、唇で挟む。舌を差し込み絡ませると、彼の熱い吐息が漏れ、あたしの顔にかかる。腕を拘束していた左手は既に彼の顎に当てて、逃げられない様にしている。もっとも彼は逃げる気はないようだけど。
「君を、他の女に、渡すなんて、そんなの、出来ません!」
自分も息が絶え絶えになる程興奮しながら、想いを伝える。彼の頬を唇で啄みながら右手は彼の胸からお腹へと身体の輪郭に沿って移動させていく。彼の悶えるさまを楽しんでいれば、固いものに突き当たる。
「いいですか? 君は私のモノです。ここも、ですよ?」
「あ、あの、そこ、は」
彼の泣きそうな顔に私の心はグラグラと揺さぶられてしまうけど、ここはぐっと我慢をして教えてあげないといけない。君は私のモノだってことを。そして私は君のモノだって事も。
「いいですか? あなたは私のモノ、です」
乱暴に唇を奪い、左手は彼の耳の上に円を描く。彼の身体がガクガク震えてきた。右手は彼の興奮したものを優しくこね回し、唇を開放する代わりに耳に歯を当てる。
「お返事がありませんね。あなたは私のモノ、です」
「ふぁぁぁぁぁ!」
彼は言葉にならない悲鳴を上げている。キチンとお返事できない子にはお仕置きだ。
「お返事は?」
少し強めに耳を噛む。
「ふわぁぁぁ。わ、わかりました! 僕は、ル、ルティさんの、モノです。モノです!」
彼の身体が大きく跳ねると、肩で息をしておとなしくなってしまった。彼は涙を溜めた瞳で茫然と私を見てくる。
「……やりすぎました」
とろけたような彼の顔を見た私の胸に、大きな反省とちょっとの悪戯な心が蠢いていた。
「ひ、ひどいです!」
ベッドに腰掛け、私の腿に彼を載せて後ろから抱きしめている。やりすぎたのか彼が暴発してしまったのだ。私への恨みだろう、顔は見えないけど、声で分かる。
勿論、綺麗に拭き取って服も着替えさせた。私がやったのは言うまでもないだろう。当たり前だ、彼は私のモノ、だからだ。初めて見る彼のモノにドキドキはしたけど、世話は当然のこと。
お詫びに彼のうなじに唇を落とす。
「ひゃぁぁ!」
「アレ、ここも、ですか?」
私の頬は自然とつりあがっていく。
(彼の弱いところはこれから調べていきましょう。大丈夫、時間はたっぷりあるんです。新しく開発するのも、いいかもしれないですね)
「ふふ、こんな恥ずかしいところを見られたのでは、もうヴァジェット君は私のお婿さんになるしかないですね」
「へ?」
彼は声を裏返した。私の額がピクっと動く。
(この期に及んでまだそんな不平の声を出すのですか?)
「不服ですか? あなたは私のモノ、なんですよ。その代り、私はあなたのモノ、です」
少し後ろに倒れて彼の顔を横に向ける。横向きになった彼の唇を私の口でしっかり塞いでしまう。
(これ以上の反論は許しません)
罰としてしばらくの間この姿勢のままでいた。
良く晴れた昼下がり、中庭の芝生の上で雲を眺めていた。今日は風が強いのか、流れていく雲の速度が速い。確かに私の髪を暴れさせる度合いも大きい。
そんな私に影が差した。その影の主に目をやれば、赤い髪をした私の『彼』がはにかんで立っていた。
私は口元に弧を描き、アヒル座りをしている腿をポンポンと叩く。彼はちょっと迷っていたけど、腰を下ろし私の腿に頭をのせた。
「今日もいい天気です」
彼の赤い髪の毛を指に絡めて遊ぶ。指にクルクルと巻き付けては伸ばす。
腿に乗せた頭から「そうですね」と同意が得られた。
「落ち着きますか?」
彼の髪を指で梳かしてあげる。ちょっと固い髪だけど指が気持ち良い。
「ふぁぁ、むにゅむにゅ。眠くなるくらい暖かいです」
彼は大きなあくびをした。
(それは愛情が詰まっているからですよ)
彼があの小さな部屋のさらに隅っこで扉に隠れるようにして寝ていたのは、殺し屋だった時の名残でベッドでは落ち着かないからだとか。今でも毛布にくるまって部屋の角で寝ている。
「私の膝枕で落ち着けるなら、いくらでも使っていいのですよ」
(君は、私の精神安定剤でもあるのですよ)
むにむにのほっぺを指で押す。押し返してくる弾力が心地良い。
そんな彼は、予備動作も見せずに手を上げ、私の長い耳に触れてきた。触られている所がちょっとくすぐったい。
「ルティさんの弱いところはどこなんですか?」
彼は私を攻めるつもりらしい。甘い。王妃様が作ってくださるケーキのクリームよりも、甘い。
「私の性感帯は胸ですよ」
耳を触っている彼の手を胸に誘導し、むにっと押し付ける。すると腿の上の彼の顔がみるみる赤く染まっていく。
(ふふ、まだまだですね)
「今度はちゃぁんと、私の初めてを奪ってくださいね」
彼にバツを与えなければ。
教育はきっちりと。これは大事な事。今後の事も考えれば、最重要課題と言える。
身をかがめて彼の唇を奪取する。もがく彼をおとなしくさせるために、ちょっとだけ指で耳をくすぐる。
「むんむう!」
(私を貰ってくれるのは、いつになるのでしょう? いぇ、楽しみは後に取っておくべきですね)
私は幸せだ。
補足
ヴァジェットがアサルの従者になったのは5年前。殺しの依頼で王城に忍び込んだところをアサルに見つかり、その場で戦闘。
遠距離ならば強いが近距離になると力の差が歴然と表れ、健闘するも捕縛されてしまう。
剣で刺し、腕を切り落としては回復させるアサルの尋問に、5回目の回復で心が折れたヴァジェット(クリムゾン)は暗殺組織のアジトを白状する。
アサル単身でアジトに乗り込み暗殺組織は全滅。依頼主は拘束された。表向きヴァジェットはアサルに殺されたことになっている。
ヴァジェットの身のこなしを勿体無いと思ったアサルが強引に従者に指定。名前が無かったので畏れ多くも国王直々に名付けてもらう。それがヴァジェット・ホルアクティ。
始めは非協力的だったが、王城には自分を狙う不審者が居ない事で安心感と国王、王妃が分け隔てなく接したために徐々に素直にはなって行く。
ただ王城でもクリムゾンを知っている者はいて、非難はされていた。
役目は国王と王妃の護衛で動けないアサルの目となり情報収取。
ルティに入念に教育されてしまった為にアレな道に目覚める事になる。
凸凹コンビでいい夫婦ではあるのだ。




