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まがい夜
鐘の音に耳を澄ませ
昏に浮かぶ空を眺める
残照は未だ消えずに
ただ朧の影を撫でている
側で響く彼女たちの声
いつにもまして騒がしい
今年もそんな日の続きだった
思い返される思い出に
俺はただほほ笑むのだった
静かに去っていた騒がしい日々
瞬きする一瞬に過ぎていくようで
目をつむるのも億劫になるほど
鐘の音が去るごとに記憶もまた
昏の中に流れていく
茜が灯篭を灯す
石畳にはね返り眼前に紅を残す
見慣れたはずの景色も今はただ美しく
綺麗に思える自分が少し恥ずかしい
鐘の音はやがて彼方に消える
やがて茜は濡羽色に
俺はただその景色を眺める
やがて訪れる明けの時まで




