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先生、恋人になりませんか?!  作者: 雨宮雨霧


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また何処かに

一人で何処かに行きたくなって何処かに着いた。スマホの電源は切って家に置いてきた。手荷物はお金だけ。これで足取りは拾われないだろう。先生にはとても申し訳ないけど。そう思うなら最初からやるなって話だが。電車に揺られて乗り換えてまた揺られて。これ帰れるかな。少し不安になってしまう。自分で選んだ道を後悔するには早いようで遅い。後戻りできなくなる恐怖と一人という自由と寂しさ。色々な感情が入り混じっていく。もう暗くなる時間、先生に怒られるのは分かりきっている。作り置きを冷蔵庫に入れたとはいえそれだけで許されるはずがない。ふらふらと歩いて路地に入って出て。辺りを見渡しながらまた歩く。

「叶。」

「え、綾音様。なんで…」

聞き覚えのある声が後ろから聞こえたと思えば手を掴まれていた。振りほどけないくらいに強い力で。なんで足取りを拾われた?どこにGPSを仕掛けられているんだ。先生からはどうやっても逃げられない。人生からも逃げられない。夜の町に灯っていく眩しい光が道を照らす。息を切らした先生とその場で立ち尽くして。怒られるな、これ。それを分かっていて実行したのだけど。無言でその場で重たい空気が流れていく。先生の目は怖くて見られない。俯いたままだ。

「わざわざスマホも置いてそんな格好で暗い道歩いて。なにかあったらどうするの。」

「ごめんなさい、」

やっとの思いで顔を上げる。怒っている、でも涙が伝っている。私のせいで泣かせてる、ごめんね先生。本当にごめんなさい。蒸し暑い空気が身体にまとわりついて離れない。先生の声も耳から離れない。上げた顔はまた下がる。

「とりあえず帰ろう。話はそれから。」

電車にまた揺られて家に帰る。一言も話さず、目も合わせられず。ただ強く手を握りしめられているだけ。明日は反省して先生の好きな料理でも作るか、それだけで許されるわけないけど。なんでまた家から離れた場所に行ったんだろう。なんで先生は居場所を掴めたんだろう。自分でも自分が分からないし先生が思ったよりも早く見つけ出してきたのもよく分からない。玄関に入ると同時に苦しいくらいに抱きしめられた。

「なんでまた勝手にどっか行こうとするの、気付くの遅かったら本当にどうなっていたか分からないんだよ。」

「ごめんなさい、本当に。」

とりあえず謝って電気をつけてご飯の用意をして。先生の方を見ると目が合った。怒っているな、これ。そりゃそうだ、知らないうちに勝手に何処かに飛び出していくのだから。心配かけすぎたのであとでお菓子もあげよう。それくらいで許されるはずがないけど。なにをすれば許されるかも分からないけど。

「次どっか行ったら許さないから。」

「はい。」

1ヶ月間学校と買い出し以外は外出禁止となりました。すべて私の責任ですごめんなさい。ペットカメラはこれ以上増やしても意味がないから増やさないとのこと。GPSは絶対に外すな、とのこと。外すもなにもどこにあるのかさっぱりなのだが。この夜は抱き枕のように抱きしめられて寝た。先生には本当に心配と迷惑をかけてしまって本当にごめんなさいです。

「綾音様、今日もごめんなさい。」

「もういいよ。次はないからね。」

もうこれ以上過ちを犯してしまったらいくら手を出さない先生でも我慢の限界になってしまうだろう。次は本当にないぞ。自分によく言い聞かせておかないと痛い目にあってからでは遅い。

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