第25話
柔らかいシーツの上で、引き締まった肉体に身を寄り添わせる。
とたんに甘い匂いが、鼻腔の奥をつんと刺激する。この匂いが癖になる。とても刺激的で、甘美的、ずっと嗅いでいたくなる魔性の香り。
「はあ……し・あ・わ・せ」
うっとりした表情で、パッセルは吐息を漏らした。
「はは、満足かい?」
「ええ、とってもキモチかったもの。また今度……一緒にあなたと寝たいわ~」
「ははは、可愛いお嬢さんにそこまで言われちゃ、僕も断れないな、君が満足いくまで楽しませられるように、努力するよ」
クジャクがくすりと笑って半裸の身体を起こした。シャツを着込んで、スーツに素手を通す。
「……むー。もう終わり?」
パッセルが不満そうな表情で半開きの瞳をクジャクへ注ぐ。
「そんな目で見ないでくれよ。僕は性別は問わず誰でも抱くけれど、子供は子供だと思ってるからね。しっかりした繁殖期を迎えてから君とは関係を持ちたい。それにそろそろ補導の一つや二つでもされそうだからね、またチキンにどやされるし、また今度だね」
「ちぇー、子供だからって、そうやって邪険にするんだっ」
「邪険にはしていないよ、それに君は後一〇年もすればとても魅力的な女性になるさ、焦らずそのときを待とうじゃないか。それまで“本番”はお預けだ」
「むぅ……キャリアウーマンごっこ、夜の営み編はここまでが限界なのかぁ……くやしいなあ。クジャクも放っておけないくらいのデキるオトナの女早くになりたいなー」
ぐぬぬと悔しそうに呟きながら、パッセルもシャツに手を伸ばした。
「……ところで、クジャクのほうは見つかったの? 例の人」
「ああ、既に見当付いてる。どうやら向こう側は盛大に勘違いをしてくれてるみたいでね、こちらとしては大変助かる。まあ、その分彼に迷惑が掛かっちゃうんだけどね」
「平気よ、バカなんだから。それよりクジャクって一体何者なの」
「はは、秘密さ秘密。そんなことより、頼んだよ、打ち合わせ通りにね」
「アイツは知らないんだっけ? このこと」
「教えてはないね、彼って嘘が下手なタイプだから。君が名演技の一つでもうっといてくれ」
クジャクはにこりと微笑んでから、己がすべきことを頭に反芻させた。
――舞台は、徐々にできあがりつつある。
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