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遥途
灯火はやがて見えなくなった
明かりも持たずに霧の中をさ迷う
どこからか聞こえてくる鳥の声
探してみようとしても見つからない
ここがどこなのかは知っている
この先に何があるのかも
だからこそここで迷った
目の前の霧に惑わされた
ひとつひとつ足を前に出す度に
抱えたものから何かが落ちていく
確認しようにも手筈がない
始めから見えていないものだから
薄暗いか薄明かるいか
夕焼けのような朝焼けが差し込む
霧はオレンジ色にやがて灰色に
元の色へと戻っていった
足を止めたら場所が分からなくなる
歩き始めたら道に迷う
そんなことを何度繰り返してきただろう
その都度目に見えていたものは違った
音が聞こえる
声が歌う
聞こえてくるものだけは変わらない
それが今の道しるべ
光のある方向へ歩いていっても
どこまでも薄明かるい道だけ続く
背後を横切る薄暗い光
ふと思い出しては懐かしむ
先というには見えず
後というには進みすぎる
明かりも闇もない霧の中
遥かな方向を目指してその途中




