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罰ゲームで告白してきた美少女ギャルと付き合うようになった件  作者: 夜依
美少女ギャルとのイベントラッシュは甘さマシマシな件
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第24話

 ゆっくりと落ち着いた時間が流れる空間。手元の本に視線を落としていると、足元でもぞもぞとなにかが動いた。少し視線を落としてみれば、もぞもぞと動いていたものの正体は猫だった。

 俺たちが今いるのは喫茶店。ではなく、猫カフェ。

 書店を後に喫茶店を目指してい歩いていると、途中で目に入ったのが開店したばかりらしいこの猫カフェ。ゆっくりと読書もすることが出来そうだったし、何より芽衣が入りたそうにしていたので、こうしてソファに座りくつろいでいるというわけだ。

 芽衣の周りにはいくらか猫がやってきては去ってを繰り返しており、そのたびに本を読む手を止めては猫を眺めて、幸せそうに表情を崩している。

 閑話休題。

 芽衣の側ではなく俺の方へとやって来た猫は、足の周りをぐるぐると回ってこそいるが、どこかに移動する気配もない。もしかして構ってほしいのか、なんて思って少し手を差し出してみる。すると、その匂いを確かめるようにすんすんと嗅いで、小さな頭を差し出した掌に擦り付ける。

 透き通るような金色の毛並みと少し強引なくらいの距離の詰め方はどこか既視感があり、そのご希望に沿いたくなってしまう。


「ほら、おいで」


 本を閉じて膝を軽くたたけば、ぴょんと膝に飛び乗ってきた。ここまで懐かれていると、少し不思議な気もしてくるが膝でくつろぎ始めたその子をそっと撫でてやる。

 ふわふわとした毛並みは整っており、手入れが行き届いていることが分かる。


「あー、もう、かわいすぎ」


 いつの間にか本を閉じてこちらを見ていた芽衣が、安心しきった様子で俺に撫でられ、気持ち良さそうにのどを鳴らす猫を見てそう言った。


「芽衣も撫でてみるか?」

「きなこちゃん撫でさせてくれるかな?」

「まあ、平気じゃないか。人懐っこいし」


 きなこちゃんというのは、どうやら俺の膝に乗っている猫の名前らしく、先ほどは気づかなかったがつけている首輪には名前が書かれていた。

 確かにきなこっぽい色をしているようにも見えるし、分かりやすい名前といえばその通りか。

 きなこちゃんは芽衣が撫でるのも許してくれたようで、下二人の相手で鍛えられたであろう芽衣の撫でを堪能している。その姿を見ていると、先ほど感じた既視感の正体にたどり着いた。距離の詰め方も毛色も、芽衣とどこか被る部分があるのだ。


「なるほどな」


 小さく溢した言葉に、何が? の声と真下からの視線が向けられる。その様子もそっくりで、笑いがこぼれた。これを素直に言っていいものかと思いつつも、二つの視線に負ける形で口を開く。


「いや、芽衣ときなこちゃんが似てるなって思って」

「え?」

「なんとなく雰囲気がな」

「そうかな? だったら、あのクロ君は壮太に似てると思うけど」


 芽衣の視線の先にはキャットタワー。その一番上でのんびりしている黒い猫がクロ君らしい。

 髪色と毛色は似ているが、それ以外は特に重なる部分もないと思うけど。


「ほらこれ」


 俺の心の内でも読んだかのように携帯を見せてくる芽衣。映し出されているのは、この猫カフェのホームページのようだ。猫たちのプロフィールや、従業員によるちょっとした観察日記も載せられている。

 読んでみれば、クロ君はあまり人懐っこい性格ではなく、キャットタワーの一番上を中心に高いところで他の猫も近寄らせずに丸まっているらしい。

 まあ、少し前の俺ならそういう気質があったかもしれないが、なんて思いながら観察日記に目を通すと、きなこちゃんと寄り添って眠る姿の写真と共に、クロ君が唯一気を許しているとまで書かれている。


「いつの間にこれ見つけたんだよ」


 少しの気恥しさをごまかすように、いくらかぶっきらぼうに聞いてみた。


「さっきだよ。飲み物のおかわり頼もうと思ってメニュー表見てたら、こういうのもやってますって書いてあったから」

「なるほど」


 芽衣との話に夢中になっていると、撫でられるのにも満足したのか、膝が重さから解放された。


「行っちゃったね、きなこちゃん」

「まあ、猫って気まぐれだしな」

「もうちょっと撫でたかったのに」

「猫、好きなのか?」

「うん。のんびりしてるの見てるだけで癒されるくらいには可愛いじゃん」

「まあ、そうだな」


 そんな話をしていると、芽衣の猫愛に惹かれてきたのか、また数匹の猫が芽衣の方に近づいてくる。なんというかモテモテだ。猫にまで嫉妬をするほど独占欲が強いわけではないが、なんでそこまで集まってくるんだ、といくらか不思議に思えてくる。

 猫と戯れる芽衣をいくらか写真に撮ってから、またコーヒーを少しだけ飲んで読書に戻る。

 違うことをしていても空間だけは共有している。その心地よさを左肩にわずかにかかった重さが確かなものだと感じさせるようだった。

 そして、左耳に届いた、なーという鳴き声。


「え?」


 肩にかかった重さの正体は、芽衣ではなくクロ君だった。


「壮太、大丈夫?」

「えっ、ああ。うん」

「クロ君が寄ってきてくれたから、ちょっと撫でようと思ったら、そのままピョンって壮太の方に行っちゃって」

「まあ、平気だから気にしないでいいけど」


 俺の気持ちは返してほしいかなぁ。口にせずともそんな風に思いながら、手の匂いを嗅がせてみると、また芽衣の方へと戻っていった。きなこちゃんのように居ついてはくれないらしい。

 そのあとで左肩に感じた重さは芽衣のものだったから、まあ、勝手によじ登った件は不問にしてやろう。

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