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秋麗の文
吐息は白いのに光を背に影は暖かい
秋めく季節は終わりを告げて
銀嶺の虎落笛が聞こえてくる
茜色に混ざる白銀の上を
振り向けば足跡が残る
空を見上げれば蒼に染まる
季節の色が混じり合う
雪花の山道を下りていく
ほのかに残った残照に手をかざす
木漏れ日の影を追いながら
この先へ歩いて行こう
風に逆行することなくそのままに
たまにはそん日があってもいいだろう
空を飛ぶ鳥を見てほほ笑んだ
そんなに急いでどこへ行くんだろう
白い吐息をこぼして歩く道
やがて茜色は白銀に溶けて行く
季節は暮れて冬が訪れる
それでも背にした光は暖かい
銀嶺の声に耳を済ませながら
また白い吐息をこぼした




