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先生、恋人になりませんか?!  作者: 雨宮雨霧


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明かりが消えた

あかりをつけましょぼんぼりに〜、と思っていたら電気が消えた。え?停電…ではなさそうだ。冷蔵庫も炊飯器もちゃんと動いている。ということは電球が切れた。ちょっとタイミングが良すぎるな。実家の電球を変えたことは何度かあるが先生の家では初めて。先生に連絡しないと。

「電球切れました。」

「なんとかして。」

なんとかして、と言われましても。もう夕方だしひな祭りにはちらし寿司を食べる、ということを学んだので作っている最中だし。作っているといっても素を使うんだけどね、ほら錦糸卵とか作らないとじゃん?薄暗い部屋は心まで暗くしてくる。懐中電灯をつけて料理続行。電気が復活する日は遠いかもしれない。間接照明とかあるわけがないから真っ暗だ。暗い部屋で料理を作る人ですこんにちは。ぼんぼりがあればいいのにね。

「ただいまー、暗すぎるー」

「おかえりなさい、なんとかできませんでした。」

電球のサイズも知らないし暗いから確認もできない。あかりをつけるどころか消えたひな祭り、開催中。誰か明かりをください。

「電球買ってきたけどこれだったか分からないから頼んだ。」

「え、無理です。」

先生のお願い事だから断りきれずに任されてしまった。椅子の上に乗って懐中電灯を片手に切れた電球を外す。ずっと上を見ているとクラっとくる、いつも下を向きすぎだ。何とか電球を変えて、頭上が眩しすぎて目が開けられない。

「目潰しすぎます…」

「ずっと暗い場所に居たから余計にだろうね。ありがとう。」

ありがとうだってうれしすぎる。先生のお役に立てることなんて滅多にないからこれからも頑張りますやらせてください。ちらし寿司をお皿に盛ってハマグリは高すぎたからあさりに変更されたお吸い物を温めて。一応野菜もある、健康的に行こう。

「そっかひな祭りか。忘れてた。」

「ひなあられもちゃんと買ってきましたよ、後で食べましょう。」

お吸い物が身体に沁みる。なんだかホッとする感じ、好きだな。味噌汁もいいけどたまにはこういうのもいいかもしれない。貝の出汁、美味しい。

「暗いのに料理して怪我しなかった?」

「ギリギリ大丈夫でした。」

手を切りそうになったりやけどしそうになったりしたがギリギリで回避できた。多分。知らないうちに怪我しているかもしれない。

「綾音様はお雛様よりもかわいいですね。」

「急になに?叶のほうがかわいいよ。」

どうでもいいことを言って笑い合えるこの時間が好き。誰かと一緒にご飯を食べて、話して。笑って。ただそれだけの日常が当たり前ではないこと。先生と居られるこの短い時間が私にとって大切で幸せな、値段なんてつけられないような高級品となる。

「ひなあられってすぐなくなる。」

「まだありますから。ゆっくり食べてください。」

先生の隣はお内裏様なんかじゃなくて私だからね。ずっと隣に居るなんて無理なのかもしれないけど居ることができる限りそばから離れないよ。

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