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先生、恋人になりませんか?!  作者: 雨宮雨霧


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もうこれ以上

雨に濡れて帰ってくる先生の気持ちが分かるようで分かっていない。多分感じていることが違いすぎている。今は雨の降る夜に傘もささずにお散歩中です。スマホは置いてきたし先生からもなんとか逃げ切れたし。しばらく歩いておこう。

なんで雨に濡れているのかって?自分でも分からないけどなんか飛び出して今に至る。自分でもなにをしているのか分かっていないしなにをしたいのかも分からない。雨に濡れるのは気持ちいいということくらいしか分からない。先生は果たして私を見つけるのでしょうか。スマホないのに居場所がバレたらすごい。先生のことだから私の知らないところでなにか仕込んでいそうだけどね。

歩いて濡れて歩いて濡れての繰り返し。たまにつまずいて転けかけたり。転けてはいないから大丈夫。静かな雨の夜、好きかもしれない。前は苦手でしかなかったけど。苦手なものも好きなものもいつしか移り変わっていく。人生はそういうものか。

「やっと追いついた。」

後ろから先生の声がしたと思えば抱きつかれてよろめいた。やっぱりどこかに仕込まれている…?でもそうでもしないといけないくらいに私の行動が予測不可能なのだ。ごめんなさいね。

「綾音様だ〜」

「勝手に飛び出さないでよ、怖いよ。」

先生の目は怒っているようで震えている。つい目をそらして下を向く。本当になにをやっているんだろう、なんでこんな状況になっているんだろう。ふたりして傘も持たずに雨に濡れていく。まだ先生に抱きつかれているけどこれはいつまで続くのかな。一生抱きつかれていても全然困らないしそれどころかうれしいよね。うん。ごめんね先生。

「帰ろっか。」

「そうですね。」

雨は弱まるどころか強まるばかり。手を繋いでおうちに帰る。前も思った気がするが私の手は握力計ではないよ。力が強すぎるよ。それくらいに心配をかけてしまったのだけど。ごめんね先生。ごめんで済むわけがないね、ごめんね。自分でも分からない。なんで外に飛び出したのか。将来を考えることはやっぱり向いていないらしい。先生みたいな先生になるなんて夢のまた夢の話。百年、千年。何万年経とうと無理な話。

家に着いて身体を拭いてお風呂を溜めて。過ちを犯しすぎてそのうち豚箱に入りそうだなと思いながら濡れに濡れた服を乾かす。

「なんで飛び出すの。」

先生の目はやっぱり怒っているようで震えているように見える。こんな面倒な人間、先生だって関わりたくないでしょ。捨ててくれてもいいんだよ。そのほうがお互いにいいんだよ、きっと。そう思うと膝から崩れ落ちてしまった。どうにもならない、歪んだ思考回路。

「油断も隙もないんだから。」

雨に濡れたせいで冷え切ったお互いの心と身体。あたためてくれるのはやっぱりお互い。どうにもならない私だけどどうにもならないくらいに先生のことが好きだから。ごめんね、先生。ありがとう、先生。もうこれ以上苦しめたりしないよ。

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