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影夢
月に向かって手をかざした
「掴み取れるかな?」
影が私の手を握る
いつか見た夢を思い出す
それは私の手が月を掴んだ夢
きっとそれは今のことなんだろう
私はなんとなくそう思った
宵が深まる
月の明かりが増して行く
まるで太陽みたいだ
空に映る影を目で追う
どこまでも広がる闇に
私はやがて沈んで行く
星が瞬く
月が輝く
その下を影が覆う
その後ろを闇が覆う
瞳に映る真上の世界は
まるで夢の風景のようだ
どこまで夢なのだろう
私は月に向かって手を伸ばす
指の隙間からこぼれた影
それはきっと紛れもない
現実の中の幻想




