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断片のモノローグ
遠く向こう側の断片
それはいつか見た夢の中のこと
目覚めれば忘れてしまう
ただ一瞬のこと
見た景色 ふれたものさえも
霧のようにぼやけて晴れる
夕焼けに沈むように夜が明ける
茜色に落ちていく水平線
やがて境はなくなって 全てが青くなる
その一瞬を忘れないように
切り取って断片を残していく
これが現実でありますように
また目が覚めれば断片は消えている
延びいていく陽炎
今度は空が紅色に染まっていく
水平線に灯る明りが揺れる
色強く跳ね返る朝焼けに
隙間からこぼれた光を追えば
またいつも見る場所へ辿り着く
どこかで見るものは必ずここへ
忘れたくないことも全て戻っていく
虚の中へ沈んでいく記録 断片は消えて
残照だけが空に浮かぶ
それでもこれだけはここにあるのだと
私はいつも現実に願う




