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先生、恋人になりませんか?!  作者: 雨宮雨霧


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過去よりも今

アイロンの匂いがなんとも言えない気分にさせる。自分では見えないが背中に跡が残っている。学校の内科検診とかで必ず心配されるからまだ残っているんだろう、もう大分経つのに。久しぶりに先生のスーツにアイロンをしている。卒業シーズンだもんな、と思いながら丁寧にシワを伸ばす。先生と暮らすまでは制服にもアイロンをしたことがなかった。シワシワの制服で中学に行っていたから学年主任とか立場が上の人とかによく注意されていた。でもいつしかされなくなった。きっと諦められたのだろう。

「自分でしてくれてもいいんですよ。」

「どうせ制服にアイロンするんだからついでにして。」

制服にアイロンするのは超適当だけど先生のスーツは丁寧にやるのが早瀬流。立場が違いすぎるからちゃんとしないとね、私のはどうでもいいけど先生はそうはいかない。

「はい、これで大丈夫ですか?」

「大丈夫すぎる。ありがと。」

さてと、制服にアイロンするのはダルいしやめよう。まぁ、どうせ上からブレザー着るんだしいいよね。別に誰も空気な私のことなんて気にしないだろうし。

「制服捨てるのはやめようね。」

「まだ捨ててないです。」

ちょっとした気の迷いっていうか。制服をハンガーにかけるのダルいなって思ってちょっとゴミ箱にでも入ってもらおうかなっていうか。…まだゴミ箱の段階だからいいよね?ゴミ袋にまとめてないからいいよね?駄目って言わないでよ、傷つかないけど傷つくから。傷ついてるのは制服だって?たしかにそれはその通りだ。

「この手紙かわいいよね、叶らしくて。」

先生の手にはあの黒歴史。ヒラヒラさせるのやめてよ黒歴史が充満する。閲覧禁止ですからねみなさん。封筒から出したら駄目です、便箋を開いては駄目です。生きていけなくなる。

「もうそれ捨ててくださいよ。」

「嫌だよ。捨てるわけないし。」

きっとその手紙を捨てる日が来たら多分私たちの関係は終わってる。そう思うとどうも感情がぐちゃぐちゃになる。全てを捨てる覚悟で書いたあの手紙。捨てるどころか思い出が増えていってしまった。もう死んでいるはずだったのに。先生と生きている。

「この手紙好きだけどな。」

「私よりも?」

いやいやなにを聞いてるんだ。メンヘラかよ、いやメンヘラか。愛が重い人間かよ、いやそうだな。

「叶が好きだよ。叶が書いてくれた手紙もね。」

あー、先生ってやっぱり優しすぎる。人生何百回したらそう言える人になるんだろう。私には何回転生してもできないな。転生しても先生と一緒に居たいな。

「私も綾音様が大好きです。」

「そう?それはどうも。」

先生が好きです大好きです結婚しようね。過去を思い出さなくても未来が見えなくても。今がとても幸せで笑えているからいいや。ずっと大好きだよ、先生のこと。なにがあってもね。

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