迷惑しかかけてない
何気ない日常が幸せなんだと思う日が多い。そう思ってもすぐにその思いは消えているんだけど。先生の居ない時間なんて要らないと思ったり。公園のベンチに座ってそんなことを考えている。小さい子たちの無邪気な姿と声。元気だなって思う。
少し寒くなってきたしそろそろ帰るか。ベンチから立ち上がってカバンを背負って…ふらっと倒れるのは想定外。子どもを遊ばせていたお母さん方が大丈夫かと近寄ってくる。優しい人間も居るもんだな、そう思いながら意識が飛んだ。
目が覚めるとここどこ?です。マジでここどこ?本当にどこだよ。
「あ、叶起きた。」
「綾音様、ここどこです?仕事は?それお酒ですか?」
先生が部屋に来たと思えば片手にお酒持ってるんだけどなんで?色々なんで?
「叶また倒れたんだよ。脱水症だって。ちゃんと水飲まないと駄目でしょう。」
病院でお酒飲んでる人に水飲めって言われてもな。なんか困るな。腕が冷たいと思えば点滴だった、引っこ抜いていいだろうか。
「綾音様お仕事はどうしたんですか。」
「電話かかってきて飛んできた。倒れるの好きだね、趣味なの?」
趣味なわけがないだろう。倒れない程度に食事抜いたり水飲まなかったりしてるんだけど冬場のようにはいかないらしい。暑くなってきたからちゃんと水分は摂らないとな。
話しているとお医者さんが部屋に来て点滴が終われば帰っていいとのこと。ベンチに座ってただけなのに脱水なるとかありえない。私こんな弱かったかな。
点滴終了お家帰ります。また先生にご迷惑をおかけしてしまいました誠に申し訳ありませんでした。お仕事の邪魔しすぎだということは重々承知しております。本当に申し訳ありません。土下座します。
「迷惑かけてごめんなさい。」
「謝るの好きなの?なんか最近ごめんなさいめっちゃ聞く気がするんだけど。来てくれてありがとうとか言ってくれたほうがうれしいんだけどな。」
それはそうだ。謝られてばかりではどちらも疲れてしまう。でも迷惑をかけたのに謝らないというのも気が引ける。でももう謝ったか。何回でも謝るべきか。
「来てくれてありがとうございます。いつも本当にありがとうございます。」
「いいんだよ。仕事より叶のほうが大事だからね。」
笑って言ってくれる先生が本当に女神様に見えてきた。仕事忙しいのにごめんね先生。公園で倒れるとか流石にやばいからこれからは体調管理もうちょっとします。先生にこれ以上迷惑かけないって思ってたのにめっちゃかけててごめんね。脳内で反省会。ごめんしか出てこない、ごめんね。
「うどんなら食べられる?」
「食べられます。」
うどん作れるんだね先生。いつの間にそんな技を手に入れたんだろう。
「うどん作れるんですね。」
「茹でるだけなら。味付けはめんつゆ?なに入れたらいいわけ?」
調味料は先生には早かったらしい。一緒に台所に立ってうどん作りました。一緒に作れるの幸せでした、また一緒になにか作りましょうかね。




