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先生、恋人になりませんか?!  作者: 雨宮雨霧


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身震い

スーパーをはしごしても流れているのはクリスマスソング。ひたすらに歩き回っていると段々聞き飽きてきた。先生の声ならずっと聞いていたい、録音してひたすら流そうかな。まとめ買いをして作り置きをするのが早瀬流。毎日スーパーに行くのが面倒なだけ、安い日に買っておきたいだけ。それより寒い、早く帰りたい。冷たい強風が吹き荒れる道をただ歩き続ける。

「ただいま。」

「おかえりなさい!」

玄関が開くと同時に吹っ飛んでいくおなじみの私。なにをしていても秒で駆けつけます。先生に早く会いたいし先生を1秒でも長く拝んでいたい。着込んでいる先生かわいい天使みたい。上着を脱いでいく先生かわいい天使みたい。脱ぎ捨てていってもカバンを置き去りにしていってもかわいいよ。誰がなんと言おうと先生が世界で一番かわいい。異論は認めない。毎日遅くまでご苦労さまです、お疲れ様です。大好きです1秒でも長く一緒に居ましょう。

「もう1年終わるよ。」

「早いですね。」

クリスマスだと思ったらもうお正月だもんな。本当に時が過ぎるのは早い、味噌汁を飲みながら実感する。長い夏が終わったと思えば冬が来て。あっという間に入試だもんな、あとテスト。単位は大丈夫だけど卒業をかけたテストだと思うと身震いしてしまう。卒業できたら先生と結婚する。できなくても意地でもする。

「ずっと帰省してないですけどいいんですか?」

「いいの、叶置いていくの怖いし。色々言われるし。一緒に居よ。」

一緒に居ましょういつまでも冬が終わっても桜が散ってもセミが鳴いてもまた冬が来てもずっと居ましょう。色々言われるのは確かに面倒だし嫌だろうな。大人は大変だ、自由な分責任と周りの期待をたくさん背負っている。そう思うと私は案外ラッキーだったのかもしれない。親に見向きもされないから、居ないから今こうやって生活できているわけだし。悪いことばかりの人生ではなかった、のかな。どれだけ季節が巡っても傷は癒えてくれないけど。

「この冬は雪降りますかね、降ったらいいのに。」

「もう降らなくていいよ。寒いし。」

溶けた雪だるまを思い出す。ここに確かに存在してたんだよな、もう居ないし痕跡すらないが。忘れて思い出してまた忘れて。一生忘れてしまって。過去に戻りたいとは思わない。あのときと同じ幸せも楽しみも、もう感じることはできないから。これからの先生との未来に期待してとりあえず冬眠しよう。

「で、なんでまたゴミ箱に色々捨ててあるのかな。」

「やりたくなくて、つい。」

参考書も筆箱もゴミ箱に捨てた夕方。分からないしやりたくないし捨てておこうと思って、つい。ちゃんとしたゴミも捨てたよ、えらいでしょ。掃除機に溜まったゴミとかも捨てた。だからプラマイゼロってことで。事件解決です。

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