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旅路の終点に
始めの駅を出発してから
どれだけの時間が過ぎたのだろうか
暗闇に映る嗄れた顔は
それこそ若くないことを示している
幾星霜の軌跡を経て
既に夢見の私であった
汽車の音は響き続ける
駅に着く度に
人は去りそして増える
いつか見た2人の少年を思い出す
彼らは天頂へ行ったと聞く
もう遥か昔の話である
あの頃の私はまだ若かった
様々な駅に降りては
その地方を旅して
時には居着くことさえあった
駅に着くごとに私は歳を取り
そしてもはや陽炎の如く
嗄れた手は震えて
出る声さえも嗄れる
もう若さなど残ってはいない
汽車の音が鳴る
駅に着いた合図
私は杖をついて立ち上がる
荷物などはない必要ないのだから
切符を片手にホームへ降りる
幾年の歳月を経て
たどり着いた終点
そこは薄暗く何もない
ぽっかりと空いた階段を
私はひとつひとつ上がっていく
暗闇はまだ続き
それは果てのない旅路
ふと足を止めて振り返る
その先に道はない
暗闇が口を開けて微笑んでいるだけだ
私はまた歩み始めて階段を上る
ひとつの旅が終わって
またひとつの旅が始まった
しかしこれが本当に最期の道である
いつかの少年が目指した天頂は
この先である
モチーフは宮沢賢治作「銀河鉄道の夜」です。




